富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、13.3型ノートPCとしては世界最軽量となる「LIFEBOOK UH-X/C3」を、2018年11月15日から発売した。
従来製品である「LIFEBOOK UH75/B3」の748gから、さらに50gも削減した698gを達成。初めて600g台に突入した「記念碑」ともいえる製品だ。
FCCLの齋藤邦彰社長は、「世界最軽量の座は譲らない」と宣言するが、まさにその言葉を証明した格好だ。なぜ、FCCLは、世界最軽量のノートPCを開発できたのか。富士通クライアントコンピューティング開発本部第一開発センター第二技術部の河野晃伸マネージャーと、開発本部第一開発センター第三技術部の松下真也マネージャーに、LIFEBOOK UH-X/C3の開発秘話を聞いた。
開発期間はわずか半年、異例のプロジェクト
世界最軽量の698gを実現した「LIFEBOOK UH-X/C3」の開発が正式にスタートしたのは、2018年3月のことだった。
通常は約1年をかけて開発する新製品を、わずか半年で作り上げるという異例のプロジェクトだ。しかも、掲げられた目標は、従来モデルから、50gも軽量化し、700gを切るというハードルの高いものだった。従来モデルの「LIFEBOOK UH75/B3」も、雑巾を絞りに絞るようにして世界最軽量を実現した経緯があるだけに、ここからさらに絞り込むには相当の覚悟が必要だ。
FCCL 開発本部第一開発センター第三技術部の松下真也マネージャーは、「2017年秋の時点から、UH75/B3の次の開発に向けての検討は始まっており、どこまで重量を落とすことができるのかといった試算も行っていた。2018年3月のキックオフミーティングの際には、CADによるシミュレーションで、700g近辺になるところまでは見えていた」と振り返る。
だが、それを実現するには、「これまでの改良ではなく、フルスクラッチで開発しなければならない」(富士通クライアントコンピューティング 開発本部第一開発センター第二技術部の河野晃伸マネージャー)という課題もあった。
それでも、FCCLが50g削減という高いハードルに挑んだのには、理由があった。
50gの削ぎ落としに挑んだ理由
FCCLが、13.3型の軽量モバイルノートPCを最初に投入したのが、2017年1月 の「LIFEBOOK UH75/B1」であった。777gという重量が注目を集めたが、これに対抗するように、NECパーソナルコンピュータが「LAVIE Hybrid ZERO」を発表。769gという軽量化によって世界最高の座を奪取した。
だが、これ対してFCCLは、量産を開始したところ、平均値が761gになったとして重量を修正。世界最軽量のポジションを取り返した。その実績をもとに、2017年秋に発売した後継機種「LIFEBOOK UH75/B3」では、748gを達成。世界最軽量の座を維持している。
「あのときのドタバタによって、ユーザーの混乱を招いたのも事実。世界最軽量を唱うのであれば、他社が踏み込んでこられない圧倒的な軽量化を実現しなくてはならないと考えた」(河野マネージャー)というのが、高いハードルに挑んだ理由だ。
そうした決意のもと、半年という短期間で、これまでにない製品を、フルスクラッチで開発するという、ある種、無謀ともいえる挑戦が始まったのだ。
軽量化の6割は筐体で実現
50gの削減目標の達成に向けて、最大のポイントは、筐体部分の軽量化だった。松下マネージャーは、「軽量化した約60%が筐体部分によるもの」とする。