• 高野舞監督

――今期は医療モノのドラマが多いですが、その中でも1話完結ではない連続性のあるドラマに挑戦されていますね。

当初は1話完結の方がいいという話もあったんですけど、医師たちの“人となり”や生き様という部分や、人生みたいなものを描けたらいいねと太田(大)プロデューサーと話して、その中で心先生のプライベートや薫先生との出会いというのを描いていくと、結果的に連続性の出るドラマになっていたという感じですね。

――今作は原作がないオリジナルドラマで、特に医療モノだと、ドラマの中に病気や医学的知識が関わってくるのでお話作りが難しいような気がします。スポットを当てる病気がまずあって物語を作るのか、もしくはその逆だったりするのか、どのように物語を作っていくのですか?

各話作り方は違うんですが、第2話の乳がんのお話に関して言うと、それは私の中で構想がありました。薫先生が“がんサバイバー”というのは決めていたので、そのお話と乳がん。女性の乳がんだけではなく男性乳がんについても取り上げたいという話をして、そこから作っていきました。ただ病気ありきというストーリー運びではなく、大切にしたのは、まず医師と患者がどう向き合うのか? どんな対話を織り成すドラマなのか?を主軸に考えました。その上で医療監修の先生に相談して、色々アドバイスをいただき、物語を構築させています。

――乳がんのエピソードは構想があったということですが、何かきっかけがあったのですか?

自分の母も乳がんを経験していますし、私自身も他人事と捉えていないので、早い段階で乳がんというものを取り上げたいと思っていました。その上で、女性だけじゃないという情報も出そうと思って、男性乳がんのお話と、そこに薫先生のがんサバイバーの設定を重ねようと考えました。

■ワイルドな脱ぎっぷりは木村佳乃発案

――その第2話で、薫先生が患者さんの目の前で下着を脱いで胸の傷口を見せ、自分と同じ境遇だと伝えるシーンは、女性監督ならではの場面だと思いました。

そうですね、あのシーンをやりたいと言ったのは私なので。薫先生の「誰かのために生きたい」という価値観を表現するために必要なシーンだと思いました。医師として患者さんに対して、治療したり、言葉で励ましたり様々なことをされると思うのですが、その中で初めましての患者さんのために、自らの裸の胸を見せ、体を張って想いを伝えることができる薫先生の女性としての強さ、サバイバーとしての温かさ、彼女の生き様みたいなものを見せたかった。

撮影時の佳乃さんは、やはりプロフェッショナルでしたね。脱ぎ方を外科医らしくガツンとワイルドな感じでやりたいんだという提案をしてくださって、すごくカッコよかったです。あのシーンは、薫先生のキャラクターをグッと深めたのだと思います。

  • 木村佳乃 (C)フジテレビ

――今回の医療過誤のエピソードは、手術中で薫先生の視点では見えない…という部分など、専門家でないと分からない部分だなと思いました。医療監修の松本(尚)先生の実体験が原型なんですよね。

心と薫が出会うきっかけとなる大きな意味を持つ手術に関して、松本先生には多くのアイデアを頂きました。まず見える・見えないっていうのが想像つかないですよね。「緊急オペで、薫先生は気付かないままで、自分のせいだと思えるような事例はありますか?」などと条件を出して、それを先生に相談すると色々と考えてくださり、ディスカッションを重ね作っています。