立場の異なる4人のライダーの青春群像を描いた『仮面ライダー剣(ブレイド)』(2004年~2005年)、ライダーだけでなく、ヒーローの"完全新生"を目指した異色作中の異色作『仮面ライダー響鬼』(2005年~2006年)、王道の昆虫モチーフライダーが複数登場し、それぞれの求める目的のために争いあう『仮面ライダーカブト』(2006年~2007年)と、安定状態に入ったにも関わらず常に前作のヒット要素をかなぐり捨て、斬新なヒーローデザインや世界観を求めてきた「平成仮面ライダー」。

『剣』ではナイーブな主人公像やトランプというスタイリッシュなキャラクターモチーフで「石ノ森テイスト」の再現を図り、『響鬼』では「音撃」という清めの音を魔化魍に打ち込むことで倒す「鬼」戦士のプロフェッショナルな戦闘を描き、『カブト』では究極の「俺様」キャラ・天道総司の絶対的な強さを打ち出すと共に、料理へのこだわりをも盛り込んだドラマ作りを目指すなど、作品それぞれに強い魅力があり、他の「ライダー」作品とカブらない猛烈な個性を発揮しているのはさすがというほかない。1作ごとに斬新な設定やキャラクターを提示しながら、シリーズとして長く続けていくという、非常に困難なことを試行錯誤しながらひたすら挑戦し続けているところに、「平成仮面ライダー」シリーズの面白さの秘密があるのだといえる。

若手俳優の登竜門

史上最弱の主人公と呼ばれた(しかし芯はもっとも強い)野上良太郎が、個性的な「イマジン」たちに憑依されて人格が変貌し、時の列車デンライナーに乗って活躍する『仮面ライダー電王』(2007年~2008年)は、「平成仮面ライダー」シリーズ最大のヒット作として、放送終了後もさまざまなスピンオフ作品が作られた。今や日本映画界を代表する若手俳優のひとりとなった佐藤健が世間に注目されるきっかけを作ったのが、『電王』での良太郎役だった。

昭和の時代から藤岡弘、や宮内洋、村上弘明、倉田てつをなど、アクション派、肉体派の人気俳優を多く輩出してきた「仮面ライダー」だが、平成の時においても時代の流行に合致したイケメン俳優が多く作品から巣立っていき、映画、舞台、テレビドラマ、CMなど幅広い分野で活躍することが多くなっていく。そんな俳優たちの中には「新人時代、仮面ライダーで多くのスタッフに育ててもらった」と述懐する者も少なくない。

人間の生命エネルギーを吸い取るファンガイアに挑む者たちの戦いを、父と子の2つの「時代」を並行して描いた『仮面ライダーキバ』(2008年~2009年)では瀬戸康史(紅渡)、武田航平(紅音也)、9つの「ライダーの世界」をつなげる使命を与えられた"世界の破壊者"ディケイドと仲間たちの旅を描く『仮面ライダーディケイド』(2009年)では井上正大(門矢士)と、平成ライダーで好評を博した俳優たちは、現在もさまざまな作品で活躍を続けている。これ以後のシリーズでも、菅田将暉(W)、福士蒼汰(フォーゼ)、竹内涼真(ドライブ)など、今やテレビでその姿を見ない日がないほどの人気俳優になった者がぞくぞく現れている。