NVIDIAは米国時間の10月29日、GeForce GTX 1650 SuperとGeForce GTX 1660 Superの2製品を発表した。これに先立ち、事前にGeForce GTX 1660 Superの性能を確認することが出来たので、その結果をお届けしたい。

◆ GDDR6採用が最大のポイント

今年6月に、GeForce GTX 1650/1660/1660 Tiのレビューをお届けしたが、早くもSuperブランドでテコ入れがなされた事に成る。理由はまぁ簡単で、Radeon RX 5500への対抗策であろう。

こちらの比較グラフにもある様に、Radeon RX 5500はGeForce GTX 1650を競合と目しており、また明示的には発表されなかったもののRadeon RX 5700との間を繋ぐRadeon RX 5600の存在も伺わせており、より上位のRadeon RX 5700がGeForce RTX 2060 Super以上の性能を叩き出しているあたりは、仮にRadeon RX 5600が出てきたとすると、GeForce GTX 1660あたりが競合になる可能性は非常に高い。そこであらかじめこの2製品の性能底上げを図ろう、という構図は理解しやすい。

■表1
GeForce GTX 1650 GeForce GTX 1650 Super GeForce GTX 1660 GeForce GTX 1660 Super GeForce GTX 1660 Ti
コア TU117 TU116
SM数 14 20 22 24
CUDA Core数 896 1280 1408 1536
Texture Unit数 56 80 88 96
ROP数 32 48
L1 Cache 896KB 1280KB(?) 1408KB 1536KB
L2 Cache 1024KB 1536KB
Base Clock 1485MHz 1530MHz 1530MHz 1500MHz
Boost Clock 1665MHz 1725MHz 1785MHz 1710MHz
Memory種別 GDDR5 GDDR6 GDDR5 GDDR6 GDDR6
Memory Bus 128bit 192bit
Memory Clock 8GHz 12GHz 8GHz 14GHz 12GHz
TDP 75W 100W 120W 125W 120W
価格 $149 未公開 $219 $229 $279

さてそのGeForce GTX 1650 SuperとGTX 1660 Superのスペックをまとめたのが表1である。

GeForce GTX 1650→GeForce GTX 1650 Superは結構大きな性能改善となっている。ダイそのものがTU117からTU116に更新されており、14SM・896 CUDA coreから20SM・1280 CUDA coreに強化されている。ただそのままだと流石にGeForce GTX 1660と性能差が無くなってしまうためか、メモリバスを128bitに抑えたり、L2を1MBに抑えたりといった形で多少性能を引き下げている。ただメモリバスそのものは128bitながら12GbpsのGDDR6を搭載することになったため、メモリ帯域そのものは192GB/secとGeForce GTX 1660と変わらない数値になっており、かなりの性能底上げに繋がっていると考えられる。もっともその分消費電力は増えたようで、TDPは75Wから100Wになっており、補助電源無しという構成はあり得ないことになった。このGeForce GTX 1650 Super、現時点では推奨小売価格は未公表になっており、また発売も米国時間の11月22日とまだ先である。

一方のGeForce GTX 1660 Superであるが、こちらはほぼスペックはGeForce GTX 1660と差が無い。唯一の違いはメモリで、GeForce GTX 1660が192bitのGDDR5 8Gbpsなのに対し、GeForce GTX 1660 Superでは192bitのままGDDR6 14Gbpsを搭載している。これに伴いTDPは120Wから125Wに増えたが、まぁこれは大きな違いではないだろう。推奨小売価格は$10ほど増えて$229になっている。あとはこの$10に見合うだけの性能向上が見られるか、というあたりを確認してみたいと思う。

◆ 評価機材

GeForece GTX 16シリーズ3製品レビューの時もそうだったが、このグレードではReferenceあるいはFounder Editionは存在しないようで、今回はINNO3DのGeForce GTX 1660 Superが評価機材として到着した(Photo01~06)。

  • Photo01: 一見NVIDIAのパッケージか? と思う程に緑のインパクトが強い。

  • Photo02: デュアルファン構成。ファンカバーの上にちょっとだけ、ヒートパイプが突き出しているのが判る。本体寸法は212mm×105mm×38.5mm、重量は575.5g(いずれも実測値)

  • Photo03: 裏面はシンプル。ヒートシンクが基板左端から突き出しているのが判る。ちなみに基板のサイズは190mm×99mm(実測値)

  • Photo04: このアングルにすると、ヒートシンクの構造が判る。単にTU116のみならず、GDDR6チップやVRMもまとめて冷却している模様。

  • Photo05: 出力はDisplayPort×3、HDMI×1というスタンダードな構成。

  • Photo06: 補助電源は8pin×1。125Wだったら6pin×1でも良さそうなものだが、ピーク時の電源供給を考慮したと思われる。

ちなみにGPU-ZではまだデータベースにGeForce GTX 1660 Superが含まれていないようで警告が出ており、GPU名などが空欄のままであるが(Photo07)、基本TU116という事もあってかセンサー類は正しくデータを取得できていた(Photo08)。

  • Photo07: 動作周波数などは表1に示した定格のままになっている。

  • Photo08: このあたりはGeForce GTX 1660と変わらず。

さて比較対象であるが、今回は機材手配が色々間に合わなかったため、パソコン工房秋葉原 BUY MORE店でMSIのGeForce GTX 1660 Aero ITX 6G OCを調達した(税込\24,980)。一応OC版ということで、GPU-Z(Photo09)を見てみるとBase Clockは1530MHzと変わらないが、Boost Clockが1785MHz→1830MHzと若干ながら引き上げられている。ただこれは大きな性能差には繋がらないと思われるため、このまま利用した。

  • Photo09: Boost Clock以外はほぼ定格通り。

その他の環境は表2で示した通りである。ハードウェア構成的には以前のテストとほぼ同じなので、このテスト結果を流用できればよかったのだが、何しろWindows 10のバージョンからして違う上、ベンチマークも細かくバージョンアップしており、同一の環境と見做すのはちょっと厳しい。という訳で、場合によってはこちらのテスト結果を参照するかもしれないが、あくまで参考という事で、基本は今回はこの2製品のみでテストを行った。

■表2
Processor Core i9-9900K
M/B ASUS ROG STRIX Z390-F Gaming
BIOS 1302
Memory Corsair CML16GX4M2A2666C16
(DDR4-2666 CL16 8GB×2)×2
Video MSI GeForce GTX 1660 AERO ITX 6G OC
GeForce Driver 440.97 DCH WHQL
INNO3D GeForce GTX 1660 Super
GeForce Driver 441.07 DCH WHQL
Storage Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 10 Pro 日本語版 Version 1903 Build 18362.449

なおグラフ中の表記は以下のようになる。

1660: MSIのGeForce GTX 1660 Aero ITX 6G OC
1660 Super: INNO3DのGeForce GTX 1660 Super

また、原稿中の解像度の表記は次の通りだ。

2K: 1920×1080pixel(Full HD)
2.5K: 2560×1440pixel(WQHD)
3K: 3200×1800pixel
4K: 3840×2160pixel

GeForce GTX 1660クラスで4Kは余り意味が無いのでは? と言われるとその通りで、実際Ryzen 3/5の評価でRadeon RX 5700を使った際には2.5Kまでしか行っていないが、今回は前のテストとの互換性を考えて、一応この構成とした。

◆ 3DMark v2.10.6799(グラフ1~5)

UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark

さすがに4KのFireStrike UltraとかTimeSpy Extremeは意味が無いと思うので今回は結果から除外した。ということでまずOverallがグラフ1・2であるが、概ねGTX 1660 Superが1割程度高いスコアを出しているのが判る。

もう少し細かく見ると、Graphics Test(グラフ3・4)でIceStoemとかIceStorm Extremeが3割近い性能改善になっているのは、要するにこの辺りになるとシェーダの性能そのものよりもバッファへの書き込みがボトルネックになっており、これがGDDR6の採用で大幅に改善された、ということになる。逆により負荷の高いその他のテストでは性能改善はまぁ1割程度に収まっており、要するにどの程度シェーダの負荷が高いか、で性能改善率が決まる傾向にあることが見て取れる。まぁそれでも、コアそのものには手を付けずに1割性能アップなのだがら、GDDR6の効用は大きいということになるが。

グラフ5は、確認のためにPhysics/CPU Testの結果をまとめたものだ。IceStorm及びFireStrikeは同じテストが複数回行われることになるため、これらの結果は平均して示している。案の定というか当然ではあるが、Physics/CPU Testにメモリ帯域は影響しないという当たり前の結果が得られた。

◆ SuperPosition v1.1(グラフ6)

Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition

お馴染みのUnigine SuperPositionだが、うっかりしていたことに、今年4月にVersion 1.1に上がっていた。といっても変更の主眼はVRモードの搭載(というか、有償バージョンのみのサポートだったVR対応を無償バージョンにも加えた)で、基本は変わらない。今回はDirectX、Shader Quality/Texture Quality Medium、Depth of Field/Motion Blur有効の環境で実施している。なお、この後の結果も同じだが、今回はテストが2製品だけということで、いつもだと3つに分けている平均/最大/最小のフレームレートを1つのグラフにまとめている。実線が平均、長破線が最大、短破線が最小のフレームレートをそれぞれ示す。

ということでグラフ6を見ると、実に判りやすいというか、きっちり全ての解像度で概ね5~10%程度の性能改善が見られており、確実に性能差がある事が判断できた。