1984年12月に公開された特撮映画『ゴジラ』(監督:橋本幸治、特技監督:中野昭慶)の魅力を詰め込んだ研究書籍「ゴジラ1984コンプリーション」の刊行(ホビージャパン/2019年1月31日発売)を記念し、2月23日に東京・新宿ロフトプラスワンにて、トークイベント「84ゴジラ復活トーク」が開催された。会場には幅広い年齢層のゴジラファンがつめかけ、『ゴジラ』(1984年)にゆかりのある超豪華なゲストたちによる熱いトークに聞き入った。

  • 『ゴジラ』(1984年)を支えたスタッフ陣。左から、大河原孝夫(本編チーフ助監督)、浅田英一(特撮チーフ助監督)、中野昭慶(特技監督)、安丸信行(造型)、そしてゴジラ役の薩摩剣八郎(すべて敬称略)

ゴジラ映画の魅力に迫るホビージャパンの「コンプリーション」シリーズ4冊目にあたる「ゴジラ1984コンプリーション」では、ゴジラシリーズ第16作『ゴジラ』(1984年)をとりあげており、発売を記念して催されるトークイベントも今回で4度目となった。全体進行を行う「クリエイティブデザイン羽沢組」代表・羽沢正人氏と、MCを務める特撮ライター・中村哲氏のコンビは今回も絶好調で、特撮映画界の"レジェンド"というべき重鎮スタッフ諸氏の貴重な談話を見事に引き出した。

『ゴジラ』(1984年)は第1作『ゴジラ』(1954年)から30年ぶりに姿を現したゴジラが、初代ゴジラと同様に東京の都心へ上陸するという筋書き。ゴジラが敵怪獣と熾烈な戦いを繰り広げた『ゴジラの逆襲』(1955年)から『メカゴジラの逆襲』(1975年)までの14作もの過去作品をリセットし、ゴジラの原点というべき"人類の脅威"としてのゴジラを作り出そうと試みられた。ストーリーは「もしもゴジラが現代社会に現れたら、日本政府や海外諸国はどのような対応を取るのか」といったシミュレーションにもとづき、第1作『ゴジラ』から受け継がれたテーマである"核兵器の恐怖""戦争反対"に加えて、80年代ならではの"高度情報化社会"という要素が盛り込まれ、作品にリアルな緊張感をもたらしている。

"かつてない凶暴なゴジラ"を生み出すべく、本作では従来のモンスタースーツ(着ぐるみ)の造型とアクションに力を入れる一方で、"サイボット"と呼ばれる大型のメカニカル・モデルが作られ、アップショットで優れた映像効果をあげた。このサイボットゴジラは全高4.8mという巨大さで、撮影終了後には映画のキャンペーンで全国各地をめぐり、大活躍した。

イベント当日には『ゴジラ』(1984年)にちなんだ会場限定メニューが提供された。ドリンクは「スーパーMIXドリンク」と「ハイパワーレーザービームドリンク」の2種類。フードは、ゴジラの帰巣本能を刺激するかのような「帰巣本能"トリ"セット」(唐揚げ、ささみスティック、鴨ロース)、そして映画でゴジラの"最期"を演出した三原山の火口を模した「三原山ピラフ」である。

トークイベントは2部構成となっており、まず第1部にはゴジラのスーツに入って熱演を見せた薩摩剣八郎氏と、「東宝特美」でゴジラ造型のチーフを務めた安丸信行氏が登壇した。映画のPRに一役買ったのはサイボットゴジラだが、劇中で大活躍するのはもっぱら安丸氏が造型を手がけたスーツのゴジラだった。

『キングコングの逆襲』(1967年)のゴロザウルスや、『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ決戦!南海の大怪獣』(1970年)のカメーバといった傑作怪獣を生み出してきた安丸氏の持ち味が色濃く出た本作のゴジラには、今でも根強いファンが多く存在している。初代ゴジラをイメージして、重量感に満ちたスーツ(総重量は110kgにもおよぶ)が作られたが、これに入って歩行したり、建物を壊したりする薩摩氏の苦労は、並大抵のものではなかっただろう。薩摩氏は安丸氏や中野昭慶特技監督の期待に応え、ゴジラを見事"復活"させただけではなく、5年後となる1989年の『ゴジラVSビオランテ』から1995年の『ゴジラVSデストロイア』までの「平成ゴジラVSシリーズ」と呼ばれる6作品でもゴジラ役を務め、初代ゴジラ俳優として有名な中島春雄氏と共に海外のゴジラファンからの人気を集めている。