エンパワーメントの事例
さまざまな分野で活用されているエンパワーメントですが、実際にエンパワーメントを取り入れることで成功をおさめた企業があります。
スターバックス
スターバックスでは、アルバイトも含めて接客に関するマニュアルは一切存在しないといいます。それでも人材が育ち、成功を収めているのはなぜなのか。
スターバックスの従業員教育は、一週間ほど、商品を提供するためのトレーニングを受けるだけで、接客に関してはただ一つ、「Just Say Yes」というポリシーを共有するだけだといいます。つまり、お客様の要望に「Yesでこたえる」という姿勢をもって接客しようということです。
同社は、従業員に「エンパワーメント(権限委譲)」することで、お客様が何を求めているのか、何をすれば喜ぶのか……、自ら考え、選択し、それぞれが責任をもって行動できるような仕組みを構築し、結果、単においしいコーヒーを提供するだけではなく、お客様が感動するようなサービスも提供しているのです。
そんな企業の姿勢が、「またスターバックスを利用しよう」という気持ちにさせるのではないでしょうか。
ザ・リッツ・カールトン
世界中でチェーン展開しているホテルブランド、ザ・リッツ・カールトンでは、社員一人ひとりに対して、一日に2,000ドル(20万円)の決裁権を与える「2000ドルルール」というものを設けています。
一般的な企業であれば、上司の決裁を受けなければならないところですが、それでは顧客対応に遅れが生じ、顧客の不満を招くことになるでしょう。「2000ドルルール」を設けることで、同社は質の高いサービスの提供を実現しているのです。
さらに、このルールは、従業員への信頼の証とも言えます。経営陣は従業員を信頼し、従業員は信頼されていることで自信と責任感を持ちます。こういった信頼関係こそが、ザ・リッツ・カールトンにおけるエンパワーメントなのです。
星野リゾート
ホテル経営の星野リゾートはかつて、トップダウン経営を行っていました。トップダウンとは、組織の上層部が意思決定をし、その実行を下部組織に指示する管理方式のことですが、これにより従業員の定着率の悪化と、退職率の増加という事態を招きました。
こうした人材の流出に歯止めをかけるべく、同社は経営方針をボトムアップに転換。経営層と従業員との情報共有や自由な意見交換がなされる社風作りを行ったほか、エンパワーメントの思想を取り入れ、従業員を信頼し現場に仕事を任せるスタイルに切り替えました。その結果、多くのリゾート地を再建させ、成功を収めています。