――平成とは違う、令和最初の仮面ライダーを作る、という意気込みはどのようなところに現れているでしょうか。
まず、仮面ライダーそのもののビジュアルを新しくしました。スーツは従来の平成仮面ライダーのフォルムを意識していますが、今までとは違う"見え方"にしようという考えで始まっています。具体的には、機動力重視というか、アクションがスムーズに行えるという方向性ですね。今までの平成仮面ライダーのように甲冑で体全体を覆うようなものではなく、ボディに硬質のパーツを貼りつけているというスタイルを強く意識しました。
――ゼロワンの基本形態・ライジングホッパーのデザインモチーフである「バッタ」は、原点である仮面ライダー1号のモチーフであると同時に、スカイライダー、仮面ライダーBLACKと、中断されていたシリーズが復活するとき"原点回帰"として用いられることが多いですが、今回バッタをモチーフにされた意図とは何でしょう。
平成仮面ライダーシリーズにおける主役ライダーのモチーフを一度ぜんぶ洗ってもらったら、バッタがいなかったんです。そのとき、「ああ、いないんだ……」なんて改めて思ったんです。これまでも「今度の仮面ライダーのモチーフは何ですか」と聞かれることがあったのですが、ずっと「モチーフは"仮面ライダー"です」と言い続けてきました。今回あらためて「仮面ライダーって何ですか」と尋ねられて、仮面ライダーとは……複眼があったり、触角があったり……。「それって"バッタ"じゃん!」っていうことになったんです(笑)。でも出来上がったデザインを見て、これほどまでにバッタ推しになると思っていませんでしたね。最終的に決め手になったのは、バッタが平成の主役ライダーのモチーフに使われていなかった、という部分です。
――ライジングホッパーは体の各パーツの「イエロー」が非常に派手で目をひきますね。
まあ、目立ちたいということですね(笑)。イエローで行きましょうと提案があったときは、誰も反対しませんでした。やはりメインターゲットの子どもの目をひきたいという思いがあのカラーリングに出ています。しかしながら、デザインそのものは大人っぽいですよね。これでイエローじゃなかったら、子どもには"怖い"と思われるかもしれない……ということを恐れていました。シックな色使いにすると"敵"っぽく見えてしまうので、デザインをスタイリッシュにした分、色をハネさせてみてバランスのとり方を考えてみました。
――『仮面ライダーエグゼイド』のテレビシリーズ、劇場版をお1人で書かれた高橋悠也さんを今回のメインライターとしてふたたび招いた"狙い"は何でしょうか。
やはり『エグゼイド』を1年間やりきられた実績があってのお願いです。この企画をやろうと思ったとき「こんな無茶な内容の企画は、悠也さんにしかできない」と思ったんです。
――悠也さんが脚本として参加されたことにより、当初の設定がどのように変化したのか、その推移がわかれば、ぜひ教えてください。
或人が「社長」になるという設定は当初なかったんですよ。初めは「お仕事もの」という発想で、AIが採り入れられたさまざまな「職業」を主人公が回っていく、みたいなことをやりたくて進めていたのですが、それを「仮面ライダー」とどう折衷させていくか、悠也さんと一緒にまとめていった感じですね。各キャラクターをどのように作っていくかを相談したり……。当初と大きく変わったのは、「AI」に対する主人公の接し方です。「AIが仕事を奪う」というのが作品世界の導入部なので、最初の構想段階では主人公がAIについてネガティブな思いを抱いていたけれど、これって"逆"のほうがいいんじゃないかという案が出て、むしろ「AIの可能性を信じ、ポジティブに捉える」主人公にしていこうとなっていったんです。