3つめはIIJの顔とも言える堂前氏より、「IoTってなんだ」と題して、IIJがIoTに関係して展開しているサービスや取り組みについての紹介と、デモが披露された。
IoTという言葉自体はすっかり定着した観があるものの、肝心のモノのほうは、分野にもよるが、まだ普及しているとは言い難い。堂前氏は自作の「IoTはかり」を使い、IoTを「人間の代わりに機械がデータを入力してくれるもの」と定義。
そしてIoTを構成する要素技術として低消費電力な通信が不可欠であること、IIJは通信会社として、こうした低消費通信技術でIoTの実現に向けた取り組みをしていることが紹介された。
こうしてIIJではさまざまな取り組みを行っているが、現実にはまだIoTは中途半端で、IoTで解決するべき問題自体がよくわかっていない、といった状況にある。そこで堂前氏は「とにかく手を動かしてやってみよう」ということで、「簡単な機器を自分で作って検証する」(PoC:Proof of Concept)ことを提唱する。
そもそもIoTは現状法人向けのものが多く、個人向けのIoT機器は監視カメラなど一部を除くとほとんど数がない状況だ。IIJでは「IIJmio IoTサービス」を開始したが、機器が少なければ市場も立ち上がらない。そこでIoT機器を自作してPoCしよう、というわけだ。
まずはデモとして、堂前氏が作成した「Google Homeを車載し、音声で後ろの車に「ありがとう」と電光掲示板で表示する」システムが披露された。
続いて、こうした仕組みを実際に作ってみるために必要なセンサーやマイコンボードが紹介され、その中から「Obniz」というボードがデモに使われた。このマイコンボードはソケットに直接センサーを挿して使えるという手軽さと、プログラミングにJavaScriptなどのウェブ言語が使えるというのが最大の特徴で、ブロックプログラミングによってプログラミング言語の知識がない人や、ウェブ畑のエンジニアもIoT開発ができてしまうというもの。筆者もプログラミングをバリバリやるタイプではないので、こうした製品にはかなり期待してしまう。教育向け市場なども含めて、非常に大きな可能性を感じさせるものだった。
また、IoTからのデータを可視化する手段として、IIJ Technical Night 6で紹介された「Machinist」が紹介され、無料ながらデータを素早くグラフ化し、管理するためのプラットフォームも用意されていることをアピール。多くの人がIoT工作でデータを集めてみることが、解決すべき問題を浮き彫りにすることもあるため、もっと手軽にIoT工作をしてみましょう、と締めくくった。
最後にTwitterや会場からの質疑応答が行われた。米中の経済問題だけでなく防衛問題にまで発展しているファーウェイの端末の扱いについての質問も目立ったが、これについてはIIJとしては特に言うことはなく、政府の指針などを注視していると述べるにとどまった。
3つ目の議題については「IIJによるIoTへの取り組み」というよりは、明らかに後半の「IoT工作をやってみよう」が本題で、それがやりたかっただけだろう! という感じなのだが、こうしたイベントでは、エンジニアの趣味やこだわりの部分が垣間見える、いい意味で「偏った」内容こそが醍醐味と言えるだろう。個人的には大歓迎だ。
次回のIIJmio meetingは4月6日(大阪)と13日(東京)の開催が決定している。内容については未定とのことだが、タイムリーでディープな話題が扱われることはほぼ確実だ。毎回かなりの人数が訪れる人気イベントとなっているが、IIJmioユーザー以外も無料で参加できるので、読者諸氏もぜひ参加してみてはいかがだろうか。