ひとつは、有線LANポートの搭載を諦めるというものだ。このコネクタを外せば大きな重量減が可能になる。そして、もうひとつは、時間をかけてさらなる軽量化を図るという選択肢だ。つまり、当初予定していた11月15日という発売日を伸ばすことになる。
どちらも目標としていた698gという軽量化を実現するには、有効な手段ではあったが、開発チームは、最終的には、このどちらも選ばなかった。
「有線LANポートは、従来モデルから評価が高かったものであり、LIFEBOOK UH-X/C3の利用シーンを考えるのであれば、当然、有線LANポートの搭載は避けられない。有線LANポートを取り外して、698gを達成しても意味がない」と、松下マネージャーは、自らに言いきかせ、この妥協案を退けた。
72本のネジを軽量化して0.2gを削減
その判断の結果が、最後の最後まで、コンマ数グラムで削り取るという地道な作業を繰り返すことにつながったのだ。ちなみに、先に触れたキーボード下の72本のネジを軽量化したものに変えたことによる重量削減は、72本合計でわずか0.2g。だが、そうした細かい軽量化への積み重ねが実を結ぶことになった。
こうした努力の末に、10月に入って、ついに698gを達成することができた。わずか半年という期間に、世界で初めて700gを切る13.3型モバイルノートPCが完成したのだ。
「少しでもいいものを作りたいという気持ちの積み重ねが、このPCを実現することにつながった」と松下マネージャーは、その完成度に自信をみせる。
「まずは、手に取ってみてほしい」
発売日の11月15日。松下マネージャーは、中国への出張と重なり、残念ながら、量販店に製品が並んでいる様子は見ることができなかったという。帰国後、量販店に出向くことになるのだろう。
「ビジネスモバイルの利用シーンにおいて、妥協を許さないPCに仕上がっている。常にPCを持ち歩くビジネスマンに使ってもらいたい」と、松下マネージャーが語れば、河野マネージャーは、「カフェで仕事をしているビジネスマンが使っているシーンを見るのが楽しみだ」と語る。
そして、2人は異口同音に、「まずは、手に取ってみてほしい」と語る。
748gの「LIFEBOOK UH75/B3」が登場したときには、ここまで軽くなると、これ以上の軽さは必要ないとさえ言われた。だが、698gの「LIFEBOOK UH-X/C3」を手に取ってみると、あの軽い「LIFEBOOK UH75/B3」が重く感じてしまう。700gを切るというスペックは、まさに、これまでの常識を変えるスペックだ。それを体験してほしいというのが、開発チームの想いだ。
最後に、さらなる軽量化が可能なのかを聞いてみた。
「まだ行ける」と松下マネージャーは自信を持って語る。次の製品の開発には、これから1年先を見込む。世界最軽量の座は譲らないという姿勢は、これからも変わりがなさそうだ。