そのGoogleは、2018年に様々な近未来的な技術を見せてくれました。最も話題になったのは「Duplex」です。レストランの予約など特定の目的に限られますが、デジタルアシスタントが人と自然に会話し、内容を理解して臨機応変に対応しながらタスクを完了させます。Google I/O 2018で、ユーザーに代わってGoogleアシスタントがヘアサロンやレストランに電話し、デジタルアシスタントであると気づかれることなく予約を取る様子が公開されて大きな話題になりました。
米国ではPixelスマートフォンで、Duplexテクノロジを用いた「Call Screen」という機能の提供が始まっています。電話がかかってきた時にユーザーが「Screen Call」ボタンをタップすると、Googleアシスタントが代わりに電話を受けて用件を聞いてくれます。その会話はリアルタイムでテキスト化され、それを見て重要な電話だったら「応答」ボタンをタップすると、Googleアシスタントが「少しお待ちください」と相手に述べて電話をつないでくれます。
通常のGoogleアシスタントもさらに成長し、話しかける度に「Hey Google」と呼びかけることなく継続的に会話できるようになり、また1つの文に複数のコマンドを入れても対応してくれるようになりました。他にも、GoogleマップのAR (拡張現実)を用いた経路案内、モールス符号によるテキスト入力 (Gboard)、複数の声を聞き分けるYouTubeの自動字幕機能、 積雪を正確に処理して埋まっている道路を認識する自動運転など、人々にとって役立つと実感できる形で数々のAI活用を示してきました。
秋にリリースした「Android 9 Pie」にも、効率的にバッテリー消費を管理する「Adaptive Battery」、画面輝度を自動調整する「Adaptive Brightness」、ユーザーの端末利用に応じて必要と思われるアプリやサービスを自動提示する「App Actions」、Google検索に応じて対応するアプリのアクションを表示する「Slices」など、インテリジェントな機能が組み込まれています。
Googleは秋に第3世代のPixelスマートフォン「Pixel 3」「Pixel 3 XL」を発売しました。Pixel 2からデザインの大きな変更はなく、SoCは向上したものの、背面のメインカメラは12.2メガピクセルのシングルカメラのまま。他のAndroidフラッグシップに比べるとハードウェアのスペックは少々見劣りします。でも、Googleが最適化したAndroidでサクサクと動作し、「Duplex」や「Call Screen」のような最新のサービス/ソフトウェアを組み合わせた時の体験は、近未来の端末を感じさせます。文章を入力するとデジタルアシスタントが文章候補を提示する「Smart Compose」、今は多くのAndroid端末で利用できるようになった「Googleレンズ」も、Pixel 3シリーズからの提供でした。
Pixel 3のほか、ハードウェア製品は「Home Hub」と「Pixel Slate」を発売しました。Homeファミリーの新製品Home Hubは、7インチのタッチスクリーンを搭載したスマートディスプレイです。GoogleフォトやYouTube Music/ Google Play Musicのためにデバイスと呼べるほど、それらのサービスを便利に使えるようにデザインされています。例えば、スマートフォンで撮影した写真をGoogleフォトに投げ込んでおくだけで、Googleフォトが写真を解析して自動的に分類、「2年前にニューヨークで撮った写真を見せて」と頼めば、すぐにニューヨーク旅行で撮影した写真がHome Hubに表示されます。
Pixel Slateは、Chrome OSを搭載したタブレットです。残念ながら、「レスポンスが悪い」「使いにくい」と製品レビューで酷評されています。Androidアプリも動作するものの、Chrome OSタブレットで使いやすいものではなく、「なぜChrome OSなのか?」という疑問が浮かび上がります。もしかすると、モバイルアプリからPWA (progressive web app)へのシフトを視野に入れたタブレットなのかもしれません。