――まさに今。どのような曲をそういう方々に届けたいと考えていますか?

両親の影響で小さい頃から80'sが好きで、80'sに限らずカントリー、ロックといろんなジャンルの音楽を聴いて育ちました。だから、「1つのジャンルにこだわる」というよりは、例えばアルバムの場合でも「バラエティ豊かな楽曲」が多くて。それが「自分らしさ」かなとも思うんです。でも、以前は悩むこともありました。コンセプチュアルなアルバムはすごく素敵なんですけど、私はその時々で好きなサウンド、コード、メロディが変わっていく。いろんなカラーを見せられるアーティスト、それがchayなのかなと思います。

――そうやって積み重ねてきた結果、今の「カラフルなchay」がある。掲げている目標を部屋に貼り出しているというのは本当ですか?

本当です! でも、もういい歳なんで今は剥がしています(笑)。

――では、胸の中に(笑)。

バンバン貼り出していた時は、小さいものから大きいものまで様々。来年で20周年を迎えるCrystal Kayさんと今回ご一緒して、これまで抱いてきた「歌い続けたい」という思いがより強くなりました。そんなCrystal Kayさんとアーティストとしてご一緒できることがどれだけ幸せで、掛け替えのないことなのか実感しています。だからこそ、10周年、20周年と歌い続けていたいです。

  • chay

名門・音楽塾ヴォイスのスパルタ指導

――5周年記念ライブ「chay 5th Anniversary Live ~Surprise Box~」の開演前に囲み取材があって、そこでもおっしゃっていましたね。

ありがとうございます。歌い続けることって本当にすごいことなんですよ! Crystal Kayさんは「やっと自分の声がわかってきた気がする」とおっしゃっていて、音楽を追求し続ける姿に胸を打たれました。

――その囲み取材で、ある記者さんの「5年前の自分に贈る言葉は?」という質問にchayさんは路上ライブの出来事を話されていましたね。誰も聴いてくれなくて、泣いて帰った日もあった。それでも諦めなかった自分に「ありがとうと言いたい!」と。

ありました(笑)。路上ライブをやっても、誰も聴いてくれないんですよね。

――なぜ、厳しい環境に身を置こうと? そこにはどのような思いがあったのか気になります。

「こういう思いがあった」というよりは……深い考えはなく、「とにかく聴いてもらいたい」という一心でした。

――最初に立った場所は?

渋谷の東口だった気がします。

――いきなり渋谷!?

はい(笑)。たぶん、夕方の6時頃、人通りも多かったです。でも、どれだけ人が多くても、私はそこに存在していないくらいというか、「透明人間?」と思ってしまうくらい、誰も足を止めてくれませんでした。

――自分だったら心折れそうです……。

とにかく、「どうやったら聴いてもらえるか」ばかりを考えていました。とにかく、悔しくて悔しくて……。デビュー前の反骨心は異常でしたね(笑)。「絶対にデビューする!」といつも言い聞かせていました。

  • chay

――続けていくうちに一人、また一人と増えて。ただ立ち止まってくれるだけの人でもめちゃくちゃ愛おしくなりそうですね。

そうなんです。路上ライブに来てくださっていた方は、今でもすぐに分かります。ライブ会場でも「あっ! 来てくださったんだ!」って(笑)。一番最初に足を止めてくれた方の顔は今でもしっかり覚えています。サラリーマン風の方で……40代ぐらいだったかな? その時は、自分の曲も歌っていたんですが、足を止めてもらうためにカバーも歌っていました。夜になると、酔っぱらいの方に絡まれることもあって(笑)。いきなり求められた歌でも必死に応えていました。それでも足を止めてくれたことがとってもうれしくて。

――音楽塾ヴォイスもかなり厳しかったそうですね。絢香さん、家入レオさんなどを輩出した名門塾です。

ものすごくスパルタでした。ギターをはじめたすぐの人にとっては、「こんなフレーズ弾けるわけない」と言いたくなるくらいの課題を突きつけられて。何十回、何百回と繰り返し練習していくうちに気づいたらできていて、ギターを通して、「不可能が可能になる瞬間」を何度も味わいました。それが日常なので大学の授業が終わったら、すぐに音楽塾に5~6時間ぐらい引きこもって。大学卒業後も含めると、5年間ぐらい通っていました。

とにかく歌手になることが小さい時からの夢だったので、それ以外に全く興味が向かなくて。両親にはすごく反対されていて、最初は内緒で通ってたんです。デビューが決まったり、何か形で示さないと認めてもらえないと思っていたので、あまりにも弾いていたせいかバレてしまって(笑)。「こんなに1つのことに集中している姿を初めて見た」と驚かれて、応援してくれるようになりました。