未来を象徴する「シアン」と「テルツォ ミッレニオ」
研究開発プロジェクト管理責任者のリカルド・ベッチーニ氏は、ランボが生み出す未来のスーパーカーについて解説してくれた。
「博物館でご覧になったと思いますが、1963年の最初のスポーツクーペ『350GT』から2018年のウルスまで、我々が開発するクルマは常に革新の連続です。一方で、自動車業界は今、大きな変革の時を迎えています。ランボルギーニが送り出すスーパースポーツカーは、2020年を境にハイブリッド化され、2030年代にはフルEVとなる予定です。それには軽量で効率的なエネルギー、単一ではなく複数の機能を持つボディ、機械的でなく信号で伝わるパワートレイン、そして、第3の千年紀を進むべき本当の理由、つまり、エモーションが必要となります。そのためには、学術関係との連携や自動車以外の産業とのコラボレーションが今まで以上に必要となるでしょう」
その具体例としてベッチーニ氏が言及した2台は、2019年のフランクフルトモーターショーで披露したマイルドハイブリッドコンセプト「シアンFKP37」と2017年に発表したEVコンセプト「テルツォ ミッレニオ」だ。
シアンのパワートレインは、アヴェンタドール用をさらにパワーアップしたV12エンジンに、最大出力34psを発揮する電気モーターを組み合わせる。画期的なのは、従来のリチウムイオン電池に比べて3倍力強く、3倍軽く、充電と放電を同じ効率で行うのでオーバーヒートしないという性質を持つスーパーキャパシタを、エネルギー蓄電用として採用した点だ。ちなみに、車名の「シアン」はランボルギーニ本社のあるイタリア・ボローニャ地方の「稲光」をあらわす方言。「FKP」は、ランボルギーニを傘下に収めるフォルクスワーゲンの元会長、故フェルディナンド・カール・ピエヒ氏を称える頭文字である。
「テルツォ ミッレニオ」は「第3の千年紀」を車名に冠するフルEVのスーパースポーツコンセプトだ。ランボルギーニは同社が大部分の資金提供を行っているマサチューセッツ工科大学の2つの研究所と提携し、開発をスタートさせた。その特徴は、蓄電システムにスーパーキャパシタを使用するとともに、ボディシェルを構成するカーボンファイバー自体を蓄電可能な素材とすることで、ボディ全体に蓄電機能を持たせようとしているところ。さらに、損傷を検出して“自己修復”する機能を持つボディや、インホイールモーターによる四輪駆動システムなどを採用するという。