大森敬仁(おおもり・たかひと)。1980年生まれ。愛媛県出身。2003年に東映入社後、2004年『はぐれ刑事純情派(17シーズン)』や2005年『仮面ライダー響鬼』などではプロデューサー補、2008年『仮面ライダーキバ』よりプロデューサーとなり、「スーパー戦隊」「仮面ライダー」両シリーズに携わる。チーフプロデューサーとしては2013年『獣電戦隊キョウリュウジャー』、2014年『仮面ライダードライブ』、2016年『仮面ライダーエグゼイド』、2017年『仮面ライダービルド』に続き、2019年9月1日開始の『仮面ライダーゼロワン』を担当。東映ムビ×ステ第1弾の映画『GOZEN-純恋の剣-』も手がけた。撮影:大塚素久(SYASYA)

「平成」から「令和」へと時代が移り変わる中、「平成仮面ライダー」の歴史を受け継ぎ、新たなる未来へとつなぐ新時代の仮面ライダー『仮面ライダーゼロワン』が誕生。9月1日より第1話の放送が開始される。

本作では、すでに現実社会でも人々の生活に溶け込み始めている「人工知能=AI」がさらなる進歩を遂げ「ヒューマギア」と呼ばれる人間そっくりのAIロボットがさまざまな「職業」の場に進出している世界が舞台となっている。そんな中、お笑い芸人を目指している飛電或人(ひでん・あると)は祖父の遺言によりAI企業「飛電インテリジェンス」の二代目社長に指名されたことがきっかけとなり、変身ベルト「飛電ゼロワンドライバー」に「プログライズキー」を認証、装填して「仮面ライダーゼロワン」に変身。人類を脅かす「滅亡迅雷.net」によって暴走させられたヒューマギアとの戦いに身を投じていく。

ここでは、『仮面ライダーゼロワン』チーフプロデューサーを務める大森敬仁氏に、新時代の仮面ライダー創造への道のりや、ネーミングや設定にまつわる裏話、そして主人公・飛電或人をはじめとする魅力的なキャラクター造形についてなど、数々の興味深いお話をうかがった。

――新番組『仮面ライダーゼロワン』ですが、従来の仮面ライダーシリーズですと、最初にヒーロービジュアルと主演俳優の方の情報が解禁され、その後に記者発表会見で全体の設定やキャラクターなどが明かされる流れだったのに対し、今回は記者発表までビジュアルもネーミングも一切の情報が伏せられていて、あの場で一気にすべてが明かされるスタイルでした。これはやはり、「令和」最初の仮面ライダーということが関係しているのでしょうか?

『仮面ライダージオウ』の映画『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』の公開が例年よりも早い、というのが大きく関係しています。でも、事前の情報解禁なしでいきなり発表したほうがインパクトも大きいので、このタイミングで発表することができてよかったかなと思っています。

――テレビシリーズとして『仮面ライダードライブ』(2014年)から始まり『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)『仮面ライダービルド』(2017年)と3作「仮面ライダー」を作られてきた大森さんですが、4作目となる『仮面ライダーゼロワン』ではどのような「仮面ライダー」を作ろうと考えられましたか。

"自分が観てみたい仮面ライダーを"ということは常に意識しています。「これだったら1年間楽しめるんじゃないか」「子どもも親の世代も楽しくなるだろう」ということを常に考えながらやっていて、今回も同じような気持ちで取り組んでいます。

――「ゼロワン」というネーミングはどのようにして決まったのでしょう。

タイトルというものはいちばんインパクトを持っていますし、大切だと思うので、決定までにはいろいろな意見を集めながら決めていきました。ゼロワンという名前は、みなさんの期待どおりといいますか、「令和」を意識したものだと言って間違いないですね。

――新元号の発表が4月1日でしたが、タイトルはその時点から考え出されたということになりますね。

それまでにキャラクターデザインは完成していて、タイトルは「新元号が発表されるまで待とう」という話になり、みんなで少し様子を見ていたんです。会議の中では、今回の作品のコンセプトである「AI」や「社長」にまつわるタイトルも案として出ていたんですけれど、平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダージオウ』(2018年)の後だからこそ、「新しいものが始まる」という方向性のほうがいいだろうなと思っていました。やがて「令和」が発表された後の会議のとき、ずっと「1」を取り入れた名前がいいという話はしていたんですよ。「仮面ライダー1号、というのがすでにあるからなあ」とか言いつつ(笑)。そんなとき誰かがふと「令和、れいわ、レイ(0)ワン(1)……」と、口走ったんです。その言葉を聞いて、なぜか僕だけ「それだーーッ!」と興奮気味に叫んだのが「ゼロワン」誕生のきっかけです。会議には7~8人くらいいましたが、みんな「ポカーン」としていました(笑)。

――コンピューターは「0」と「1」しかない二進法の世界ですし、社長=企業のナンバーワン(1)、そして令和元年という意味も込められる「ゼロワン」は、確かに「これしかない」という感じのネーミングですね。

会議の席には当然、石森プロさんもいらっしゃって「ゼロワンといえば……」と、過去に『キカイダー01(ゼロワン)』(1973年)がいることも指摘されましたが、同時に今回の作品のコンセプトをご理解していただいていますから、それでいいんじゃないかとOKが出ました。