個人事業主として起業したり、サラリーマンで副業を始めたりすると、気になるのは確定申告です。青色申告で複式簿記にすると節税になるとは分かっていても、複式簿記の対応が大変そうで、白色申告のままにしている、という人もいるのではないでしょうか。

そこで、本稿では青色申告の基本的な仕組みをわかりやすくまとめました。青色申告のメリットとデメリット、白色申告との違い、複式簿記にするかどうかの判断ポイント、さらには青色申告承認申請書の届出から確定申告書の提出までの流れについても紹介します。

青色申告にするかどうか迷っている場合は、ぜひ参考にしてください。

青色申告とは

青色申告とは、制度で定められた一定の帳簿に日々の収入や支出を記帳し、その内容を基に所得税額を計算して税務署に対して確定申告を行い、所得税を納める制度です。青色申告者の中でも、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい確定申告をすると、税制上の特例が受けられます。

帳簿は、正規の簿記の原則によって作成されたものでなければならず、記帳の形式は「単式簿記」(簡易簿記)または「複式簿記」と定められています。税制上の特典が受けられる「一定水準の記帳」とは、複式簿記のことです。作成した帳簿類は、原則7年間の保存が義務づけられています。

  • 青色申告とは

    青色申告の仕組みを理解しましょう

青色申告を利用できる人の条件

青色申告を利用できるのは、不動産所得、事業所得、山林所得があり、事前に青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に届けている人です。

その年の1月16日以後に新規開業した場合は、業務開始日から2カ月以内に「青色申告承認申請書」を提出します。すでに開業して何年か経っていて初めて青色申告をする場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。

2020年に青色申告をするためには、2020年3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要がありました。もしも間に合わなかった場合は、2021年の確定申告からが青色申告の対象です。

  • 青色申告を利用できる人の条件

    青色申告を利用するには、事前に所轄税務署長に届け出をしておく必要があります

青色申告のメリット

青色申告のメリットは、ひとことで表現すると「節税」です。青色申告することで受けられる税法上の特典を4点紹介します。

  • 青色申告のメリット

    青色申告のメリットをきちんと知っておきましょう

青色申告特別控除を受けられる

最も知られている税法上の特典は、青色申告特別控除を受けられるという点です。青色申告特別控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 取引を正規の簿記(複式簿記)により記帳
  • 記帳の内容を基に貸借対照表と損益計算書作成して確定申告書に添付
  • 法定申告期限内(基本は3月15日、土日の場合は次の平日)に提出

青色申告特別控除は、2019年(令和元年)までは65万円でしたが、2020年(令和2年)以降は55万円となります。ただし、以下のいずれかの条件を満たす場合は、65万円が適用されます。

  • 仕訳帳及び総勘定元帳を電子帳簿保存
  • 所得税の確定申告書及び青色申告決算書を、提出期限までにe-Taxにて電子申請

青色申告で青色申告特別控除を満たさない場合は、白色申告と同様10万円の特別控除を受けられることのみです。

青色事業専従者給与を経費にできる

通常、家族が事業を手伝ってその報酬を払っても、白色申告では経費として認められません。しかし、青色申告にすると、以下の条件で家族に支払った給与を必要経費として申告できます。

  • 青色申告者と生計を一にしている家族
  • 年齢が15歳以上
  • 青色申告者の事業に専念している(他の仕事をしていない)
  • 事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出している

青色事業専従者給与の支払い対象となった家族は、所得控除の対象にはできません。

損失の見込額を貸倒引当金として計上できる

事業所得を得ている青色申告者で、売掛金や貸付金の貸し倒れによる損失が見込まれる場合は、貸倒引当金として必要経費に計上できます。

貸倒引当金の見込額は、その年の年末時点における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下(金融業の場合は、例外として3.3%)の金額が認められます。この方法は「一括評価」と呼ばれる方法です。

一括評価とは別に、個別に損失の見込額を貸倒引当金勘定に繰り入れることもできます。この方法は個別評価と呼びます。個別評価にて処理をした貸金は、一括評価を行う帳簿価額の合計からマイナスしなければなりません。

純損失の繰越しと繰戻しができる

青色申告者は、純損失の繰越しと繰戻しができます。この特典を受けられる条件は、不動産所得、事業所得、山林所得に損失が出ていて、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない金額が出る場合です。損失額は翌年以後3年間にわたって繰越しでき、各年分の所得金額から控除できます。

前年度に青色申告をしていて利益があり、次回の青色申告では損失が続きそうな場合は、今年の純損失を、前年度に繰戻すことも可能です。純損失の繰戻しによって、前年支払った所得税から還付を受けることができます。

純損失を繰越すか繰戻すかは、翌年以降も事業をするかどうか、そのとき置かれた状況によって自分で決められます。

青色申告のデメリット

節税の点ではメリットの多い青色申告ですが、デメリットも2点ほどあります。どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。

  • 青色申告のデメリット

    青色申告のデメリットもきちんと知っておきましょう

記帳に手間がかかる

多くの人が青色申告特別控除を受けることを挫折する理由は、記帳の煩雑さにあります。特に、経理に関する知識がない人が、複式簿記による記帳を行うのは時間も手間もかかるため、挫折して白色申告のままにする人も少なくありません。

必要書類が多い

正規の簿記の原則に則った記帳により青色申告で確定申告を行う際は、白色申告に比べて多くの書類が必要です。

日々の記帳では、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳。年末にはこれらの書類を基に、貸借対照表と損益計算書を作成しなければなりません。請求書、見積書、納品書、送り状のように、日々の取引で発生する書類も保存する義務があります。