――2019年4月放送の『ジオウ』第31、32話、いわゆる「アギト編」以来ひさびさにお会いした常磐ソウゴ役・奥野壮さんをはじめとする『ジオウ』キャストの印象はいかがでしたか?

久しぶりに会った彼らは、あのときとまったく変わらずみんな"いい奴"でしたよ。『ジオウ』を1年間演じて来て、良い経験を積んできているなと思わせる雰囲気を持っていました。今回のソウゴはテレビシリーズよりも大人びて、落ち着いているソウゴとして演出しました。もう、良いことも悪いことも知っているという。

高橋くんにとって、奥野くんと一緒に芝居をしたことがとても良い影響を与えたようでした。彼は2人の共演シーンを撮ったその日に僕の所に来て、「ここはどういう芝居にしましょうか」なんて、演技の相談をどんどんしに来てくれるようになりました。アドバイスも素直に聞いてくれるからうれしくなって、どんどん高い要求を出したりしたんですけれど、高橋くんはそういったものにもしっかり食らいついてきて、とてもやりやすかったです。高橋くんは間違いなく、映画の撮影を経たことでより大きく成長したと思います。

――高橋さんも第1、2話以来の杉原監督作品だけに、少しでも成長したところを見てほしいと意欲を燃やしていたようです。

高橋くんとイズの鶴嶋(乃愛)さんの芝居が映画で大きな役割を果たしますから、2人とは撮影に入る前から密に話をして、このシーンはこんな風に演じてほしいという、深いところまでつめていきました。2人ともものすごい熱量で、最後までぜったいに気を抜くことなく携わってくれましたね。

――杉原監督は台本にはない「ヒューマギアに対抗する人類側のレジスタンス」の描写をふくらませ、非常に個性的なキャスティングを追加されたとうかがっています。その狙いを改めて聞かせてください。

これは、ヒューマギアが人間を制圧している世界で、唯一人間に味方している存在のイズが大きく関係しているんです。ヒューマギアだからという理由でイズを憎んでいた人間たちが、あることがきっかけとなってイズを助けようと思い始めます。テレビシリーズで、ヒューマギアが自我や感情を持つようになる"シンギュラリティ"の逆パターンですね。台本上では不破と唯阿がその役割でしたが、イズと関わった人類全体という描写をより引き立たせるためにはレジスタンス側のキャラクターをもっと濃厚にしないといけないなと思って、数名もの濃い~い役者さんたちを選んでみました。みんなとても魅力的で、いつか彼らだけのスピンオフが撮りたいくらいです(笑)。

――或人の父で、かつヒューマギアでもある飛電其雄を演じた山本耕史さん、歴史が変わった世界で飛電インテリジェンスの社長になるヒューマギアのウィルを演じた和田聰宏さん、そして仮面ライダーの歴史を奪おうと画策するタイムジャッカーのフィーニスを演じた生駒里奈さんといった、映画ゲストについての印象を教えてください。

飛電其雄は、映画の根幹である"ゼロワン誕生"の鍵となる重要なキャラクターです。山本さんは或人の優しい父親といったイメージどおり、素晴らしい演技を見せてくれました。当初から映画での重要ゲストとして出てもらえることがわかっていましたから、テレビの第1、2話において回想シーンに登場してもらったんです。『仮面ライダーW(ダブル)』の吉川晃司(鳴海壮吉/仮面ライダースカル役)さんと同様のポジションですね。

ウィルは、歴史が改変された世界で「ヒューマギアにとってよりよい世界」を作ろうと本気で考えているキャラクター。人間から見ると敵にあたりますが、ウィルは自分のことを「悪」だとは思っていないんです。和田さんがしっかりとした芝居でウィルを演じてくださったおかげで、映画の世界観に深みを持たせることができました。

フィーニスは台本上では男の子みたいな描かれ方をしていました。この役を生駒里奈さんに演じていただいたことによって、ジェンダーレスな存在がいっそう際立っています。彼女がもともと、ボーイッシュな役どころを得意としていたのも良かったですね。また、「仮面ライダー」が本当に大好きだったようで、撮影現場でずっと喜んでいるのが印象に残っていますね。