iPadとの組み合わせによる拡張も
もう1つの可能性は、MacがApple Pencilをサポートするというものだ。しかし、これも限定的な可能性といえる。Appleは、MacとiPadの融合を繰り返し否定しており、Mac側から見ればMacへのマルチタッチディスプレイの実装はあり得ない、という結論を意味する。
もっとも、Appleが全力で否定していることは、何らかのタイミングで実現する、というジンクスもある。
もっとも印象的なのは、2007年にiPhoneを発表した際にマルチタッチを紹介したが、ここでスティーブ・ジョブズは「誰がスタイラスなんて欲しいんだ?」とスタイラスを採用するスマートフォンを否定していた。
しかし、2015年に登場したiPad ProからApple Pencilに対応し、今では販売されるすべてのiPadシリーズでApple Pencilをサポートするようになった。2020年モデルのiPhoneでは、ついにApple Pencilをサポートする可能性が浮上してきた。
Apple Pencilが、Apple製品全般に共通するインターフェイスとして採用されるのであれば、Macへの対応も否定しきれない。例えば、トラックパッドがさらに拡大し、そこでApple Pencilによる描画などの操作が可能になったり、すでにプレビューアプリに実装されている手書きによるサインの記入を行うなど、MacBook Pro1台でペンタブレット的な操作を実現できるとなれば、確かに便利そうではある。
ただし、現在はmacOS MojaveとiPadOS 13の組み合わせで、iPadをMacのセカンドディスプレイにする「Sidecar」が実装され、その際にiPad上でApple Pencilによる筆圧も含めた入力を実現しており、ペンタブレットというよりは液晶ペンタブレットとしての活用が可能になっている。つまり、iPadの力を借りてはいるが、MacでのApple Pencil活用はすでに実現している、と見てもよい。
ARの活用の可能性は
Siriは、声を使ってコンピュータを操る方法を提供しているが、ARの活用はもう少し異なる可能性を見せてくれる。
例えば、ジェスチャーによって画面の中のオブジェクトを動かしたり、何らかの機能を割り当てることもできる。ジェスチャーではなく、顔の表情でも対応できるだろう。これは、TureDepthカメラを活用したモーショントラッキングによって実現できるはずで、Macはもちろん、iPhoneやiPadなどでも有用になるのではないだろうか。
声やジェスチャーによる操作は、既存のキーボードやマウスの操作が難しい人のためのアクセシビリティ機能として何が必要か?というアプローチも意識すると理解しやすい。
Siriは、声によって複雑な要求を実現できるようにする機能だが、すでに搭載されているアクセシビリティ機能はより一歩踏み込んでおり、視覚に頼らずMacを操作できるレベルになっている。同様に、物理的なインターフェイスに頼らずコンピュータを操作する手段として、ジェスチャーの活用は確実に取り込まれていくことになるだろうし、その機能の一部は障害を持たない人たちにとっても、便利な操作方法を提供することになるだろう。