エリートサラリーマンからミュージシャンへと転身を果たし、大阪を拠点にライブ活動を続けてきたスギムの音楽ユニット「クリトリック・リス」。近年はアンダーグラウンドシーンを飛び出して全国にその名を広め、2019年4月20日には50歳を目前にして初めて日比谷野音でワンマン・ライブを敢行し、大観衆を前に予想をはるかに超える熱演を見せた。会場中が感動に包まれたエンディングの光景は今も瞼に焼き付いている。
マイナビニュースでは、昨年3月に野音ライブを前にしたスギムのインタビュー記事を2回にわたって掲載し、大きな反響を得た。そんな1年前からはまったく想像もできなかったコロナ禍の中で、彼は今どんな思いで日々を過ごしているのだろうか。元会社員、現役ミュージシャンという両面から、ピンチに陥ったときの心の持ち方、考え方についてメールインタビューにお応えいただいた。
人生経験豊富なスギムの含蓄のある言葉から少しでも勇気を受け取ってもらえたら幸いだ。そして、2020年11月1日、大阪城音楽堂にて開催される初の主催フェス「栗フェス2020」を楽しみに頑張ろうではないか。
コロナ禍、スギムさんはどんな毎日を過ごしているのか
――現在、スギムさんはご自宅でどんな生活を送っていますか。ある一日を例に挙げて教えてください。
コロナ以前と比べると、確実に睡眠時間が増えました。ライブが無いので昼ぐらいまで寝てます。その後は音楽を聴いたりエロ動画を観たりダラダラして、夕食を食べて、人通りが少なくなる夜に1時間ぐらい散歩します。人とほとんど会ってませんが、近所の猫たちとは仲良くなれました。こういう時こそ創作活動をしないといけないんでしょうけど、気持ちが乗らないので、はかどってませんね。
――ずっと自宅にいてストレスを感じている人は多いと思います。スギムさんにとってのストレスとは? また、それをどのように解消していますか。メンタルを保つ上での考え方などはありますか。
ここ数年は年間200本近いペースでライブをしてました。ライブハウスから色々な刺激をもらって活動の糧にしてきたので、今は退屈でしょうがないです。Twitterをやってるんですが毎日同じ事の繰り返しなので、ツイートする事が何も無いんですよ。「ツイートすることがない」とツイートするぐらいなのでよっぽどです。そんな中、いろんな人がオンライン飲み会に誘ってくれるので、それがストレス解消に繋がってます。ツイキャスで飲みながらのトーク生配信を始めたこともあって、お酒を飲む量は確実に増えましたね。ほぼ毎日飲んでます。酔い潰れてもそのまま横になって寝られるので、ついつい飲みすぎてしまいます。体重も増えました。
人任せにはせず、責任と自覚を持ってこのピンチを乗り超えたい
――会社員、ミュージシャン、様々なフリーランスに限らず多くの人がピンチに陥っています。今の状況に置き換えることはできないとは思いますが、スギムさんがこれまでの人生でピンチに陥ったとき、どうやって突破してきたのかを、サラリーマン時代、ミュージシャンになってからそれぞれのエピソードと共に教えてください。
会社員時代は上司から「ピンチの時こそチャンスだ」とよく言われました。トラブルを起こしてしまった時や、プレゼンに負けた時こそが大事で、ダメな部分を見直し、クライアントに改善・成長した姿をアピールするチャンスなのだと。その言葉を信じ、特にトラブルが起こった際は、何よりスピードを重視しました。クライアントへの状況報告を怠らず、自社の損失なんて考えず最短での対応策を選んで提案していました。日々の業務でトラブルは付き物なので「何かあっても安心」と思ってもらえたら今後の取引の強みになります。その時に発生した損失も、付き合いが続けば回収できますからね。
ミュージシャンになってからのピンチはというとやっぱり今です。先が見えず閉店するライブハウスも出てきています。終息した時に我々の出演するライブハウスが無ければミュージシャンはやっていけないので、自分の生活を心配しながら、常にライブハウス存続についても考えてます。
音楽業界ってサラリーマンと違い、優等生よりちょっとダメな方がうまくやっていけるんですよ。周りは個性の強い人ばかりだから、真面目なだけでは埋もれてしまう。一般の会社のようにガチガチの組織に囚われて無いので、個人の意見も通りやすい。政治家からは出ない斬新なアイデアが出てくる可能性が十分ある。「音楽で世界が変わる」なんて一度も思ったことがない。ただ音楽に関わってる人の思想やアイデアは独創的なものが多いので期待してます。僕も人任せにはせず、責任と自覚を持ってこのピンチを乗り超えたい。この世界を変えたい。