いよいよ物語が終盤に差しかかってきた、女優・松下奈緒主演のフジテレビ系ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』(毎週木曜22:00~)。腫瘍内科を舞台に、決してスーパードクターではない医師が患者と真摯(しんし)に向き合いながら診療していくという人間ドラマと、2人の女性医師が出会ったことで生まれるサスペンスと友情物語を描いた、他の医療ドラマとは趣の異なる連続性の高い意欲作に仕上がっている。
そんな今作の演出を担当するのは、『昼顔』や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』などを手掛けてきた高野舞監督。今回が連続ドラマで初のチーフ監督だ。作品にかける思いやこだわり、そして出演者の魅力について聞いた――。
■“ALIVE=生きる”をどう表現するか
――連続ドラマでは今回初めてチーフ監督を務めていらっしゃいますが、これまでと作業や準備など違ったりするのでしょうか?
全く違います。セカンドやサードディレクターは3話くらいから現場に入るので、登場人物のキャラクターも作品の世界観も、チーフ監督が作ったものを壊さないように受け継ぎ、次の話へつなげるという感覚でしたが、チーフになると、自分が全て決めていかなければならない。それは重労働でもあり、醍醐味(だいごみ)でもありました。
――今回の第1話のファーストカットは、まず白い息が映り、屋上にいる心先生(松下奈緒)が深呼吸しているという美しい映像で印象的でした。どのようなイメージで作られたのですか?
“ALIVE=生きる”をどう表現したらいいのかなと考えました。生きているという実感を、日々の生活で意識することのない“呼吸”をモチーフにしてみてはどうかと。冬クールなので“呼吸”が白い息として象徴的に描けると思いました。第1話では、心先生の深呼吸はやがて患者さん(石野真子)が生きている実感を味わうための深呼吸へとつながっていく…そんな表現をしたかったのです。
■屋上ありきで設定づくり
――その“屋上での深呼吸”が、タイトルの『アライブ』にも、第1話の内容にもかかっているだけではなく、第5話では、心先生に薫先生(木村佳乃)が秘密を告白する衝撃的な場面にもつながっていて、その対比にも驚きました。
医療ドラマは、本作で言えば腫瘍内科が舞台なので、診察室とか面談室とか閉ざされた空間が多いんですよね。その中で唯一開放的になれる場所、定番ではありますが、屋上を用いました。あの屋上は制作部さん(※スタジオ以外での収録をセッティングするセクション)が頑張って素敵な場所を探してくれました。
「朝日がキレイに見える場所」とオーダーしたのですが、夕日が見える場所はある一方、朝日がキレイに見えるポジションを探すのは困難で、ロケハン(※ロケ地を選定すること)を繰り返しました。そんな朝日縛りもあり、ドラマで使用している屋上は実際の病院ではなく、別場所をお借りしています。そこから見渡す風景が横浜の港なので、病院の所在地も横浜にしました。屋上ありきで、諸々の設定が進んだ感じです。