考察
ということで色々テストを行ってきた結果をまとめてみると
(1) Ryzen 3000 XTシリーズは、少なくともこれで性能が大幅にあがるといった期待をするものではない。少なくとも既存の3000Xシリーズユーザーが買い替えるべき理由は無い。
(2) とはいえ定価はほぼ一緒であり、もし同じ値段で並んでいるのであれば3000XTシリーズを購入しても問題はない。もう純粋に価格だけで決めて差し支えないとは思う。ただし、Ryzen 7 3800XT/Ryzen 9 3900XTを購入する場合は、CPUクーラーも一緒に買う事をお忘れなく。
(3) そのRyzen 7 3800XT/Ryzen 9 3900XT用クーラーだが、AMD推奨の「280mm以上のラジエターを持つCPUクーラー」はやや大げさに感じる。少なくとも今回試した限りで言えば、120mmラジエターのクーラーで十分冷える。
(4) StoreMIは、確かに一度キャッシュに入れば十分高速であり、使い勝手も容易になった。書き込みは一切高速化されない、という点にさえ気を付ければ、割と良い選択肢に思える。
ところで今回新規にCPU+マザーボードを購入しようと考えているユーザーは、ちょっと注意してほしい。通常新しいCPUが出ると、マザーボードのBIOS Updateが必須である。ところが今回、このテストをした時点ではAMDからそうした話が一切なく、「既存のX570マザーでそのまま動くはず」という話であった。結論から言えば、必ずしもそうとは限らない。
実際筆者の所有しているTUF GAMING X570-PLUSの場合、「何故か」Ryzen 7 3800XTが「1回だけ」ブートしたものの、その後二度とブートしなくなった(POSTにすら行かなくなった)。しかも、「DIMMを2枚挿しているとブートしないが、1枚だけにするとブートする」という不可思議なおまけつきである。勿論Ryzen 3000XシリーズはDIMM 2枚で正常にブートする。動いたという話もあるので、メモリの相性がシビアなのかもしれない。
冒頭AMDからASRocK X570 Taichiを借用したと書いたのは、このトラブルによるものである。実際、X570 Taichiは最新BIOSはVersion 3.0にも関わらず、今回はVersion 1.8のまま動作したあたり、AMDの言う「既存のマザーでそのまま動く筈」という話も判らなくはない。ちなみにそのX570 Taichiもこういう妙な現象(Photo30)が出ているあたり、どこまでちゃんと動いているのかちょっと怪しかったりもするが。
勿論これはマザーボード各社がちゃんと対応してくれれば済む話であるが、7月7日の出荷直後は、このあたりがどこまできちんと網羅されているのかちょっと心許ない(X570だけならともかく、X470とかB450/B550あたりになると数も多いからだ)。購入の際は、確実に動くことが保証されている組み合わせにするように注意してほしい。
余談であるが、TUF GAMING X570-PLUSは7月1日付でリリースされたVersion 2407でRyzen 3000 XTシリーズへの対応が完了したようだ(筆者環境で検証)。もう少し早くこのBIOSが出ていれば...というのは製品の発売前にテストをすることになった筆者の繰り言だが。