IFA 2019に出展するソニーが、2019年の後半戦に向けて発売を予定するポータブルヘッドホン・イヤホンの新製品を多数発表しました。ここでは、カラフルでスタイリッシュ、かつ高機能なシリーズとして人気の「h.ear(ヒア)」、その新製品にクローズアップします。
h.earシリーズとは
ソニーのh.ear(ヒア)は2015年のIFAで初めて発表され、同年秋に日本でも発売し主力シリーズです。2019年で4年目・第3世代を迎えます。ハイレゾ対応の高音質でありながら、凝り固まったヘッドホン・イヤホンの既成概念を超えた斬新なデザインと、多彩な機能を併せ持つソニーのスタンダードモデルとして多くのファンを獲得しています。
価格帯は、ヘッドホン・イヤホンのフラグシップ「1000Xシリーズ」よりも少し安価でありながら、上位に負けないほど高いパフォーマンスを備えています。アクティブノイズキャンセリング機能を搭載するBlutoothヘッドホンから、ネックバンドスタイルのワイヤレスイヤホン、有線接続のイヤホンまで、機能や装着スタイルのバリエーションが豊富にそろっています。
ビビッドな本体のカラーリングが、デジタルオーディオプレーヤーのウォークマン「Aシリーズ」とシンクロしているところも特徴です。h.earの2019年モデルも、同じくIFA 2019で発表されたウォークマン「A100シリーズ」とのカラーマッチングを図っています。
IFA 2019では、装着スタイルが異なる3つの新製品が発表されました。欧州での発売が決まっている製品はアラウンドイヤースタイルのヘッドホン「WH-H910N」のみで、そのほか2つの製品は日本・海外ともにIFA 2019の時点で発売に関する詳細は明らかにされず、展示のみでした。
ノイキャン機能搭載のハイレゾ対応Bluetoothヘッドホン「WH-H910N」
h.earシリーズの新しいアラウンドイヤースタイル(耳を覆うゆったりとしたイヤーカップ)のワイヤレスヘッドホン「h.ear on Wireless NC」に、第3世代のニューモデルが登場します。欧州での予定販売価格は300ユーロ(約35,000円)です。
現行モデルの「WH-H900N」はオープン価格ですが、ソニーの直販サイトの販売価格は29,880円(税別)。新モデルの「WH-H910N」が日本で発売されるとしたら、価格はだいたいこの辺りに落ち着くのではないかと筆者は予想しています。
WH-H910Nの詳細について、商品企画を担当したソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツの柳田優穂氏に会場で聞くことができました。
カラーバリエーションは、ウォークマンA100シリーズに合わせた5色展開。ブラック、レッド、ブルー、オレンジ、アッシュグリーンが発表されていますが、日本でどのカラーが発売されるのか今のところはわかりません。従来のh.earシリーズはイヤーカップから内側のイヤーパッド、ヘッドバンドにケーブルまで徹底的に1つのカラートーンで統一したユニカラーデザインを特徴としていましたが、最新モデルはイヤーパッドのカラーとパターンをボディのメインカラーとあえて変え、アクセントを付けています。
イヤーパッドは形状を見直して、側頭部との接触面積を広く取ったなだらかなデザインとして、装着感を高めています。WH-H900Nのイヤーパッドが肉厚で、直線的に側頭部にフィットする形だったので、筆者は新製品の装着感がかなりマイルドになって心地よく感じられました。ヘッドバンドのカーブを見直して、さらにヘッドバンドにもシリコンクッションを入れたことによって、装着感だけでなく見た目にもすっきりとしたルックスになります。
デザインのほかに大きく変わった点のひとつが、新開発のハイレゾ対応ドライバーです。柳田氏によると、現行モデルは40mm口径のダイナミック型ドライバーですが、新しいWH-H910Nには25mm口径とコンパクトサイズながら、なめらかでパワフルなサウンドを再現できる新開発のドライバーが採用されているそうです。ハイレゾ対応に音域を広げるため、剛性の高いアルミドームを採用したほか、やわらかいウレタンエッジによって入力信号に対する感度も高めています。
WH-H910Nは、Bluetoothワイヤレス再生時にはソニー独自の高音質コーデックであるLDACによって、ハイレゾ相当のワイヤレス再生が可能。ハイレゾ未満の音源を聴くときも、DSEE HXによるアップコンバート機能を使って、96kHz/24bitに相当するハイレゾ級の音楽再生をワイヤレスで楽しめます。
また、付属するケーブルを接続して、ハイレゾ対応のポータブルオーディオプレーヤーやスマホと組み合わせて、有線リスニングによる純ハイレゾ再生も楽しめます。コンパクトな本体、長時間リスニングにも心地よい装着感、これらとハイレゾ再生を両立させるために、新開発の小型ドライバーはとても重要な役割を果たしているというわけです。
WH-H910Nには、ハウジングの表側と裏側の両方に高精度なマイクを載せて環境音を拾い、ノイズ成分を高精度に打ち消すソニー独自のデュアルノイズセンサーテクノロジーが採用されています。ハイブリッドノイズキャンセリング対応であることは現行モデルから変わっていませんが、ベストセラーのノイキャンヘッドホン「WH-1000XM3」の開発から培った技術を生かして、ハウジングの通気構造を見直してパッシブな遮音性能を高めているほか、マイク位置を見直して外部の音を正確に拾えるようにブラッシュアップしています。
IFA 2019の賑やかな会場でその効果を試してみましたが、人の声もブースに響く低音ノイズも、シンと打ち消す高いパフォーマンスが確認できました。音楽再生を始めるともう、外部の騒音は気にならなくなるほどです。
さらに、WH-1000XM3と同等の、多彩な外音コントロール機能を搭載しました。専用アプリ「Sony Headphones Connect」を使うと、止まっているとき、歩いているとき、電車に乗っているときなど、音楽リスニングの環境に合わせて自動で消音と外音取り込みのバランスを切り替えるアダプティブサウンドコントロールや、20段階で細かく調節できる外音取り込み、ボイスフォーカスなどの機能が合わせ技で使えます。
バッテリー駆動時間は、現行モデルの最長約30時間から5時間伸びました。クイック充電にも対応し、10分のチャージで約2時間半の再生が楽しめます。現行モデルのクイックチャージは10分で約65分間の再生時間だったので、こちらもかなり改善されたといえます。充電にはUSB Type-Cケーブルを使います。
BluetoothオーディオのコーデックはaptXとaptX HDが省かれていますが、LDAC、AAC、SBCをサポート。DSEE HXが使えるので、ハイレゾ相当のワイヤレス再生のパフォーマンスは、引き続き万全といえます。音質は現行モデルよりも広がり感が増して、ディティールの音を力強く引き立てるパワーが増しています。セパレーションがよく、低音も立体感に富んでいるので、アップテンポな楽曲の緊張感を肌に感じることができました。日本発売が決まってから、またじっくりと試聴できる機会を楽しみに待ちたいと思います。
音声アシスタントは、GoogleアシスタントとアマゾンのAlexaに発売時から対応しています。右側ハウジングの側面にタッチセンサー方式のリモコンが内蔵されています。