当初は「先生」としてのイメージが強めだった矢的猛だが、第11話「恐怖のガスパニック」や第13話「必殺!フォーメーション・ヤマト」のように、学校や生徒が登場せずUGM隊員としての活動がメインとなるエピソードも作られた。これにともない、今まで"脇"に置かれていたUGM隊員の活躍やメカニックの出撃・戦闘などもどんどん前面に打ち出されるようになり、従来のウルトラマンシリーズと同じ「特撮ドラマ」としての姿勢が見直されるようになっていった。
怪獣がビルを壊して大暴れするシーンや、UGMのスカイハイヤー、シルバーガルが滑走路を突き進んで離陸していくシーンなど、ミニチュアワークを用いた特撮の緻密さ、迫力は第1話から毎回ものすごいクオリティの高さで披露されていたが、第13話以降は特撮の見せ場をそれまで以上に増やすことで、いっそう娯楽性を高めようという動きが見られた。第13話は、シルバーガルをαとβの2機に分離して怪獣サラマンドラの急所を狙う猛とオオヤマキャップの連携作戦や、大型宇宙母艦スペースマミーが隊員たちの救援に現れる際の"重量感"など、メカニックの見せ場がこれでもかと詰められていて、特撮ファンの人気が高いエピソードである。
『ウルトラマン80』は心機一転、原点に戻るという考えからか「ウルトラ兄弟」のゲスト出演がほとんど行われなかった。第38話でウルトラの父が80を激励したほか、第44話では少年の「暴走族を憎む心」がウルトラセブンの人形に宿って巨大化した「妄想ウルトラセブン」が出た程度である。しかし、往年の人気ウルトラ怪獣は積極的に登場させており、第22話で「ゴモラII」、第37、45話で「バルタン星人」、第46話で「レッドキング」が80と激闘を繰り広げた。
本作は、学校が主な舞台となった第1~12話、SF色の強い第13~30話、子どもゲストと猛の交流を描いた第31~42話、ウルトラの女戦士ユリアン(星涼子)がレギュラー入りする第43~50話と、大きく4つに分けることができる。これは当初から意図していた変化ではなく、強力な裏番組(1980年9月24日からは日本テレビ系で『鉄腕アトム』がスタート)への対抗や、さらなる視聴率の上昇を見込んでの「番組強化策」を実行した結果、バラエティに富んだ構成になったと考えるべきだろう。最終回のタイトルは「あっ! キリンも象も氷になった!!」という、かなりインパクトの強いものになった。
新聞のラテ欄で視聴者の目をひきつけるという意味でも、サブタイトルを派手な内容にするのは効果的だと思われる。第37話「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」、第41話「君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?」、第44話「激ファイト! 80VSウルトラセブン」、第45話「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」、第46話「怖れていたレッドキングの復活宣言」など『80』の後半は特に、心にグッとくるサブタイトルの宝庫だった。
「あっ!キリンも象も氷になった!!」は、当初のシナリオでは怪獣マーゴドンの冷気によって南太平洋やアフリカが氷漬けになり、そこで暮らしているキリンも象も氷に……といった、世界規模の大被害をおよぼす大怪獣が出現する"最終回らしい"地球の危機をあおるストーリーに由来していたのだが、特撮予算の都合で世界規模のセットが組めなくなったため、舞台を九州の南原市に規模縮小して、キリンや象を「動物園が凍った」ということで切りぬけたそうだ。
"人間味のあるウルトラマン"=矢的猛のさわやかで明るいキャラクターと、ヒューマニズムを貫き通したストーリー、そして、徹底したこだわりで作り上げられるミニチュアワークや、"地上からの視点""リアリズム"を強く意識した特撮カメラ演出、グロテスクにならず独創的に努めた怪獣デザインと、カッコよさと生物感にあふれた造型テクニック、"ワンダバUGM"をはじめとする冬木透氏による至高のBGM、それまでのウルトラマン主題歌のムードを一新したTALIZMANの歌う「ウルトラマン80」「レッツゴーUGM」……。さまざまな魅力が『ウルトラマン80』には詰まっており、それは40年の時を経た今となっても決して色あせることはない。心のうるおいが不足しがちな昨今だからこそ、ぜひ観ておきたい作品だと断言できよう。