「エクスペリエンスルーム」でブランドの世界観を体験

また、アイテムの展示だけでなく、b8ta Tokyoの店舗には半個室の空間「エクスペリエンスルーム」が用意されている。ここでは空間全体を使って、ブランドの世界観が表現されており、b8ta Tokyo – Yurakuchoには、現在「Google」と「カインズ」のエクスペリエンスルームがある。

Googleのエクスペリエンスルームで最も興味をひいた体験は、Googleのスマートフォン「pixel 4」のカメラを使ったものだ。エクスペリエンスルームの中心に設置されているLEDチューブで作られたオブジェを、「pixel 4」のカメラ越しに見ると、肉眼よりも色鮮やかに見えるという仕組みである。

「口で説明したり、ただプロダクトを使ってもらったりするよりも、インパクトのある体験をしてもらうための空間が、ここエクスペリエンスルームです。どうすればお客さまに唯一無二の体験や学びを提供できるか。企業さまと綿密なミーティングをして、こだわりや工夫を詰め込んだ空間を作り上げています」(堀切氏)

  • b8ta Tokyo

    肉眼だと白っぽい光しか見えないが、「pixel 4」のカメラでは虹色のオブジェに映る

もうひとつのエクスペリエンスルームで展示をしているのは、埼玉県に本社があるホームセンターのカインズ。世界最大規模のIT企業Googleと、郊外を中心に店舗展開するホームセンター・カインズという並びは、少々意外に感じられた。

「お客さまにとって新しい出会いを創出するという意味では、最新ガジェットでも生活用品でも変わらないと思っていて。カインズさんのスペースを訪れたお客さまが『これ便利そう、ほしい!』と感じてくれたら、自分たちにとっては大成功です。実際に、人気商品の『箸先がつかない菜箸』や『スパッと切れるラップケース』は今日だけでも在庫がほとんど捌けてしまいました」(堀切氏)

  • b8ta Tokyo

    カインズのエクスペリエンスルームでは、ラップケースや傘立て、ほうきなどの生活用品が並ぶ

企業の想いを伝え、もっと体験できる空間に

「新しい」「便利」「かっこいい」から「かわいい」までがそろう、b8ta Tokyo – Yurakuchoに展示されたプロダクトについて、自身の実体験や開発者の情報などを交えながら解説をしてくれた堀切氏。その理由は「出展企業の想いを代弁する」つもりで接客をするというb8taのポリシーにあるという。

「もちろん、いろいろなプロダクトの情報をインプットするのは大変。しかし、各企業の担当者さまから研修を受けて、プロダクトにかける想いを聞いていると『この想いを私たちがお客さまに伝えないと』という気持ちになってくるんです。すると、商品紹介に終わらない“ストーリー紹介”になっていくんだと思います」(堀切氏)

この話を聞いて、RaaS(Retail as a Service)の先駆的存在と呼ばれているb8taの、意外にも人間臭い努力に驚いてしまった。クラスの優等生に「昨日勉強した?」と尋ねたら「もちろん、死ぬほどしたよ」と答えられたような。そして同時に、だからこそb8taの店頭には、どこか温かみのある雰囲気が漂っているのだろうと、納得がいった。

掲げた理想に向かってひた走るb8taのこれからが知りたくなって、オープン初日で聞くのは気が早いかもしれないと思いつつも、最後に直近の目標について尋ねてみた。

「今は店内に入れる人数も、店頭でできることも限られている中で運営している状態なので、これからもっと体験できることを増やしていきたいですね。路上で自転車の試乗会をしたり、食品の取り扱いを増やしたり」(堀切氏)

堀切氏の頭には、すでに体験のアイデアであふれている。

「本当は、展示中の浄水器、『和食のためのクリンスイ』の水も試飲してもらえるようにしたかったんです。また、製品を展示している企業さまを招いて、店頭でお客さまと交流してもらうといったb8taならではの取り組みなど、今はもう挑戦したいことしかないですね」(堀切氏)