ETF(上場投資信託)は、少額から始められる投資信託のひとつです。投資というと、「初心者には難しい」「ある程度の資金がなくては始められない」と思うかもしれません。そんな方は、株式に比べてわかりやすく、知識が少なくても始められ、手数料も安いETFを検討してみてください。
本記事ではETFについて、他の投資信託と比較しながら見ていきます。ETFのメリットとデメリット、ETFの種類、始め方も紹介します。
ETFとは? 投資信託・株式の違いとは?
最初に、ETFについて基礎から説明していきます。
ETF(上場投資信託)とは? 投資信託・株式の違いとは?
ETFとは、Exchange Traded Fund(上場投資信託)の略です。投資信託とは投資した人のお金をひとつにまとめ、専門家に運用をまかせる金融商品を指します。ETFは、その投資信託そのものを証券取引所で株式と同じように売買できるようにしたものです。
ETFには日経平均株価に連動するタイプの商品や、海外株式に連動するETF、REITという不動産に投資されるETF、金や原油の商品指数に連動するETFといった、数多くの種類の商品があります。
本記事では初心者も購入しやすく、最もスタンダードな日経平均やTOPIXに連動するタイプのETFを中心に説明します。
ETF運用の仕組み
ETFは株式と同じように証券取引所で購入できます。安いときに購入し、高くなったら売却するという売却益を狙うのも株式市場と一緒です。個人向け国債のように満期が決まっているものではないため、収益を得られる機会だと思ったときに売却します。
預金や個人向け国債とは異なり、元本の保証はありません。そのため運用に関してはリスクを避け、株価や経済全体の動きに注意しておく必要があります。
そのほか株に配当金があるように、ETFにも株の配当金に相当する分配金があります。一般的に年に1回程度受け取ることができますが、なかには分配金のないETFもあります。
ETFと投資信託、株式の違い
ここでETFと投資信託、株式の違いを簡単にまとめます。
ETF | 投資信託 | 株式 | |
---|---|---|---|
どこで購入できる? | 証券会社 | 証券会社・銀行 | 証券会社 |
いつ購入できる? | 証券取引所の取引時間中 | 申込期間中の 9時~15時 |
証券取引所の取引時間中 |
購入価格は? | リアルタイムで変動する | 基準価額 (1日1回算出) |
リアルタイムで変動する |
注文方法は? | 成行・指値注文ができる | 基準価額がわからない状態で行う | 成行・指値注文ができる |
購入時に手数料はかかる? | 証券会社ごとに異なる手数料がかかる | 投資信託ごと、販売会社ごとに異なる手数料がかかる | 証券会社ごとに異なる手数料がかかる |
保持している間は お金がかかる? |
信託報酬がかかるが投資信託と比較して安い | 信託報酬がかかる | なし |
最低どのくらいから始められる? | 1万円程度から始めることが可能 | 1万円程度から始めることが可能 | 10万円程度は用意しておきたい |
上図をみると、ETFは投資信託と株式の両方の性質を持った金融商品であることがよくわかります。
ETFのメリット・デメリットとは
ETFで資産運用をする前に、メリットとデメリットを押さえておきましょう。
初心者にとってのETFのメリット
これから投資を始めようと考える方にとって、ETFは始めやすい金融商品です。それは、以下の3つのメリットがあるためです。
- 値動きがわかりやすいこと
- 分散投資ができること
- 小口から始められること
このメリットをくわしく見ていきましょう。
値動きがわかりやすいため、初心者にも始めやすい
一般にETFはわかりやすさが特徴とされていますが、どこがわかりやすいのでしょうか?
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株と比べると
ETFの代表的なものに、日経平均のETFがあります。これは、日経平均株価に連動したもので、日経平均を構成する225銘柄をすべて買うのと同じことができます。
たとえば、これから日本経済の景気が良くなりそうだ、という見方ができるとします。当然、株価も全体に上昇するでしょう。ETFもそれに連動して上がっていくだろうと予測できます。そこでさらに買い足すこともできます。
逆に、株価が全体に下がりそうだ、という予想が立った場合には、ETFもそれに連動して下がるだろうと予測できます。そこで早めに売却することができます。
個別の株であれば、企業の動向や、その他のさまざまな不確定要素によって株価が変動していきます。そのため運用はプロでなければ難しく、常時値動きを監視しておく必要があります。
ところが連動型のETFであれば、経済全体の動静に目を配っていれば、プロでなくてもある程度の予測ができます。ETFがわかりやすい金融商品だと言われるのはそのためです。
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投資信託と比べると
投資信託では、投資家が買い注文を出した段階では、いくらで買えたかを知ることができません。株式市場が閉まった段階で試算される基準価額で信託を買うという決まりがあるためです。これをブラインド方式といいます。
それに対してETFは、普通の株式と同じように、リアルタイムで売買することができます。各投資信託会社のETFが今いくらなのか、自分が購入したETFがどれだけ値上がり(値下がり)しているのか、リアルタイムで知ることができます。
そのため投資信託に比べても値動きがわかりやすいです。
分散投資ができるため、初心者でもリスクが少ない
ETFは「日経平均株価」や「TOPIX(東証株価指数)」をまとめて買うのと同じことができます。市場全体を購入することになるため、個別企業にくわしくなくても、日本全体の景気動向に合わせて、売り注文や買い注文ができます。
株式投資の場合、企業の業績が向上すれば株価も上昇し、投資家は売却益を確保でき、高い配当金を手にすることもできますが、逆に企業の業績が悪化すれば株価は下落し、損をすることになり、配当金も減るかもしれません。
それに比べETFは全体の平均であるため、個別企業の業績は、全体にそれほど大きな影響を及ぼすことはありません。もちろんコロナ禍のように株価全体が大きく値をさげるようなこともあるので、リスクがまったくないわけではありません。
小口から始められるので、不安が少ない
ETFも投資信託も小口資金から投資できる金融商品です。また、手数料が安いという魅力もあります。
ETFも投資信託も2種類の手数料がかかります。売買するときにかかる手数料と信託報酬です。売買にかかる手数料は株式の売買と同じで、証券会社ごとに決まった手数料がかかります。大手の対面型の証券会社のほかに、楽天証券やSBI証券といったインターネット証券もあります。
ネット証券の売買手数料は、証券会社の店頭での売買取引と比較すると手数料が大幅に安く、楽天証券やSBI証券には手数料無料(2020年7月現在)の銘柄もあり、利益を上げるチャンスも増えます。
信託報酬はETFを保有しているときにかかる運用管理費用です。投資信託にも日経平均株価に連動する商品がありますが、ETFの方が信託報酬は低く抑えられています。
ETFのデメリット
ETFには、デメリットが2つあります。
- 税制優遇制度のあるつみたてNISA、iDeCoでは利用できない
- 自動積立商品がない
NISAとは、少額投資非課税制度のことです。通常、投資で利益が出ると、その利益に対して課税されます。具体的には、利益に対して約20%の税金(所得税15%、住民全5%、復興特別所得税0.315%)がかかります。NISAでは、一定額の範囲内であればこの税金がかからない、という制度になっています。
当初、NISAは年間投資上限額が120万円、投資した年から最長5年間でしたが、その後積み立てのみを対象とした「つみたてNISA」が登場しました。こちらは年間投資上限額が40万円という上限があるものの、投資した年から最長20年間の非課税が魅力で、人気のある金融商品です。
しかしETFでは一部の例外はあるものの、基本的には、つみたてNISAを利用できません。一般NISAであれば利用できるので、非課税制度を利用したい方は一般NISAを利用してください。また、NISAと同じく税制優遇制度のあるiDeCo(個人型確定拠出年金)も、ETFは利用できません。
つみたてNISAだけでなく、投資信託には少額で毎月こつこつと自動的に積み立ててくれる商品もあります。しかしETFには自動積立の商品は種類も少なく、毎月積み立てて投資をしたいと考える方や、iDeCoを利用したいと考える方には、ETFより投資信託が向いているでしょう。