近年、デジタル機器や家電製品の多くが、人件費が安い、中国や東南アジア諸国で製造されている。PCもそんな製品の一つで、特に海外メーカー製のPCは注文に応じて国外で組み立てられることが多い。
そんな中で、レノボ・ジャパンのThinkPadシリーズの一部モデルは日本国内で製造されている。その拠点が山形県米沢市にあるNECパーソナルコンピュータの米沢事業場だ。例えば、フラグシップモデルのThinkPad X1 Carbonを始め、現在4モデルが「米沢生産モデル」を用意している。
ThinkPadを日本国内で生産することには、いくつかのメリットがある。まず一つはカスタマイズ注文にすばやく対応できることだ。米沢生産モデルなら、Webサイトからのオーダーが確定すると、翌営業日にパーツの準備などが行われ、2日目には組み立て・検査が完了、3日目に事業場から出荷。配達場所によるが、5日目には注文したユーザーに届けられるスケジュールだ。当然ながら海外生産ではこうはいかない。
そしてもう一つが、米沢事業場の高い生産品質だ。元々、米沢事業場は長くNECのノートPC(現在はデスクトップも)を生産し続けてきた歴史を持つ。生産品質の高さは、歴代のレノボ・ジャパンの経営者からも認められている。
米沢事業場では2015年3月から、日本市場向けThinkPadの人気モデルの量産を開始した。当時は2モデルだった米沢生産モデルのラインナップも、現在は4モデルへと拡大している。米沢事業場の生産プロセス工程や品質を管理する、生産事業部のマネージャー・滝澤賢一氏によると、米沢事業場が持つ生産性向上や品質向上のためのノウハウは、レノボ・グループ全社に対して情報共有が求められているという。
例えば米沢事業場では、シールの歪みや梱包用ダンボールのへこみなども逐次チェックして、細かな品質まで追求している。現在、中国には日本向けのThinkPadを製造する生産拠点が6つあるが、海外工場ではこういったレベルでの品質管理意識がまだ徹底しきれていないのだ。
「米沢事業場のスタッフが、中国各地の生産拠点に出向いて指導をしたり、逆に、中国各地の品質管理担当者を米沢事業場に呼んで、米沢事業場の品質管理プログラムを学んでもらうトレーニングプログラムなども実施しています」(滝澤氏)。
さらに、中国各地の生産拠点で製造したThinkPadを抜き打ちでピックアップし、米沢事業場で検品するセカンドタッチも行っている。全数チェックはできないものの、5人がセカンドタッチの専従担当となっており、1日に200台のThinkPadを検品して、米沢品質に満たない製品を抜き出しているそうだ。