全フロアに第5世代移動通信システム(以下、5G)のネットワーク環境を整備した複合施設「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」において、ソフトバンクは最先端テクノロジーを体感できる技術展「ギジュツノチカラ」を開催します。
テレビCMでは無邪気に『5Gってドラえもん?』と問いかけるSoftBank 5Gですが、その進捗はどうなのでしょう? また、成層圏の無人航空機から電波を飛ばす「HAPS」や、早くも開発がスタートした「6G」など、さまざまな“ギジュツの話”を聞いてきました。
「ギジュツノチカラ」とは
「ギジュツノチカラ」は、ソフトバンクの未来が詰まった技術展。第5世代移動通信システム「5G」をはじめ、ソフトバンクの先端技術を活用したイノベーティブな取り組みを「XR Live」「Digital ART」「5G LAB」「Broadcast」「HAPS」「6G」の観点から紹介しています。
なお、もともと一般公開を予定していた「ギジュツノチカラ」ですが、新型コロナウイルスの感染拡大が収まっていない状況を受けて、現在は原則としてメディア、社内、取引先に向けた公開に限定しています(360度視点のバーチャルで展示を楽しめる特設サイトは、2020年9月7日から一般公開予定)。ソフトバンクでは今後、こうした技術を紹介するイベントにも積極的に取り組んでいくとのことなので、今回、興味を持った人は、次回以降の展示会開催に期待しましょう。
成層圏から電波を飛ばす? 空飛ぶ基地局「HAPS」
はじめに、イチバン夢のある話題から紹介していきます。米Alphabet Inc.の子会社であるLoon LLC(ルーン)とソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルは、2017年より地上から20kmの成層圏に“空飛ぶ基地局”を飛ばす計画を進めています。この日の展示では、その通信機器「HAPS用ペイロード」が初公開されました。
無人航空機「Sunglider」に積まれるこのペイロードは、1基で直径200kmをカバーできる能力を保有します。ソフトバンクでは将来的に「Sunglider」を40機ほど飛ばし、日本全土(離島を含めて)をエリア化していく考えです。
その狙いについて、ソフトバンク 先端技術開発本部の山田大輔氏は次のように説明しました。
「ゆくゆくは、物流や交通のインフラとしてドローンが使われるような時代になるでしょう。すると、空域も通信エリアとしてカバーする必要が出てきます。また喫緊の課題としては、地震や台風といった災害の影響を受けない安定した基地局も求められています。このほか、非居住地域をエリア化する狙いもあります。例えば現在、人の住まない山奥で産業のためにIoTセンサーを使おうとしても、圏外の可能性があります。そうした非居住地域に基地局を打つ代わりに、空からエリアをカバーしようという考えです」
災害時には衛星通信という手段もありますが、衛星基地局は地上と距離が1,000km以上も離れており、専用端末でないと地上からアクセスできません。通信方式も独自の衛星通信方式を使用します。しかし地上から20km上空のHAPSなら、一般のモバイル端末からLTEや5Gの電波を使ってやり取りできるというわけです。
では具体的に、どのような運営方法になるのでしょうか。
「Sunglider」は、地上の専用飛行場から離陸します。動力は充電池。プロペラを回し、ゆっくり旋回しながら8時間くらいかけて成層圏まで到達するそうです。
そして、ソーラーパネルで6カ月もの間、飛び続けます。昼間は太陽光で充電し、夜間は蓄電された電力で飛行を継続。予定された飛行期間を終えたら、地上に降下させ、ソーラーパネルのメンテナンスなどを実施したあと、再び離陸させることを考えています。
なお、成層圏では円を描いて定空するため、定められた地域を安定的にエリア化する基地局として機能するんだとか。
ソフトバンクでは現在、この「Sunglider」を2機保有中。実験を踏まえながら量産体制に入っていく予定です。量産できれば生産コストも大幅に下げられると見込んでいます。
こうした計画は日本だけでなく、グローバルでも進行中。将来的には南米、アフリカ、などリージョンごとに無人航空機が飛ぶ状況になりそうです。仮に世界中で飛ばすと、その数は計算上で4,000機くらいになる、との話でした。