白井データセンターキャンパスには多くの新技術が導入されているが、中でも省電力設計には、松江データセンターで培った技術や運用経験も反映された、独自のアプローチが採られている。データセンターは内部に設置された膨大な数のサーバーがオーバーヒートしないよう、常時一定の温度に冷やされる必要があるが、これが大きな電力消費の一因となる。そこでいかに低電力で冷房を実現するかが、省エネ化の要因となるわけだ。

基本的に空調を使ってサーバーを冷却し、内部で発生した熱を外部に吸い出すことになるのだが、IIJでは空調専門のサブコンである高砂熱学工業株式会社と提携して、「外気冷却空調方式」を採用。さらに煙突効果を使った冷房設備を構築した。

多くのサーバーセンターでは、冷却水で冷やした空気を側から吹き上げているが、白井データセンターキャンパスではサーバー室に隣接した空調室内で、外気を冷却水を通した冷水コイルに吹き付けて冷やし、壁面の空調ファンからサーバー機器に冷気を吹き出す効率的な空調システムを構築。床吹き出し型と比べて1/3の省電力を実現している。

  • 300ラックほどが収納できる顧客向けスペース(ハウジングルーム)。床は免震床となっている。壁側に冷気の吹き出し口がある。床側からの冷気吹き出しはない

  • 壁側に大きな冷却取り入れ口があり、隣接する空調室からの冷気がサーバー室全体を冷やしてくれる。ちなみに冷却水は通常7度のところ、13度で運用。高い外気でも13度の冷却水が作れる点も特徴とのこと

  • サーバーラックから発生した熱は上部のダクトにあるファンから吸い出されて外部に排気される。ダクトの下側には電源やネットワークケーブルが通るバスダクトが見える。電源は100Vと200Vのどちらも利用可能

  • サーバー棟のひさしの下側に外気の取り入れ口がある。導入直後にフィルターがあり、外気に含まれる汚染物質や虫(バグ)などはここでシャットアウトされる。煙突効果を利用しているため、排気口は屋根の上に見える

  • 冷房に使用される冷却水は屋外の冷却水タンクで保管され、停電時も温度差を利用して冷房が維持される仕組み。冷却水は10トンタンク3基分が確保されているほか、配管もA系とB系の2系統用意されるなど、冗長性も十分確保されている

サーバーから発生する熱は、サーバーラック上部にあるダクトを通じて排熱ファンが吸い出し、煙突を通って自然に外気に放出される。この勢いを利用して外気の導入も行われる(煙突効果)。こうした一連の空調はAIにより制御されており、効率的な運用が行えるという。

こうした工夫により、空調の冷却効率(PUE)は約1.16と、GAFAのデータセンターに匹敵する高効率を達成。環境省の「平成30年度業務用施設等におけるネット・ゼロ・エネルギー・ビル化・省CO2促進事業(次世代省CO2型データセンター確立・普及促進事業)」に採択されている。

バックアップ電源となるUPS室でも、壁面にずらりと並んだファンから旋回流を利用して熱源となるUPSを直接集中的に冷却し、排熱は上昇気流を利用して上部から排出する効率的な「置換空調」(高砂熱学工業の成層空調システム「SWIT」と推測される)を採用し、省エネ・省コストを実現していた。