しかし残念なことに、この完成度が高いハードウェアを、別の部分が足を引っ張っている。各ボタンにさまざまな機能を割り当てるユーティリティ「Microsoft マウスキーボードセンター」がそれだ。
筆者は、多ボタンマウスを使い始めるにあたって、つねに決まったショートカットを割り当てて使用している。具体的には以下の3つだ。
- Ctrl+Tab(およびCtrl+Shift+Tab)
- BackSpace
- Ctrl+W
「Ctrl+Tab」は、タブブラウザのタブを順番に切り替えるショートカット(Shiftありはその逆送り)、BackSpaceはエクスプローラやウェブページで履歴をひとつ戻るためのショートカット、「Ctrl+W」は開いているファイルやフォルダを閉じるショートカットだ。
本製品でこれを登録しようとすると、「Ctrl+Tab」は、Ctrlに続いてTabを押した段階で、本来のタブキーを押した時と同様、次の項目にフォーカスが移動してしまい、登録を完了できない。マクロ機能を使えば登録できるのだが、Tabキーの表記が「Tab」ではなく、矢印が左右方向を向いた画像に差し替わっているため、筆者は自力ではTabを意味していることに気づけなかったほどだ。できれば(画像の表現云々ではなく)他社のようにマクロを使わなくとも対応できてほしいところだ。
【記事修正】初出時、Tabキーの登録ができないとしていましたが、マクロ機能を使った登録が可能だったため、関連する記述および画像を修正しました(2019年1月30日 15:00) |
もうひとつのBackSpaceに関しては、「Alt+←」で代替が可能なほか、「ブラウザーの戻るボタン」という専用のコマンドも割り当てられるので、そちらを使えば目的は達せられる(エクスプローラの「戻る」にも使える)のだが、他社では当たり前のように割り当てが可能なだけに、どうしても違和感は残る。
このユーティリティ自体は、タスクビューなどWindows特有のショートカットを割り当てられるなど機能は豊富なのだが、わかりやすさという点ではやや疑問符がつく。前述のマクロの登録にしても、ゲーミングマウスによくある、記録ボタンを押して実際の操作を登録する機能がなく、いまいち直感的でない。
また本製品は、Bluetoothで最大3台のデバイスを切り替えて利用できるが、底面ボタンを押して接続先を切り替える仕組みで、ロジクールのユーティリティのような、画面の端まで行くと隣のPCにフォーカスが移るようなギミックはない。単純にマルチペアリングに対応しているだけで、実売1万円を超えるマウスとしては、良くも悪くも普通の印象だ。
ユーザによって評価が分かれがちな製品
以上のように、ハードウェアだけ見れば、これまで同社のマウスがしっくりこなかった人も満足の行くポテンシャルを備える一方、ソフトウェアについてはやや不満が目立つ。機能は豊富ながら独自のお作法が多く、具体的なやり方を見つけるまでが一苦労という印象だ。
実は今回紹介している手順も、同社サポートに問い合わせたところ「できない」と回答をもらったのち、日本マイクロソフトの中の人から直接教えてもらう形で「できる」ことが判明した手順が含まれている(前述のTabについての登録方法がそれだ)。このあたり、一般のユーザであればまず回答にたどり着けない可能性が高い。
ただこれらの問題は、該当する一部キー、今回でいうと「Tab」や「BackSpace」を含む設定を行わないユーザからすると障害にならないわけで、実際に使ってみたらまったく支障なかったケースも多いと考えられる。ハードに関しては、左右ボタンが硬めである点を除けば秀逸な出来で、クセが強かった従来の同社マウスのイメージを一新しうるものだけに、ソフトウェアのわかりやすさが今後改善されれば、この価格帯のマウスの中でも抜けた存在となるはずだ。