それでは、今回試したメモリOCが、パフォーマンスにどのような影響として現れたのか、ベンチマークスコアとともに紹介しよう。計測は、DDR4-2400、2666、2933、3200、3600、3733とした。
このとおり今回の最高クロックはDDR4-3733だった。ただし、DDR4-3733では1つだけベンチマークが完走できないものがあったので、安定して動作するのはDDR4-3600とする。
その判定に至った経緯を含め紹介するため、DDR4-3733の結果もグラフに入れている。また、各テストで3回完走することを成功条件として、スコアのブレを抑える意味もあり3回の平均をスコアとしてグラフ化している。
最初はCPU関連。CINEBENCH R15とTMPGEnc Video Mastering Works 6の結果から見ていきたい。
・CINEBENCH R15
CINEBENCH R15では、まずSingle Coreテストはほとんど変化なしだ。シングルスレッドなのでメモリ帯域不足は生じず、純粋にCPUのシングルスレッド性能が現れている。
一方、Multi Coreテストはじわじわとスコアが向上、DDR4-3733がもっとも高い1417cbを記録した。6コア12スレッドのCPUに対してDDR4-2666では少し帯域が足りず、性能を引き出すならより高クロックのメモリが望ましいといえる。数値としてはDDR4-2666時に対して+16cbなので、CPUのOCと比べると地味な効果だ。
・TMPGEnc Video Mastering Works 6
TMPGEnc Video Mastering Works 6は、DDR4-3600まではフレームレートが向上したが、DDR4-3733はやや下がり、少し不安定な印象だ。フレームレートの向上は1fps未満と地味だが、今回試した映像ではDDR4-2600が20分12秒程度かかっていたのに対し、DDR4-3600では19分36秒で処理を終えた。より長時間の映像だったならば、処理時間も分単位で差が付くだろう。
・3DMark
続いて統合GPU性能の効果を見るために3DMark、ドラゴンクエストX ベンチマークソフト、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークを見ていこう。
3DMarkのOverallでは、DDR4-2666時の1360に対し、DDR4-3733で1383まで向上した。Graphicsスコアで見ても、1476対1503なので効果ありだ。ただ、Physicsテストでも18640対19020と向上が見られているので、GPUだけでなく合わせてCPUパフォーマンスの向上もあるようだ。
・ドラゴンクエストX ベンチマークソフト
ドラゴンクエストX ベンチマークソフトは、1280×720ドット、1920×1080ドットともDDR4-3600までメモリクロックに応じてスコアを伸ばした。評価自体は1280×720ドットがすごく快適という最も高い評価で、一方1920×1080ドットも快適評価から1つ上には行かなかった。
とはいえ、統合GPUでは動作がギリギリのものも多く、そうしたタイトルであとちょっとを求める際には、メモリOCは有効な手段と言える。また、このベンチマークでもDDR4-3733はどうも安定性がよくなかったようだ。
・ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークは、DDR4-3600まで段階的にスコアが伸び、DDR4-2666に対して449ポイント向上、平均fpsで3fps向上した。ベンチマークの結果に最低fpsは表記されないが、確実に向上しており映像のカクつきも抑えられた印象だ。
ただし、DDR4-3733ではベンチマーク中にソフトやGPUドライバがクラッシュするといった症状が出た。OSの起動はもちろん。そのほかのベンチマークも無事完了していても、スコアが安定しなかったり低下が見られたり、あるいはクラッシュするといったこともある。メモリOCの成功可否の見極めでは、このように1つ下のクロックとの比較が重要だ。
・PCMark 10
最後に総合パフォーマンスを見るためにPCMark 10を評価した。Extendedスコアは、地味だが着実に向上している。DDR4-2666の3552に対し、DDR4-3600は3392だ。下がった要因は何かがポイントになる。
シナリオ別に見ていくと、Essentialsは正直なところほぼ変化なし、ProductivityはDDR4-2666対DDR4-3600で42ポイントとわずか、Digital Content Creation(DCC)は同65ポイント、Gamingは意外にも同21ポイント程度だった。
Productivityでは、Spreadsheetsは変化なしでWriting側でわずかに効果がある結果。DCCはRendering and VisualizationとVideo Editingで向上が見られた。GamingはGraphicsが少し、主にPhysicsが向上しているが、総合値への重み付けで総合値への影響が小さかったようだ。
OCメモリで性能を引き出そう。ドレスアップを含めて楽しむのがよい
このようにCPUへの効果はそれなりに、GPUへの効果は分かりやすい。多少不安定だったDDR4-3733も、CINEBENCH R15のスコアを見る印象ではCPUパフォーマンスをさらに引き出せそうな感触だ。
高みを目指したいなら、より高クロックのXMPメモリや、今回ベースとしたDDR4-3200よりも上のメモリをベースにOCしてみてはいかがだろうか。先にも述べたが、CPUやグラフィックスカードほど高価というわけではないため、PCにおけるOCの入門として、メモリの世界を楽しんでみてほしい。