[質疑3]1社体制に戻る批判もあるのでは?
NTTコミュニケーションズ(以下、コム)、NTTコムウェアのリソースをNTTドコモと統合する件について、ドコモがコムやコムウェアを吸収合併する可能性もあるのか。仮にそうだとしたら、分割されていたNTTグループが1社体制に回帰することで批判も起こるのではないか、という指摘もありました。
澤田社長は「どのような形でグループを組織的に整理するか、まだ検討していない。これから始まる議論です」と回答。「一般論として、分割論は東西会社を対象にしたNTTの分割の話です。コムは自由な民間会社であり、ドコモ、コム、コムウェアの組織的な連携は初のこと。かつての状況に戻るということでは、意味が違うと考えています」と話しました。
[質疑4]公平性が損なわれるのでは?
NTTの強力な資本のもとで経営統合すれば、ソフトバンク、KDDIにとっては脅威になるという見方もあり、公平性という観点でどうなのか、という質問もありました。澤田社長は次のように回答しました。
「ドコモのシェアは40%ちょっとです。他社さんが30、20台ということで、NTTグループがとても大きくて他社が小さい市場ではもはやない。それは数十年前の認識。NTTが強大な資本を、という質問ですが、NTT東西がドコモのために供与することは法律で禁止されています。ただ、ドコモが100%子会社化され、コム、コムウェアと連携を深めるということは法制度では禁止されていないという認識です。かつ、市場の競争になります。ソフトバンク、KDDIさんは競争上、負けるかも知れません。そこで競争が活性化され、料金も下がっていく。それがいま必要なこと。私たちが一方的に強い状況ではなく、収入利益は3番手です。そこをどう勝っていくか、という方法論です」。
[質疑5]規制当局の見通しは?
子会社化における規制当局の判断の見通しは、という質問には、澤田社長は次のように回答しました。
「ドコモは1980年代の後半にシェア100%でしたが、現在は40%になりました。固定のブロードバンドは7割を持っていますが、法律で事業範囲を規定されている。さらに数年前から、卸構造に変えました。ドコモに限らず、他社さんにも公平に同じ条件でインフラ卸しをさせていただいている。ドコモだから有益に利用できるわけではなく、制度的にもそうなっている。だから東西を包含したNTTグループとしてリソースを融通する再編は考えていません。競争領域においてドコモを強くしていく。規制当局、総務省にもそう説明しました。法制度上の問題はない、と受け取っています」。
また、子会社化がこのタイミングになった理由については、「市場の環境のなかでドコモが3番手になり、GAFAなど海外の強い会社が出てきている、という危機感が一番の理由です」(澤田社長)。
また、吉澤社長は「5G時代は5Gのモバイルネットワークを提供すれば良い、ということではありません。5Gを使ったソリューション、プラットフォームを含んだうえで何ができるか。(リモート型社会にシフトしている現在)いまここでやらないと、次では環境に対応できなくなる。それでこのタイミングになりました」と語りました。
[質疑6]グループへの収れんが深まる?
NTTグループには分離分割の歴史があったが、ドコモの完全子会社によりグループへの収れんが深まったのでは、と聞かれると澤田社長は次のように回答しました。
「移動通信を育てるために、固定から相互補助や補填をするな、つまり移動を助けるなと言う議論でした。しかし、いまやメインは移動。世界にはそれだけ大きな変化があったわけです。ドコモのシェアは100%から40%に落ちましたが、強い研究力がある。顧客基盤もある。これを融合することで、新たなゲームチェンジを起こしていく。世界を引っ張っていけるような技術、サービス、ソリューションを日本だけでなくグローバルで提示できないか。そこで、ドコモとNTTが迅速に連携を深める必要がある。そういう風に大きく見ています」。
吉澤社長は「ドコモができて28年が経ちました。2000年は、まだインターネットは固定だった。中心がPCだった時代です。2010年に初めてスマホが出てくると、ようやく移動のモバイル通信が中心になった。2020年に5Gとなりましたが、中心となるのは米中の企業で、日本は遅れている」とコメント。
「では次に何をやる、といったとき、我々がネットワーク、ソリューション、サービスにおいて強みを作り上げていかなくてはいけない。そのコアになるのは、やはり通信インフラ。そこの先頭に立つことは、非常に意味があると考えています」(吉澤社長)。