――地球を滅亡に追い込むほどの「悪」を演じる上で、どんなことを意識されましたか。
上堀内監督からは「ブラッド族は悪役なんだけれども、カッコよさというのもちゃんとあるキャラクター。『悪だからキライ』なんじゃなくて、『悪なのにカッコいいな、好きだな』と思ってもらえるような存在として描きたい」という言葉をいただきました。なので自分としては「カッコいい悪女」みたいなところを目指してみようと思っていて、現場では監督と相談しながら「もっと色っぽく」とか「こういう仕草は悪女っぽいんじゃないか」とか、お芝居を工夫していました。
――松井さんがどんな悪女になっているのか、期待がふくらみますね。悪女を演じる上で、実在の女優さんや架空のキャラクターなどから「この人をモデルにしよう」とした人物はいらっしゃいましたか?
特にはいないんですよ。自分のイメージする中で「こういう悪役がいたらカッコよくて、好きになるかな」という人物像を作り上げて、演じるようにしていました。
――以前から『仮面ライダービルド』のテレビシリーズはチェックされていましたか。
観てはいましたが、毎週欠かさず、とはいかなくて……。でも今回、出演オファーをいただいてから、第1話から撮影に入るまでの最新話までをちゃんと観ましたね。
――すばらしいですね。通しでご覧になったご感想はいかがでしょう。
すごくストーリーが複雑で、しかも展開は早いですし、今までにないタイプの「仮面ライダー」だと思って観ていました。やっぱり、観ていくうちにどんどん面白くなってくるんですよ。大人も子どもも楽しめるストーリーに、変身ベルトのギミックの楽しさとか。そして、2種類のフルボトルで変身する「ベストマッチ」の組み合わせとかも面白いですよね。今度はどんなフォームになるんだろう、とか。あれだけたくさん変身を重ねるライダーも、なかなかいないだろうなっていう印象がありました。撮影に入ったころにはもう熱心な視聴者になっていて、現場でメインキャストのみなさんにお会いしたときも、役者さんというより『ビルド』のキャラクターとして見てしまって、なんだかソワソワしていました(笑)。
――これまで観てこられた『仮面ライダー』シリーズの中で、一番好きなライダーは誰ですか。
すごいなって思ったのが『仮面ライダー電王』(2007年)ですね。電王は1人の体に、いくつものキャラクターが憑依して、次々にいろいろなフォームへ変身していく設定なんですけれど、とあるイベントで、電王のアクションを演じているスーツアクターの高岩(成二)さんが生身の状態で各フォームの変化を演じ分けている映像を観たんです。体があっちに引っ張られたらモモタロスが憑依して、こっちに引っ張られたらウラタロスが憑依する、みたいな。それを目の当たりにしたとき、高岩さんのすごさ、スーツアクターさんの表現力のすばらしさを感じたんです。それまでにも、仮面ライダーやスーパー戦隊のヒーローのアクションを演じる方がいらっしゃるとは認識していましたけれど、高岩さんがキャラクターの演じ分けを生身でされているのを観たとき、プロフェッショナルの技というか、身体的な「お芝居」のすごさに気づくことができたんです。こういうスーツアクターさんたちの「力」があるからこそ、特撮ヒーロー作品が成立しているんだなあって、改めて感銘を受けたのが『電王』という作品だったんです。