「Z」と「GT-R」の出自の違い

しかし、1960年代も後半になると、安全快適に長距離を移動できるクーペタイプの高性能スポーツカーを求めるユーザーが目立つようになった。ただし、こうしたクルマはいずれも高価であり、多くの人にとっては夢の存在だった。

そこで日産は、量産セダンに積んでいた直列6気筒エンジンなどのメカニズムを活用して価格を抑えつつ、流麗なロングノーズ・ファストバックのクーペボディを組み合わせたスポーツカーの開発を進めた。それが、1969年に登場した初代「フェアレディZ」だ。

  • 初代「フェアレディZ」

    初代「フェアレディZ」

同じ年に日産は、「スカイライン2000GT-R」も発表している。スカイラインはもともと、1966年に日産と合併したプリンス自動車工業の車種。GT-Rのエンジンは、プリンスがレーシングカー「R380」用に開発した直列6気筒DOHCエンジンを手直しして積んだものだ。

  • スカイライン2000GT-R

    「スカイライン2000GT-R」

その後、GT-Rは2度の生産休止期間を経て、2007年にスカイラインから独立する形で復活を果たしているが、ここまで読んできた方は、日産を代表するスポーツカーといえばZであると思うだろう。

「S30」の形式名が与えられた初代Z(日本仕様)の排気量は2リッターで、初代GT-Rと同じエンジンを積んだグレードもあった。4バルブ・3キャブレター・2カムシャフトであることから、「Z432」という通好みのネーミングを起用していた。

  • フェアレディZ「Z432」

    「Z432」

海外向けは2.4リッターで、フェアレディの名は与えられず「ダットサン240Z」と呼ばれた。ただし、1971年には日本でも2.4リッターが登場。最上級グレードの「240ZG」は空気抵抗の少ない専用フロントノーズとオーバーフェンダーを備えていた。

240Zは国内のレースで何度も優勝。海外ではサファリラリーで優勝、モンテカルロラリーで3位入賞などの成績を残した。こうしたモータースポーツでの活躍が、人気をさらに押し上げていった。

  • フェアレディZ「240ZG」

    「240ZG」

Zが登場した頃、すでに日本では大気汚染が問題になり始めていた。自動車の排気ガスが原因のひとつとされたことから、トヨタ自動車「2000GT」やホンダ「S800」などの多くのスポーツカーが生産中止となり、レースイベントも減少していた。Zについては、登場して間もなかったZ432や240Zシリーズがラインアップから落とされた。

しかし、それ以外のフェアレディZは販売を続けた。ホイールベースを伸ばしてリアシートを追加した2by2をラインアップに加えつつ、1978年にマツダから「サバンナRX-7」がデビューするまで、国産唯一のスポーツカーとして孤軍奮闘していたのだ。

排出ガス規制が一段落すると、フェアレディZもモデルチェンジを果たす。2代目「S130型」では、日本でも海外向けと同じ2.8リッターエンジンを用意したのに加え、2リッターターボエンジン搭載モデルも登場させて高性能を取り戻した。続く3代目「Z31型」では、設計の古い直列6気筒に代えて2リッターと3リッターのV型6気筒ターボエンジンを搭載。ヘッドランプを角形とするなどスタイリングもモダンになった。

  • フェアレディZ「S130型」

    「S130型」

  • フェアレディZ「Z31型」

    「Z31型」

その傾向をさらに研ぎ澄ませたのが、1989年デビューの「Z32型」だ。V6エンジンを前提とした短いノーズと円弧型サイドウインドーでイメージを一新。全幅は5ナンバーサイズから一気に1.8mに拡大し、3リッターターボが発生した280psはその後、長い間日本車の自主規制値になるなど、多くの面で殻を破った車種だった。

  • フェアレディZ「Z32型」

    「Z32型」