コーヒー専門店の味を再現できるか?
まず、「美味しい」が主観に満ちた表現なので、これを客観的に評価する方法が必要です。
得平:近所の「TULLY'S COFFEE(以下、タリーズ)」で、ドリンクの「本日のコーヒー」と、タリーズの店で挽いたコーヒー豆を買ってきました。ADC-A060でのドリップで、タリーズの味に近い味が出せるかをチェックしてみましょう。
店で挽いた豆は「タリーズ ブラジル ファゼンダバウ」です。本日のコーヒーはブレンドなので、厳密には同じ味にはなりません。とはいえ、街のサードウェーブコーヒーの味を自宅でも楽しみたい人にとって、タリーズで買った粉で「タリーズらしいコーヒー」がちゃんと抽出できれば合格でしょう。テイスティングだけでなく、濃度計なども使ってコーヒーの濃さもチェックします。
コーヒー豆(粉)は1パック200gで、税込1,050円。ファゼンダバウの原産地はブラジルで、ほどよい苦味と酸味のバランスが取れた日本人好みの豆種です。テストする直前に購入しました。購入するとその場で挽いてパックしてくれるので、先の条件(1)はクリアです。ペーパードリップ用に中挽きされていました。
得平:「本日のコーヒー」は、濃度1.05%でした。濃度は水に対するコーヒーの割合です。タリーズやスターバックスなどの専門店チェーンで提供しているコーヒーは、だいたい1.1~1.3%の濃度なので、これは若干薄めですね。
ADC-A060は、フィルターの上にセットする「テイストマイスター」を表向きにするか裏向きにするかによって、「マイルド」と「ストロング」という2つのテイストで淹れ分けができます。
テイストマイスターの表面が山状になるようセットするのがマイルドで、お湯が周囲の穴から注がれて、コーヒーに触れる時間が短くなるため、あっさり目の抽出になります。
一方、表面がすり鉢状になるようセットするのがストロング。中心の6つの穴からお湯が注がれ、コーヒーに触れる時間が長くなるため、濃い目の抽出になります。
ADC-A060には、自動オフ機能は備わっていません。スイッチを切らないと保温し続けます。空焚きにはなりませんが、15分以上の保温はコーヒーが煮詰まって美味しさが損なわれます。美味しく飲むためにも、淹れ終わったらスイッチは切るものと思って使いましょう。
さっそく淹れていきます。テイストマイスターはストロングを利用しました。
まずは3カップ分で淹れます。コーヒー粉は計量スプーンで3杯。水タンクが空になるまでは4分30秒。淹れ終わりまで6分15秒でした。コーヒーの温度は79℃、濃度は1.01%と、本日のコーヒーとほぼ同じ濃さになりました。
ADC-A060のコーヒー豆の量と抽出量
- カップ数:コーヒー豆の量:コーヒー抽出量
- 1カップ:9g :130ml
- 3カップ:18g:390ml
- 5カップ:30g:650ml
1カップで飲むときは計量スプーン1.3~1.4杯くらいがよさそう
次に1カップ分で淹れました。ADC-A060の取扱説明書によると、1カップ分のときは、コーヒー粉は計量スプーンで1.5杯必要になります。コーヒー粉の効率が悪くなるということです。水タンクが空になるまでに1分20秒、淹れ終わりまで3分30秒、濃度は1.27%でした。
ADC-A060の抽出時間とコーヒー濃度
- 1カップ:3分30秒:1.27%
- 3カップ:6分15秒:1.01%
- 5カップ:7分45秒:0.85%
- (参考)ハンドドリップ:180秒前後:1.1~1.3%
ドリップに使用したコーヒーの成分が、抽出した中にどれだけ溶け出たかは「収率」で示します。収率は「できあがったコーヒーの抽出量(ml)×濃度(%)÷使用したコーヒー豆の量(g)」で計算します。
今回の3カップ分では、「390(ml)×1.01(%)÷18g」となり、約21.88%が収率となります。この数値が高いと苦味が強くなり、低いと酸味が強くなるとされています。
ちなみに、4カップ分の粉(計量スプーン4杯)で3カップ分の抽出も試しました。これは濃度が1.41%となりました。濃い目の味が好きな人なら、こうした淹れ方も試してみるとよさそうです。
得平:1カップ分の場合、淹れ終わりまで時間が短いということは、蒸らしの時間も減っていると考えるべきです。ただ、濃度を見るとだいぶ濃くなっています。濃くし過ぎると雑味が入ります。粉の量を規定の1.5杯より少しだけ減らしてもよいかもしれません。
得平:タリーズやスターバックスなどのサードウェーブコーヒーは、1カップの量がやや多めです。普段、トール(ラージ)サイズで飲む人は、ADC-A060でタリーズの味を再現する場合、2カップ分か3カップ分で淹れたほうが美味しく飲めるでしょう。