社長も認める「Z」の存在感
バブル崩壊により日産が経営不振に陥ったことで、フェアレディZ次期型の開発はストップしてしまう。後継車が登場しないまま、Z32型は2000年に販売終了となった。
ただし同年、ルノーとのアライアンスで日産の指揮を執ることになったカルロス・ゴーンは、GT-RとともにZをさせることを明言。2年後には3.5リッター自然吸気V6エンジンを積んだ2シーター「Z33型」として復活させた。現行「Z34型」では排気量を3.7リッターに拡大する一方、ホイールベースを100mmも短くすることで運動性能を高めた。
注目すべきは50年間の累計販売台数で、北米だけで130万台以上、世界では約180万台に達する。ここまで根強い人気を保ち続けることができた理由としては、基本設計が不変であることが挙げられる。排気量に余裕のある6気筒エンジンをフロントに積み、後輪を駆動する。テールゲートを備えたファストバックも一貫している。しかも、性能を考えれば価格はリーズナブル。日本車としては異例なほど、一本筋の通ったクルマである。
今回のプロトタイプも、この伝統を受け継いでいる。デザインについては今後公開予定の別記事をご覧いただくとして、フロントにV6エンジンを積み後輪を駆動する方式はそのままだ。エンジンはV6ツインターボとしか明かされていないが、おそらく「スカイライン」が搭載している3リッターとなることが濃厚だろう。
ボディサイズは全長4,382mm、全幅1,850mm、全高1,310mmとの発表があった。現行型と比べると122mm長くなったが、幅と高さは5mmしか違わない。
オンライン発表会のあとに行われたメディア向け内覧会には、デザイナーとともにチーフプロダクトスペシャリスト(CPS)、つまり、商品開発責任者の田村宏志氏も参加した。
前述したように、日産にはGT-Rもある。住み分けはどうなるのか。GT-RのCPSでもある田村氏は、「モビルスーツかダンスパートナーか」という表現を使い、フェアレディZについては「マニュアルトランスミッションは譲れない」とも付け加えた。この簡潔かつ的確な言葉で、多くの人はZの立ち位置が理解できたのではないだろうか。
日産の社長兼CEOである内田誠氏は、「ピュアスポーツカーのZは日産のスピリットそのものです」と述べ、グローバルデザイン担当専務執行役員のアルフォンソ・アルバイサ氏は「なぜ日産はZを作り続けるのか。それは、なぜ人間は息をするのかと聞くようなものです」と答えている。
経営陣も、日産が復活していく上でZは欠かすことができないクルマだと思っている。作り手がここまで強い思い入れを持つスポーツカーなのだから、きっと心ときめく走りを味わわせてくれるはずだ。