続いてIIJの辻氏より、「2019年秋の電気通信事業法改正で世の中何が変わるのか」と題して、特にスマートフォン販売やMVNOに関わる部分の解説が行われた。
10月1日に改正された電気通信事業法だが、特にスマートフォン販売に関しては、総務省が公開した「電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン」に詳しい。ということで、辻氏はこのガイドラインを元に変更点の解説を加えてくれた。
まず、総務省の見解としては、MNO3社が実質横並びで協調的な寡占状態の市場を形成していること、その結果他の先進国よりも高額な通信料金となっているため、適切かつ自由なサービス選択が阻害されておると指摘。そこで利用者が多彩な選択肢から自分のニーズにあったサービスを低廉な価格で利用できるようにしよう、ということだ。
ここで辻氏が以前、携帯販売店の店長をしていたときに作成したという、2001年のチラシが登場。18年前の携帯電話販売では割賦販売がなく、基本的に端末代金は一括販売のみ。通信料金もシンプルだった。
これが大きく変わったのは、2006年のナンバーポータビリティ導入がきっかけだと辻氏は指摘する。電話番号が人に紐づけられるようになり、キャリアは契約者確保のために他社からユーザーを引き抜こうと躍起になった。インセンティブを目当てに多数の回線を保有してMNPしまくった、という人もいるだろう。そして、こうしたMNP合戦を是正するべく、総務省からの圧力や規制が高まるにつれ、キャリア間の競争から、キャリアvs.総務省という図式になってしまっているのではないかとも指摘した。
さて、そうした背景もあって総務省はMVNOを含むキャリアへの締め付けを厳しくする一方なわけだが、今回の法改正のポイントは2つ。一つ目は通信代金と端末代金の完全分離と、それに関連して、通信費と関係づけた端末割引の上限が最大2万円までに限定されたこと。二つ目は、行き過ぎた期間拘束の是正に関して、契約期間の上限が2年、契約解除にかかる違約金の上限が1,000円になり、それに付随して長期契約者への割引等のサービスについても、上限が1カ月ぶんの料金相当額へと規制されることになった。
これにより、大手キャリアでは料金プラン自体を大幅に見直したことはご存じのとおりかと思われる。一方IIJmioの場合、10月1日から解約時の違約金が1,000円になったほか、端末料金と通話プランがセットになった「コミコミセット」が受付終了したほか、ご愛顧感謝キャンペーンの提供条件が変わった。また長期割引ユーザーへの特典として、セキュリティやフィルタリングなどのサービスが無料となる「長得」も一時継続が危ぶまれたが、終了の決断を下す直前になって「付加的な機能の提供の料金を除く」というように条件が変わったため、引き続き提供できることになったという。トータルで見れば、IIJmioに関しては比較的軽微な影響で済んでいる、という様相だ。
端末の割引販売については、結局「契約と無関係な物販として4年縛りまたは2年で半額になるリース契約」という抜け道が用意され、まさに辻氏が指摘するように総務省とキャリアによるいたちごっこが続いているわけだが、個人的にはMVNOの認知度が十分高まりつつある中、あまり政府・省庁が主導で制約を強める必要はないように感じている。いずれにしても法改正の内容を大変簡潔にまとめてある有意義なセッションとなった。