青色申告と白色申告の違い
ここまで見てきた青色申告ですが、では具体的に白色申告とは何が違うのでしょうか。青色申告で10万円控除の場合と55万円控除の場合も加えて3パターンで比較しました。
比較項目 | 白色申告 | 青色申告 10万円控除 |
青色申告 55万円控除※ |
---|---|---|---|
手続き | 不要 | 開業届 青色申告承認申請書 |
開業届 青色申告承認申請書 |
記帳方法 | 簡易な方式の記帳 | 単式簿記 | 複式簿記 |
確定申告に 必要な書類 |
・確定申告書B | ・確定申告書B ・青色申告決算書 (貸借対照表は作成義務なし) |
・確定申告書B ・青色申告決算書 |
作成帳簿 | 簡易な記載の帳簿 | ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・固定資産台帳 ・経費帳 |
・総勘定帳 ・仕訳帳 ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・固定資産台帳 その他必要な帳簿 |
受けられる 特別控除額 |
10万円 | 10万円 | 55万円 (一定の条件を満たせば65万円) |
青色事業専従者給与の控除 | なし | あり | あり |
損失の繰越し・ 繰戻し |
なし | あり | あり |
※令和1年までは65万円、令和2年の確定申告からは55万円
白色申告の場合は、税制上の特典はほとんどない代わりに、作成する帳簿は簡易なもので問題なく、記帳の負担は最も少ない方法です。単式簿記で記帳する場合は、記帳方法がシンプルですが、控除額は10万円と少なくなります。専従者給与の控除や損失の繰越し・繰戻しに関しては、単式簿記の場合も可能です。
青色申告をするかどうかの判断ポイント
青色申告をするかどうかの判断ポイントは、青色申告のメリットを享受できるかどうかという点です。判断ポイントを4点紹介しますので、青色申告をするかどうかを検討する際は参考にしてください。
まだ赤字が続く見込みかどうか
事業を始めたばかりのときは、なかなか利益が出ないのが一般的です。まだ赤字が続くことが見込まれる場合は、純損失を繰越しまたは繰戻しが可能です。
純損失の繰越しまたは繰戻しは、複式簿記に対応していなくても利用できますので、税務署に青色申告承認申請書を提出しましょう。
事業を今後とも長く継続する予定かどうか
事業を長く続けていくと、利益が出るようになっていきます。青色申告をすることで受けられる節税効果があるかないかで、毎年税金の負担にかなりの差が。また、税金だけでなく、健康保険料の負担も大きくなるので、実質的な差はさらに広がります。
これからも事業を続けていくのであれば、青色申告で複式簿記による記帳を行い、税制上の特典を最大限に活かす方向で検討しましょう。
家族に給与を渡すかどうか
家族に給与を渡す場合、青色事業専従者給与の控除が受けられる青色申告を検討しましょう。青色事業専従者給与の控除は、純損失の繰越しまたは繰戻しと同じく、複式簿記に対応していなくても利用できる特典です。ただし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する手間が発生します。
複式簿記による記帳ができるかどうか
「青色申告で複式簿記は難しい」という話はよく見られますが、本当に難しいかどうかは、試してみないとわかりません。実際に、これまで経理の知識を持たなかった人が、自分で複式簿記を行い青色申告しているケースもあります。
複式簿記による記帳を試してみて、自分でもできそうかどうかを確認してみてください。どうしても自分では記帳できそうにない場合でも、外部委託といった他の方法を検討してみましょう。
青色申告の複式簿記が難しい場合の対応方法
青色申告のメリットを最大限に活かすためには、複式簿記による記帳が必要です。どうしても対応できない人の解決方法をいくつか紹介しますので、自分でできそうな方法があるかどうかをチェックしてください。
会計ソフトでの記帳
会計ソフトは、記帳の手間や帳簿作成の手間をかなり軽減してくれます。日々の取引を手入力し、銀行やクレジットカードの動きはデータ連携で自動的に取り込むことも可能です。
必要帳簿は、入力データを基に自動生成。帳簿の間違いを見つけた場合も、データを修正するだけ。全帳簿には自動的に反映されるため、会計処理の手間はかなり削減できます。
青色申告会で専門家に記帳のやり方や書き方を質問
複式簿記による記帳を始めたばかりのときは、言葉ひとつとっても意味がわからず、なかなか進まない事態が考えられます。この場合は、地元の青色申告会への入会もおすすめの方法です。青色申告会では、記帳のやり方、書き方、仕訳の仕方といった疑問にすべて答えてもらえます。
自分では難しい場合は税理士に記帳を委託
会計ソフトを使いこなす自信がない場合は、帳簿作成をクラウドソーシングや青色申告会で税理士を紹介してもらい、外部委託するという方法も可能です。外部委託のコストと、自分で記帳する手間とのトレードオフで検討してみてください。