2018年最大のヒットバラエティと言えば、『チコちゃんに叱られる!』(NHK、毎週金曜19:57~)だろう。2.5頭身の女の子が繰り広げる、自称5歳にそぐわない軽妙なトークが大ウケで、大みそかの『紅白歌合戦』でも大活躍、決めゼリフの「ボーっと生きてんじゃねーよ!」は、流行語大賞のトップテン入りを果たした。

この番組を制作しているのは、共同テレビ。昨年はドラマでも、フジテレビの月9『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』『SUITS/スーツ』が2クール連続で全話平均視聴率2ケタをマークするなど好調が続いているが、その背景は何か。『とんねるずのみなさんのおかげです』初代総合演出で、木梨憲武のキャラクター「小港さん」のモデルとしても知られる、港浩一社長に話を聞いた――。

  • 『チコちゃんに叱られる!』のチコちゃん(左)と『SUITS/スーツ』の織田裕二(写真:マイナビニュース)

    『チコちゃんに叱られる!』のチコちゃん(左)と『SUITS/スーツ』の織田裕二

■自信作として出してきた

――まずは、やはり『チコちゃんに叱られる!』(NHK)について伺いたいのですが、最初に企画を見たときはどんな印象でしたか?

3年前に僕と小松(純也プロデューサー)がフジテレビから共テレに来てすぐにあった企画だったんです。フジ以外でもできる環境にありますから、いろんなテレビ局に営業していくために、まず企画のリストアップをやりました。フジのバラエティ制作センターにいるときから、定期的に企画募集をやって、ピックアップしてブラッシュアップして、残ったものをゴールデン向けとか深夜のトライアル向けとかに分類して“財産目録”と呼んでリスト化することをやってたんですね。それに共テレのみんなも巻き込んでいって、その中で小松が自信作として『チコちゃんに叱られる!』を出してきたんですよ。

そのときにはもう「素朴な疑問に関するクイズを出して、分からないことがあるとチコちゃんに叱られる」という原型ができていました。これがNHKさんの求めているものと合致したということですね。共テレの創立以来のモットーは“あらゆるニーズに応える総合プロダクション”なので、それがうまくハマった結果だと思います。

――最初からNHKさんでと決まっていたんですか?

いろんなところに持っていきますけど、NHKさんでできているのが、あの番組にとって一番幸せなことだったなと思いますね。疑問の答えを正直に誠実に追求しながら、いいさじ加減で遊んだりふざけているバラエティに仕立てたことで、NHKさんのタイムテーブルの中で目立つ存在になりましたから。

――チコちゃんの表情を作るCGにものすごい時間がかかるじゃないですか。そうすると、なかなか民放のバラエティ制作のスケジュール感では難しいんですかね。

そうですね。放送の2カ月半前に収録していますが、NHKのCGセンターの人たちも、張り切ってやってくれています。本当にかわいく仕上げるから、見ていて楽しいですよね。演者さんは、夏の収録でも厚着したり、大変ですけど(笑)

■再々放送でも高視聴率

港 浩一
1952年生まれ、北海道出身。早稲田大学卒業後、76年にフジテレビジョン入社。人事部に配属後、79年に制作部門の子会社に出向すると、80年に制作部門がフジテレビ本体に復帰。『ドリフ大爆笑』『夜のヒットスタジオ』などを制作していた疋田班をへて、石田班に移籍。『ザ・ラストショー』でディレクターデビューし、『オールナイトフジ』『夕やけニャンニャン』などをへて『とんねるずのみなさんのおかげです』『とんねるずのみなさんのおかげでした』総合演出・プロデューサーを00年まで担当。その後、バラエティ制作担当局長、常務取締役などをへて、15年6月から共同テレビジョン社長(現職)。

――最初に企画を見たときから、これは当たるという手応えはあったんですか?

小松が自信を持ってたから、いくんだろうなとは思ってましたけど。ここまでブレイクしてくれると思わなかったです。金曜のゴールデンよりも、再放送で土曜の朝ドラの後という絶妙な置き場所で、(視聴率)16%とか取ったりしますからね。NHKの水高(満)プロデューサーとよく顔を合わせるんですけど、「やっぱりみんなチコちゃんに会いたいんですかね」と話をしています。金曜の放送がなくて、結構前の再々放送の回でも数字を取りますから、週1回はチコちゃんに会いたいという感じになってるのかなと思いますね。

――『チコちゃん』のヒットで、共テレさんの社内の雰囲気も良くなっているのではないでしょうか。

そりゃもう、僕らの仕事は良い数字を取って喜んでもらえるのが励みになるし、話題になるのはうれしいです。「これぞ共テレ」という代名詞になるような作品はドラマでは過去にも多くありますけど、バラエティとなると僕が来る全然前の『IQサプリ』(04~09年、フジ)以来ですから。

――各局への共テレさんの企画の売り込みにも、良い影響は出ていますか?

そうですね、まず「『チコちゃん』やってますよね」って言われますから(笑)

――他のレギュラーバラエティのほうはいかがですか?

『石橋貴明のたいむとんねる』(フジ系、毎週月曜23:00~)は、11月5日に5%台に乗せるなど、だんだん上がってきています。『人生最高レストラン』(TBS系、毎週土曜23:30~)は、ISSAさんがゲストに来た12月8日の放送が8.0%(以上、ビデオリサーチ調べ・関東地区)で、番組最高が出ました。10月に放送した村上信五さんと東野幸治さんの『NHK杯 輝け!!全日本“大失敗”選手権大会~みんながでるテレビ~』(NHK)も2月6日に第2弾が決まりましたし、指原莉乃さんの『さし旅』(NHK)は1月12・19・26日に3週連続で放送します。他にも、年末年始でトライアル番組が何本かあるので、これがしっかりレギュラーになっていけばいいなと思います。