arrowsシリーズで3年ぶりとなるハイエンドスマートフォン「arrows 5G」(F-51A)が7月30日、NTTドコモから発売された。8月7日、メーカーの富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)はオンライン記者発表会を開催し、新モデルのコンセプトやこだわりを紹介した。
クアルコムとの共同開発で挑んだ5G初号機
arrows 5GはFCNTが設計する久々のハイエンドモデルにして、初の5G対応モデルだ。先進性や薄さを追求し、5Gの世界観をストレスレスで体験できるようこだわって開発したという。
5G初号機の開発にあたりFCNTは、チップセットメーカーのクアルコムと共同開発の体制を組んでいる。FCNTはクアルコムとともに、最新チップセットSnapdragon 865のリファレンスデザイン(見本となる設計図)を共同で開発。その成果を自社向け製品として取り入れたのが「arrows 5G」だ。
arrows 5Gと、そのベースとなったクアルコムとのリファレンスデザインとの差分としては、防水性能やおサイフケータイへの対応のほか、アプリへの素早いアクセスを目指す「FAST」機能のような、ソフトウェア上の独自機能が挙げられる。背面の素材感もarrows 5G独自のもので、波や光をイメージした細やかな表現を取り入れた。
“ミリ波対応”で世界最速・最薄
先進性のきわだった部分のひとつが、5Gで使われる新たな周波数帯「ミリ波」をサポートした点だ。5Gで新しく追加されたミリ波帯は携帯電話向けの周波数帯としては最も高い帯域となり、潤沢な帯域が使える(=高速な通信が可能だ)が、障害物に弱く遠くまで飛ばない性質を持つ。安定した通信を行うには微弱な電波を多く捉える高度な技術が要求される。
また、5G初期チップセットのSnapdragon 865では、モバイル通信用のモデムがチップセットに組み込まれていないため、スマートフォン内部にその設置領域も確保する必要がある。
したがって、ミリ波に対応しようとすると、大きなアンテナを搭載し、必然的にボディは大型化することになる。その条件下でarrows 5Gは「世界最速・最薄」を目指した。
その結果、arrows 5Gでは発売時点のミリ波対応スマートフォンで世界最薄となる厚さ約7.7mmを実現した。また、ドコモ5Gの初期ラインナップの中で、ミリ波対応機種はこのarrows 5GとGalaxy S20+の2機種のみ。国内メーカーの個人向けモデルとしては唯一のミリ波対応モデルとなった。
ミリ波の通信では、スマートフォンを持った際の電波の減衰と、発熱への対処が課題となってくる。前者はさまざまな持ち方で電波干渉が起こらないような機構設計を行っている。後者はモデムやチップセットからの発熱をべイパーチャンバー(板状の熱拡散部品)によって拡散させている。薄型化のため、内部構造に穴を開けてベイパーチャンバーを埋め込むという工夫も施した。