みなさんは「エンパワーメント」という言葉をご存知でしょうか。スターバックスはこの「エンパワーメント」をうまく活用し成功を収めているのだとか。そこで今回は、「エンパワーメント」の進め方や、メリット・デメリットについてお話ししたいと思います。

  • エンパワーメントの意味を理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    エンパワーメントの意味を理解していますか?

エンパワーメントの意味

エンパワーメント【empowerment】とは、元々は、市民運動や女性の権利獲得運動、先住民運動などで用いられていた言葉で、意味は「権限委譲」や「地位向上」です。広辞苑には、シンプルに「力をつけさせること」と記載されています。

現在では、誰しもが素晴らしい潜在能力を持ち合わせているという前提のもと、「個々が持つ潜在能力を引き出すこと」「組織を構成するひとり一人が、必要な力をつけること」という意味のほか、企業経営における「権限委譲(権限を持たせること)」といった意味で使用されています。

エンパワーメントの使い方

ビジネスにおけるエンパワーメント

では、企業経営における「エンパワーメント」とは具体的にどういうことなのでしょうか。

全国展開のファストフード店や外食チェーンなどでは、全店舗で質やサービスを統一するために、全てが事細かにマニュアル化されています。しかし、マニュアルに従ってさえいればいいという環境は、人の向上心や成長の機会を奪ってしまいますし、何か起きるたびに上の判断を仰がなければ行動できないようでは、顧客対応を遅らせることになります。

そこで、マニュアル通りに現場を動かすのではなく、自分が今何をするべきか、お客さまが今望んでいることは何か、その判断を現場の従業員に委ね、実行する権限を持たせる(権限委譲)ことで、多様化する顧客ニーズに素早く対応できる体制を構築するだけでなく、自らの判断で行動できる人材を育成し、企業全体のスキルの底上げを図ろうという考え方に転換する企業が増えてきたのです。

これが、企業経営におけるエンパワーメントです。

運動におけるエンパワーメント

エンパワーメントは、元々は、市民運動や女性の権利獲得運動、先住民運動などで用いられていた言葉で、1960年代初頭に民衆文化運動を組織したブラジルの教育哲学者パウロ・フレイレ氏は、抑圧された民衆が解放され自由を勝ち取るためには、自分たちの置かれた不利な状況を認識し、自ら必要な力を身に付けること、また、潜在能力を開花させることが必要不可欠であるという考えをもって活動してきました。

そんな彼の思想が、現在、さまざまな分野に応用されているのです。

教育におけるエンパワーメント

教育の現場でもエンパワーメントという考え方が取り入れられています。

「子どもたちはみな、あらゆる可能性を持っている」という概念のもと、子どもたちに対し全てを教えるのではなく、「自発的に考えるよう促すこと」、そして「子どもが持つ力・能力を信じ引き出すこと」、さらに、その「力を最大限に発揮できるようサポートすること」に徹する教育を指します。

子どもたちは失敗体験から多くを学び、試行錯誤しながら成長していくものです。それを大人たちが「失敗しないように」「怪我しないように」と先手を打ったり、「こうすれば成功する」「答えはそこにある」と過剰に手を差し延べていては、子どもたちは自ら考えたり、探究することをやめてしまうでしょう。

大人がすべきことは、子どもたちが成長するための機会を奪うのではなく、「見守ってあげること」ではないでしょうか。

介護・福祉関係におけるエンパワーメント

介護の分野では、患者や障がい者など、利用者が「自立」することをゴールとして支援を行っています。そのため、自分で物事を選択・決定する力を身に付け、生活環境を自らコントロールできるようサポートしていくことに重点を置いています。

たとえば、「自分でトイレに行けない」という利用者には、手すりや歩行器を用意するなど、なるべく自分でできるような環境を整えてあげます。

利用者は、「手すりがあればトイレに行けるんだ」「歩行器があればまだ歩けるんだ」ということに気付き、自分でできる事が増えればと、リハビリにも前向きに取り組むようになるでしょう。

また、介護保険の活用など、金銭的なサポートも重要です。介護や福祉分野におけるエンパワーメントには、肉体・精神・金銭という総合的なサポートが求められているのだと思います。