そうした中、気になった点として立木氏が挙げたのは「寄りの多さ」です。「アマチュアのころは、どうしても撮りたいものにグッと寄ってしまう。説明したいというのもあるでしょうが」と指摘します。しかし「興味のあるものが小さく写っていても、例えばキャラがすごい人間だったら引いても分かります」(同)。引いて撮影すると余白が無駄になるという感覚もあるかもしれない、としつつ、立木氏は「(カメラのモニターという)小さい画面で見ているから、寄った方が分かるという影響はあるのかもしれない」と推測します。
そうした変化について、時代性についても立木氏は言及します。「写真には知らず知らずに時代が現れている」と立木氏。「今の時代の撮り方になっているし、コミニュケーションの仕方になっている」(同)。
それでも「スナップショットの面白さは“藪から棒”だから、身体的に反応して撮るという面白さがある。高校生たちはそこまで至っておらず、それができるようになれば面白い」と立木氏はアドバイスします。時代性でいえば、写真甲子園の参加チームは女子のほうが多く、これも最近の写真甲子園の特徴ともいえそうです。
もう1つの新たな取り組みである「夕方の撮影」も、今回の選手たちの作品を見た立木氏は不満があったようです。実際、提出された作品でも夕方の写真が少なく、「夕方にどっぷり浸かって感受性を駆使して、というのをあまりやっていない」と指摘します。「夕方ってことは、(ロケ車の)車から降りた一歩目から光の面白いものがある」ということで、そうした写真がなかったことを残念がっていました。
最後に、立木氏に優勝校以外で気になったチームを聞いてみると、北海道岩見沢高等養護学校を上げていました。今回は敢闘賞でしたが、立木氏は「感覚がちょっと違う」と話します。作品も独自の感性でオリジナリティが高く、そうした点が立木氏の目にとまったようです。
「今回のテーマは難しすぎない? 今日いたプロ(審査員)に頼んでも撮れないよ」と立木氏は笑いつつ、「テーマ通りにやらなければいけない、というほどのものでもない。テーマから外れていても面白ければいい」と話す立木氏。ただ外れればいいというものでもなく、かといってテーマにとらわれすぎるのも写真をつまらなくしてしまう。ある意味、もっとも選手たちに難しい注文をする立木氏ですが、高校生たちが写真甲子園の舞台で生み出す作品に期待していました。