睡眠記録をApple Watchが搭載する意味

続いて、watchOS 7の新機能「睡眠記録」です。新機能とはいっても、以前から睡眠時間を記録するサードパーティー製アプリは存在しましたし、すでにいろいろなスマートデバイスが対応しています。watchOSが今この機能を搭載する理由は何なのでしょうか。

まずは使い方を簡単にご紹介します。睡眠記録はiPhoneの「ヘルスケア」に内蔵される機能の一つです。iOS 13では「時計」の中にあった「ベッドタイム」に似ています。ここで就寝時刻と起床時刻、曜日ごとのオン・オフスケジュールを設定します。併せて、睡眠準備のためのショートカットも設定できます。

Apple Watchはこのスケジュールに従い、毎日の就寝時刻15分前(変更可)に通知を届け準備を促します。同時に「おやすみモード」も開始して通知をオフにします。就寝時刻になると「睡眠モード」で画面表示をオフに(タップした時のみ時刻を表示)。ベッドに入ると心拍数などから自動的に入眠を検知して記録します。

  • iPhoneのヘルスケアで睡眠スケジュールを設定。Apple Watchはそれに従って睡眠モードに移行します

起床時刻にはiPhoneのソフトな目覚まし音と同時にApple Watchが振動します。振動を止めると睡眠モード終了、という流れになります。眠りの浅い時を察知して起こす、といった機能はありません。

  • 睡眠中のバッテリー消費はそれほど多くないものの、モデルや使い方によってはどこかのタイミングで充電時間の確保が必要そう

  • 毎日の記録は「ヘルスケア」に蓄積されます。Apple Watchには独立した「睡眠」アプリがあります

自分をマネジメントをラクにする手段としてのApple Watch

「機能」として特別な目新しさはない睡眠記録ですが、「体験」として捉えるとちょっと違う面が見えてきます。それは、この機能の目的が単なる「記録」ではなく、生活のセルフマネジメントを「サポートする」ことにあるのではないか、という点です。

例えば、睡眠スケジュール設定時にショートカット(※)を追加すると、「寝る前用プレイリストを再生」「ストレッチアプリを開く」など寝る前のルーティーンをつくり、決まった時刻に始められます。また、15分前には通知を遠ざけ、定刻には画面が消えるため、もう寝なきゃと意識を切り替えるきっかけになります。

筆者にとって、これまで「やることを済ませて残った時間で寝る」だった睡眠への意識が、「決まった時刻に就寝するために行動する」と真逆に向くことになりました。"1日の終わり"を強制的に決めるからこそ、時間の使い方を具体的に考えられるようになるのです。今までの夜更かしはダラダラ残業と同じだったということですね。睡眠時間そのものも大事ですが、睡眠のマネジメントをサポートしてもらうことで、自分は起きている時間の使い方に意識を向けられるというわけです。

セルフマネジメントに完璧を求めるのは意識高くて息切れしそうですが、Apple Watchのサポートがあれば「管理者役の自分」が少し楽になります。似たようなことはすでに「アクティビティ」で実現されています。消費カロリーや立つ回数の管理をApple Watchに任せているから、自分は「足りなければ対応する」だけで済むのです。

睡眠記録は、毎日のセルフマネジメントを「サポートする」意味で、アクティビティと対をなすApple Watchの大きな柱になるのかもしれません。

  • 「アクティビティ」や「トレンド」は、セルフマネジメントをサポートする先例