『仮面ライダーエグゼイド』(2016年~2017年)では、「医療」と「ゲーム」という一見反発しそうな要素を盛り込んで基本設定が作られた。人間を「ゲーム病」に罹患させる新種のウイルス・バグスターを切除するためには、仮面ライダーに変身してバグスターを倒すしかない。『エグゼイド』では、さまざまな立場からバグスターとゲーム病に立ち向かうドクターライダーたちが登場し、激しく対立し、一方で心を通わせながら、強大な「ラスボス」にたどり着くまでをエキサイティングに描いている。当初からミステリアスな謎を散りばめておき、ストーリーの進行と共にその謎が解き明かされていくという物語展開の妙味や、壇黎斗/仮面ライダーゲンムを筆頭に、アクの強いキャラクターたちが織りなす軽妙な会話劇、演技合戦に注目が集まった。
そして『仮面ライダービルド』(2017年~2018年)では、火星から持ち帰られたパンドラボックスによって日本が東都、北都、西都に分断されたという世界観のもと、怪物スマッシュと戦う仮面ライダービルド/桐生戦兎の活躍が描かれた。『ビルド』の特徴は、なんといっても「ラビットタンク」「ホークガトリング」など、2種類の成分が入ったフルボトルを使って多彩な姿にフォームチェンジする部分にあるだろう。そして、3つの首都が覇権をかけて戦争状態に入ったり、地球外生命体エボルトの野望が明らかになったりと、ストーリーの展開が1話単位で急速に進んでいき、散りばめられた謎がひとつ解明されたと思ったら、また新たな謎が勃発するという、ジェットコースター的な展開もストーリー面での大きな特徴といえる。いまや作品のスケールは火星を飛び越えて、知的生命が存在する別な銀河系の惑星にまで広がってきている。全宇宙規模の敵を前にして、戦兎や万丈がどのように戦い、勝利を収めるのか、いよいよ近づくクライマックスに果てしない期待が寄せられる。
このように、いささか駆け足ではあるが「平成仮面ライダー」シリーズの概要を振り返ってみた。記念すべき20作目の『仮面ライダージオウ』(2018年~)は、「時計」をモチーフにした、時空を旅して戦う「タイムトラベルライダー」であるという。ライダーたちはカタカナとひらがなをレタリングした個性あふれるマスクで、「ジオウ」は「19作にのぼるレジェンドライダーの力を使いこなすライダー」として設定されている。さらには、「主人公自身がラスボスであることを知ることからはじまる物語」という斬新なストーリーにも、新たな挑戦への意欲が感じられる。平成最後を飾るライダー『仮面ライダージオウ』ではどのような物語が展開され、驚きを与えてくれるのか、9月2日からの放送に大いに期待したい。
■著者プロフィール
秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載。
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