3つめはIIJの顔とも言える堂前氏より、「IoTってなんだ」と題して、IIJがIoTに関係して展開しているサービスや取り組みについての紹介と、デモが披露された。

IoTという言葉自体はすっかり定着した観があるものの、肝心のモノのほうは、分野にもよるが、まだ普及しているとは言い難い。堂前氏は自作の「IoTはかり」を使い、IoTを「人間の代わりに機械がデータを入力してくれるもの」と定義。

  • 堂前氏自作のIoT。重さセンサーで上に載せたお菓子の重さを計測し、在庫を管理する仕組み。単純だがスーパーストアなどでは大いに効果を発揮しそうだ

  • 人間がデータを入力していたものを、機械に直接入力させるように自動化した仕組みをIoTの定義(のひとつ)とする。過去にユビキタス、M2Mと呼ばれた仕組みとも共通性があるとした

そしてIoTを構成する要素技術として低消費電力な通信が不可欠であること、IIJは通信会社として、こうした低消費通信技術でIoTの実現に向けた取り組みをしていることが紹介された。

  • デバイスと、そこから得られたデータを解析・可視化する仕組みを繋ぐための通信技術がIoTには不可欠。特にIoTの場合、広範囲に設置したり、一度設置すると電源が長期間得られないケースもあるため、低消費電力であることが求められる

  • 静岡県で実施中の農業IoTでは400台もの機器を1シーズン(約3カ月)電池で動かすため、低消費電力通信技術「LoRaWAN」などが使われている。このほかLTE-Mなどの通信技術が検証されている

こうしてIIJではさまざまな取り組みを行っているが、現実にはまだIoTは中途半端で、IoTで解決するべき問題自体がよくわかっていない、といった状況にある。そこで堂前氏は「とにかく手を動かしてやってみよう」ということで、「簡単な機器を自分で作って検証する」(PoC:Proof of Concept)ことを提唱する。

そもそもIoTは現状法人向けのものが多く、個人向けのIoT機器は監視カメラなど一部を除くとほとんど数がない状況だ。IIJでは「IIJmio IoTサービス」を開始したが、機器が少なければ市場も立ち上がらない。そこでIoT機器を自作してPoCしよう、というわけだ。

まずはデモとして、堂前氏が作成した「Google Homeを車載し、音声で後ろの車に「ありがとう」と電光掲示板で表示する」システムが披露された。

  • 堂前氏は最近、自動車向けのIoT工作にかなりハマっているようで、トークショーのたびに新しい「作品」が紹介されている

続いて、こうした仕組みを実際に作ってみるために必要なセンサーやマイコンボードが紹介され、その中から「Obniz」というボードがデモに使われた。このマイコンボードはソケットに直接センサーを挿して使えるという手軽さと、プログラミングにJavaScriptなどのウェブ言語が使えるというのが最大の特徴で、ブロックプログラミングによってプログラミング言語の知識がない人や、ウェブ畑のエンジニアもIoT開発ができてしまうというもの。筆者もプログラミングをバリバリやるタイプではないので、こうした製品にはかなり期待してしまう。教育向け市場なども含めて、非常に大きな可能性を感じさせるものだった。

  • Wi-Fi通信に対応した様々なマイコンボードが登場しているが、今回は右上にある「Obniz」(実売5,980円前後)が紹介された。個人的にものすごい可能性を感じさせられたボードだ

  • Obnizを実際に使ったデモも公開。ソケットに直接ダイオードを刺し、ブロックプログラミングで数手順組み合わせてやると、スイッチのオン・オフで点灯するIoTがものの数分で完成。ほかのセンサーも同様に簡単な手順で動かせてしまう

また、IoTからのデータを可視化する手段として、IIJ Technical Night 6で紹介された「Machinist」が紹介され、無料ながらデータを素早くグラフ化し、管理するためのプラットフォームも用意されていることをアピール。多くの人がIoT工作でデータを集めてみることが、解決すべき問題を浮き彫りにすることもあるため、もっと手軽にIoT工作をしてみましょう、と締めくくった。

  • データの可視化プラットフォーム「Machinist」は無料でデータをグラフ化するだけでなく、条件に応じて様々な処理を行える。個人がIoT開発をする上ではかなり役立ちそうだ

最後にTwitterや会場からの質疑応答が行われた。米中の経済問題だけでなく防衛問題にまで発展しているファーウェイの端末の扱いについての質問も目立ったが、これについてはIIJとしては特に言うことはなく、政府の指針などを注視していると述べるにとどまった。

3つ目の議題については「IIJによるIoTへの取り組み」というよりは、明らかに後半の「IoT工作をやってみよう」が本題で、それがやりたかっただけだろう! という感じなのだが、こうしたイベントでは、エンジニアの趣味やこだわりの部分が垣間見える、いい意味で「偏った」内容こそが醍醐味と言えるだろう。個人的には大歓迎だ。

次回のIIJmio meetingは4月6日(大阪)と13日(東京)の開催が決定している。内容については未定とのことだが、タイムリーでディープな話題が扱われることはほぼ確実だ。毎回かなりの人数が訪れる人気イベントとなっているが、IIJmioユーザー以外も無料で参加できるので、読者諸氏もぜひ参加してみてはいかがだろうか。