2019年については、Androidは次期版「Android Q」で互換性の課題が改善しそうです。2年前までAndroidのベータ版はNexusデバイスやPixelデバイスに限られてリリースされていましたが、AndroidのOSフレームワークからベンダーごとの実装を分離するProject Trebleの成果で、2018年のAndroid 9 Pieでは7つのメーカーの端末を5月のベータ開始時から利用できるようになりました。Android OSのフレームワークがGeneric System Image (GSI)として提供され、Android QではTreble対応の端末でより広く試せるようになりそうです。2018年のAndroid Dev Summitでは、Android Qがベータリリースよりも先にGSIで利用できるようになる可能性にも言及していました。
Project Trebleの構造なら、ユニークなデザインのAndroidデバイスでも最新のOSへのアップデートが容易になります。2019年には折りたたみ可能なデバイスも登場しそうですが、従来のスマートフォンとは異なるデザインが増えてもフラグメンテーション (断片化)の問題を避けられそうです。他にも、Androidアプリのアップデート開発を開発者に促し、ユーザーが最新のアプリにアップデートする取り組みが行われているなど、2019年はGoogle Playのエコシステムの改善も進みそうです。
ただ、Android端末で幅広くOSアップデートの停滞がなくなるのは歓迎すべきことですが、GoogleのプラットフォームにおいてAndroidは数年前ほどのインパクトを持たなくなっています。スマートフォン用のOSとしてAndroidはこれからも重要な存在ではあるものの、Googleはすでにモバイルを含めてAIを活用した体験にフォーカスしているからです。
例えば、2018年にAndroidとiOSにスマートフォンの使いすぎ対策機能が実装されましたが、使用時間の管理では根本的な解決にならないとも指摘されています。Googleによると、人々は「○○を知りたい」「○○に行きたい」「○○を買いたい」「○○をしたい」といった時にスマートフォンを取り出します。個人の情報がデジタル化され、それをAIが分析してユーザーのことをよく理解し、ユーザーが必要とするサポートを提供したらスマートフォンを使う時間はもっと短くなるはずです。さらに、スマートフォンだけではなく、スマートウォッチ、スマートスピーカー、TV、PCなど、何を使っていても、どこにいてもデジタルアシスタントに声を掛けるだけで手助けしてもらえたら、スマートフォンを頻繁にアンロックする必要もなくなります。
McKinseyが2016年末に公開したレポートによると、デジタルデータの90%がそれまでの2年間で生成されていました。情報のデジタル化は目覚ましいペースで進んでいます。ところが、分析・活用されているデータはわずか1%でした。私達はデジタル化の恵みをほんの少ししか享受していません。Googleはそれを2020年までに3~4%、それ以上に引き上げようとしています。わずか数%の上昇でも、そのデータ量は膨大であり、私達の生活やビジネスに確かな変化をもたらすことでしょう。