白井データセンターキャンパスには多くの新技術が導入されているが、中でも省電力設計には、松江データセンターで培った技術や運用経験も反映された、独自のアプローチが採られている。データセンターは内部に設置された膨大な数のサーバーがオーバーヒートしないよう、常時一定の温度に冷やされる必要があるが、これが大きな電力消費の一因となる。そこでいかに低電力で冷房を実現するかが、省エネ化の要因となるわけだ。
基本的に空調を使ってサーバーを冷却し、内部で発生した熱を外部に吸い出すことになるのだが、IIJでは空調専門のサブコンである高砂熱学工業株式会社と提携して、「外気冷却空調方式」を採用。さらに煙突効果を使った冷房設備を構築した。
多くのサーバーセンターでは、冷却水で冷やした空気を側から吹き上げているが、白井データセンターキャンパスではサーバー室に隣接した空調室内で、外気を冷却水を通した冷水コイルに吹き付けて冷やし、壁面の空調ファンからサーバー機器に冷気を吹き出す効率的な空調システムを構築。床吹き出し型と比べて1/3の省電力を実現している。
サーバーから発生する熱は、サーバーラック上部にあるダクトを通じて排熱ファンが吸い出し、煙突を通って自然に外気に放出される。この勢いを利用して外気の導入も行われる(煙突効果)。こうした一連の空調はAIにより制御されており、効率的な運用が行えるという。
こうした工夫により、空調の冷却効率(PUE)は約1.16と、GAFAのデータセンターに匹敵する高効率を達成。環境省の「平成30年度業務用施設等におけるネット・ゼロ・エネルギー・ビル化・省CO2促進事業(次世代省CO2型データセンター確立・普及促進事業)」に採択されている。
バックアップ電源となるUPS室でも、壁面にずらりと並んだファンから旋回流を利用して熱源となるUPSを直接集中的に冷却し、排熱は上昇気流を利用して上部から排出する効率的な「置換空調」(高砂熱学工業の成層空調システム「SWIT」と推測される)を採用し、省エネ・省コストを実現していた。