NECパーソナルコンピュータ製品とレノボ製品は生産ラインが分かれているが、製造ノウハウやチェック項目などはある程度、共通化。NEC時代に培った生産品質によって、ThinkPadも生産されている。現在、ノートPCの生産ラインは60ラインあり、そのうち3ラインがThinkPad用だ。

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    ThinkPadを製造するTライン。T1~T3まであり、その日の生産予定数に合わせて2~3ラインが稼働する

取材時、ThinkPadの製造ラインでは、一つに5人のスタッフが立ち、組み立てに2人、検査に2人、梱包を1人が担当していた。スタッフはThinkPad専従ではなく、週明けなどオーダーが多いときは、NECパーソナルコンピュータの製造ラインから応援もくるという。

ちなみに、NECパーソナルコンピュータのノートPCは組み立て、検査、梱包が各1人、計3人で対応している。これはNECパーソナルコンピュータの製品が、米沢事業場の製造ラインまで細かく考えて、設計されているからだ。ThinkPadはパーツ数やカスタマイズ項目が多いため、品質を重視して5人体制を選んでいるとのこと。

実際にThinkPad X1 Carbonの製造ラインを見学した。

スタッフは横並びになっており、製品は順番に横へと流れていく。とはいえ、ベルトコンベアがあるわけではなく、それぞれの担当分が終わると隣に渡していくスタイルだ。一人一人が担当している作業もそれなりに多く、ライン生産とセル生産の間のようなイメージだった。

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    左の棚に、注文に応じたパーツがワンセットになったケースをセット

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    パーツ構成が記された書類とともに、バーコードなども用意。組み立て間違いが起こらないように徹底されている

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    CTOにあるパーツ構成は、書類だけでなく画面にも表示。1日の計画書に対する実績と差異も、工程ごとに管理している

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    最初に、筐体フレームにディスプレイを合わせて組み立てていく。取り付ける順番などもすべて決まっている

ユーザー視点で「信頼できる」と感じたのが、徹底してミスを防ぐための仕組みがあることだ。取り付けるパーツはその都度、スキャナーでバーコードを確認。ネジ止めの位置なども人の目視だけでなく、カメラによる確認も行われる。複数回チェックすることで、止め忘れ、付け忘れ、付け間違いが起きないようになっていた。

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    専用に開発した治具(じぐ)に筐体を置いて、キーボードを固定していく。こうした治具を用意することで、作業時間の短縮と正確さを同時に実現している

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    基板に冷却ファンを取り付けるところ。左側には必要なネジ類が必要な数だけ取り分けられていた

製造ラインは組み立てミスを防ぐ仕組みとともに、効率化を図る様々な治具や工具が用意されていた。組み立てるモデルごとに筐体が異なるため、それぞれに応じた治具を開発しているという。

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    ドライバーやスキャナーは天井からつり下がっている。ソケット部分が斜めになっているのも時短のためだとか

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    スキャナーのバーコード確認は各工程で入る

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    背面の固定時は専用のフィルムをかぶせて。フィルム上にネジ止めする順番や場所が記載されており、間違えないようにしてある

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    目視だけでなく、カメラでもネジの閉め忘れがないかチェックする仕組み。これだけ入念だと安心

各種パーツの組み立てが終わると、正しく組み立てられているかどうかを、専用プログラムとスタッフの手で検証される。問題がなければ、OSのインストールなどへと進む。1日最大、120台~150台のThinkPadを製造しているそうだ。

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    検証用のプログラムをインストールしてチェックしていく

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    キーボードの打鍵チェック。ThinkPadでは、すべてのキーを実際にスタッフが押して確認していた

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    OSのインストールが完了したら、所定の位置にシールを貼って完成。付属品と合わせて梱包する

  • ThinkPad X1 Carbonの製造ライン

    専用の梱包箱に入れたらラインの棚の奥に流し込んでいく。一定数ごとに配送担当が回収していく