●「山下達郎さんを意識して」

――アルバム2曲目に収録されているのは「シンデレラタイム」。私は80年代のアニメも好きなのですが、その当時のエンディングテーマを彷彿とするものだと感じました。

私もドラマやアニメのエンディングみたいな楽曲だと思いました! 「CITY」とは違った女性の柔らかいテイストを曲調から感じます。

――歌詞はどのように書きましたか?

最初に「(Ta・ra・ra) Cinderella Time」というサビが思いついたんです。そこから歌詞を組み立てていきました。ただ、完成した歌詞を見た本間さんから「男女のおどろおどろしい部分も書いた方がいい」というアドバイスがあったので、「ふたりを繋ぐ時間は永遠じゃなかった」という一文を最後に追加しています。最初は仲の良い男女の話かと思っていたら、最後に畳みかけるようにこのフレーズがくる。一気にハッとさせられる歌詞になりました。

――そんな本間さんからどのようなディレクションがありましたか?

「山下達郎さんを意識して」と言われたので、頭のなかで何度も達郎さんの声でこの曲をリピートしていました。

――言われてみると、タイトルからして山下達郎さんっぽさを感じます。

そうなんですよ。達郎さんが歌っていてもおかしくないんじゃないかなと思うくらい、雰囲気のある曲だなと思いました。

――3曲目は「Yの悲劇」。ブラスサウンドが印象的な一曲ですが、タイトルも気になります。

このタイトルは、スタッフさんとのお食事会で出た案だったんです。ノリで出来た曲なんですよ(笑)。

――えっ(笑)。

歌詞もスタッフさんの恋愛話を元にした物語となっています。2、3分くらいで思いつきました。そのときのインスピレーションから生まれた楽曲なので、自分でも満足のいく仕上がりです。音もサックスなどの音がノリノリで、パンチがあっていいですよね。レコーディングも楽しかったです。この曲は歌に登場する主人公の気持ちになって歌ったので、キャラクターソングと似ている部分があったかも。歌い方としては、演歌ではないですが、こぶしを入れるようにしています。

――「YADA」とあえて英字表記にするのが、80年代っぽいなと勝手に感じていました。

ここはWinkさんの歌を参考にしています。この言葉は、ひらがなにしてもカタカナにしても漢字にしても強い言葉と感じちゃうので、あえて英字にしました。

――4曲目は「ラブソングをかけて」。この曲に打楽器の印象的な音が取り入れられていますね。

流れ星が流れるような音が入っていたり、マラカスなどのアレンジが入っていたりと、すごく可愛らしい曲ですよね。歌うときは「ラムのラブソング」をイメージして、キャラクターソングにならない範囲で、女性らしい声質で歌うことを意識しました。

――なるほど。

……ただ、歌詞をよく見てみると「これはどういう意味なんだろう」って引っかかるんじゃないかな、と。この曲は、失恋をして思い詰めてしまった女の子の話なんです。本間さんから「もっと毒々しい恋愛を」というアドバイスもあったので、露骨に尖った歌詞を書いたつもりですね。とはいえ、その尖りをいかにポップに書いて歌として届けるのかは意識しました。「お星さまになってみようか」というフレーズが、まさにこの曲を表現している気がします。また「ねぇ、おねがいよ」というセリフっぽい歌詞を入れて、女性らしさも表現しました。

――曲調と歌詞の差が、逆に怖さや尖りを増幅させている気がします。

曲を聞いてくださる方には、そういう違和感も受け取っていただきたいですね。とはいえ、アルバムに収録されているどの曲も人によって捉え方は違うと思うので、「この曲にはこういうテーマがあるんです!」と押し付けることはなく、聴いてくださる方の解釈に委ねたいとは思っています。

●レーベル最古参

――5曲目に収録されているのは「プールサイドカクテル」。

このタイトルは、スタッフさんと80年代についてのトークをしていたときに「アイドルの大水泳大会」の話題になったことが発端となり、名づけられたものです。その話題から「そういうMVを作りたいよね」という話になって、続けて「このタイトルで曲を作って欲しいな」ということを言われ、完成に至りました。

――「アイドルの大水泳大会」。……それも時代を感じますね。

そうですよね。私はリアルタイムでは見たことがないですが、テレビ番組の過去映像などで見かけたことはあります。

――プールでアイドルの方が落とされて……。

そして、なぜかプールの真ん中に立って歌わされる(笑)。音環境はどうなっているのか気になっちゃいます。

――そこなんですね(笑)。歌詞はどのようなことをイメージして書きましたか?

この歌詞の主人公は執着心が強い女性。そして、「恋愛はそんなにうまくいかない」ということをテーマに書きました。本曲の歌詞については本間さんから「もっと考え欲しい」と言われたんです。なので、他の曲は詞が先行、曲が後から付くという作り方でしたが、この曲は音と歌詞をほぼ同時に作っていきましたね。

――本間さんが制作した曲を聞いたときの印象は?

もっと「CITY」のようなスナック感や夜のイメージが強い音になるかと思っていましたが、映画のシーンでも使われそうなくらい壮大な音楽になっていて驚きました。私にはない発想だったので、面白かったです。

――ミニアルバムを締める6曲目は「OUT OF BLUE」。この曲は詞が短いですね。

おっしゃる通り、詞を短くしたくて出来上がった曲です。本間さんと雑談していたときに、いま世の中に出ている歌は歌詞が長めで、色々な要素や意味が詰め込まれている感じがあるよね、という話になって。それはそれの良さが間違いなくあるのですが、80年代の歌は短くてスマートに、直接的な詞が多かったと思うんです。それなら、その時代の良さに則って、歌詞を短めに作ってみようという話になりました。

――その短めの詞のなかに「マフラー」というワードが出てきます。

他の曲同様にラブソングにはなっていますが、ここでいう「マフラー」は首に巻くものではなく、車のパーツなんです。しかも改造しちゃっているやつ(笑)。80年代の若者は車を持っている人や、車文化に慣れ親しんでいる人が多いイメージがあったんですよね。そこから、このワードをチョイスしました。

――曲を聞いたときの印象も教えてください。

ストリングスから入るのですが、あそこは悲痛な叫びだと感じました。さすが本間さんと、ただただ唸る曲でしたが、同時に音数が少なくて、テンポもゆっくりなので、歌うのが難しそうだとも思ったんです。

――実際のレコーディングはいかがでしたか?

難しい曲だと思っていたので、2日間レコーディング日として押さえていたのですが、何とか1日で終えられたので「よしっ」と心のなかでガッツポーズしました。歌っているときは、ライブを想像していましたね。きっとライトがブルーになって、一人で立って歌っているんだろうなぁ。その絵を想像すると、集中して歌えました。

――今回のミニアルバムの楽曲が披露されるライブも楽しみです。

一貫して80年代というコンセプトで歌っていますが、それぞれ雰囲気が違う曲なので、見せ方も色々と楽しめるんじゃないかなと思っています。ライブでは、カバー曲も歌ってみたいですね。男性のキーの曲を歌うのも、ありかも。

――ぜひ聴いてみたいです。全6曲について聞いてきましたが、この曲順は、どのように決まりましたか?

スタッフさんたちと話し合って決めました。実は、曲の間の秒数などにもこだわっているんですよ。「Yの悲劇」と「ラブソングをかけて」の間は短め、逆に「プールサイドカクテル」から「OUT OF BLUE」は長めになっています。今の時代、好きな曲を選んで個別に購入することもできますが、ぜひミニアルバム6曲を通しで聞いて欲しいですね。

――アルバムで聞くからこそ感じられるよさもある。

そうですね。きっと「OUT OF BLUE」からの「CITY」も、また違った感覚になって聞けると思うので、ぜひヘビロテしてください。

――今回お話を聞いてきて、デビューミニアルバムから、自分のやりたいことが実現できたんだと感じました。

できています。こんなに実現できていていいのかなと思うくらいに。とてもいいレーベルですよね。皆さんも入ればいいのに(笑)。

――仲間をどんどん増やしていきたい?

そうですね。いつかレーベルだけのフェスなんかができるといいな。

――そうなると、降幡さんがレーベルの最古参になりますね。

最古参! 言われてみれば、確かにそうですね(笑)。

――そんな最古参の降幡さん。今後、どのようなアーティスト活動をしていきたいですか?

今回は主人公があまり実らない歌詞ばかりだったので、次はもう少し明るい詞も書いてみたいですね。あとは、歌詞提供なんかもできればいいな。すごく大きなことですが、別のアーティストさんに自分の書いた詞を歌って欲しいという願いがあります。

――詞を書くのが好きなんですね。

好きですね。書いてみたらすごく楽しかったです。色々な詞を書くことで、表現の幅が広がればいいな。

――作曲への挑戦は?

してみたいですが、どうでしょう!? もう本当にセンスがないので(笑)。勉強して、いつかは挑戦してみたいと思います。

――本日はありがとうございました。最後に、降幡さんが考える「音楽」とは?

音楽はとても影響力があるものだと思います。その影響力は、世代を超えるもの。実際、私は80年代の楽曲を聞いていいと思い、しかも、それを表現するための行動まで起こしました。音楽って、時代などの垣根を超えたコミュニケーションツールですよね。私よりも下の世代の方たちがこのミニアルバムを手に取って、影響を受けてくれたら、とても嬉しいです。

●『Moonrise』
【通常盤】
価格:2,300円(税抜)
内容:CD1 枚
初回生産特典:2020年11月開催・スペシャルライブチケット最速先行抽選申込券
【初回限定盤】
価格:3,800円(税抜)
内容:CD1枚、Blu-ray1枚、20Pフォトブック・スリーブ付
初回生産特典:2020年11月開催・スペシャルライブチケット最速先行抽選申込券
【完全数量生産限定盤】
価格:3,500円(税抜)
内容:LPレコード1枚
初回生産特典:2020年11月開催・スペシャルライブチケット最速先行抽選申込券

収録曲:
【通常盤・初回限定盤】
01.CITY
02.シンデレラタイム
03.Yの悲劇
04.ラブソングをかけて
05.プールサイドカクテル
06.OUT OF BLUE
【LPレコード】
<A面>
01.CITY
02.シンデレラタイム
03.Yの悲劇
<B面>
01.ラブソングをかけて
02.プールサイドカクテル
03.OUT OF BLUE