2018年9月2日より、「平成仮面ライダー」シリーズ第20作にして、最後の「平成仮面ライダー」であるシリーズ最新作『仮面ライダージオウ』が、テレビ朝日系全国ネットにて放送されることが明らかになった。そこで今回は「平成仮面ライダー」とは何だったのか。そのシリーズの歩みを振り返る。
「平成仮面ライダー」とは、文字通り我が国の元号が「平成」の時代に作られた「仮面ライダー」シリーズを指す言葉だが、シリーズ第1作の『仮面ライダークウガ』が作られた2000年(平成12年)の段階では、現在まで20作も続いていく長寿シリーズになるとは作り手の誰も予想していなかったという。ここでは、最新ライダー『ジオウ』を迎えるにあたって、これまでの「平成仮面ライダー」の概要を急ぎ足で振り返り、19作品の「歴史」がいかにして積み重ねられたかを改めて確認してみたい。
シリーズの原点となる『仮面ライダー』は1971年、つまり昭和46年に放送が開始された。『仮面ライダー』は『サイボーグ009』『幻魔大戦』などで有名な"萬画家"石ノ森章太郎氏が原作を務めた実写SF「怪奇アクション」ドラマであり、世界征服を企む悪の秘密結社ショッカーの送り込む奇怪な改造人間(怪人)と、人間の自由を守る大自然の勇者・仮面ライダーが激しい死闘を繰り広げるという筋書き。オートバイアクションのスピード感と、トランポリンジャンプを駆使した超人的アクション描写、そしてショッカー怪人のユニークなキャラクターデザインといったさまざまな魅力により、当初は低かった視聴率が右肩上がりに上昇。開始早々、主役俳優の負傷~新主役への交代というアクシデントに見舞われたものの、それをはね返すべく打ち立てた強化策がことごとく子どもたちの心をつかみ、1年後には高視聴率を稼ぐ大ヒット作品に成長した。
『仮面ライダー』の好調は関連商品の売り上げにもつながり、特にポピー(現バンダイ)の「変身ベルト」、カルビー製菓「仮面ライダースナック」のおまけ「ライダーカード」は爆発的な人気を獲得。社会現象として昭和の文化史に項目を残すまでに至った。
『仮面ライダー』は日本中に「変身」ブームを巻き起こし、およそ2年間ものロングラン放映を成し遂げた。続いて同一の世界観のもとに『仮面ライダーV3』(1973年)が作られ、「仮面ライダー」はシリーズ化への道を歩むことになったのだ。
昭和から平成へ
昭和の「仮面ライダー」シリーズは、第1作から『ストロンガー』までの5作品を第1期、中断を経て復活を遂げた『仮面ライダー(新)』から雑誌展開を中心とした異色作『仮面ライダーZX』までを第2期と分類できる。『ZX』の初のテレビ作品『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』(1984年)は正月の1時間スペシャル番組として単発で放送され、10人目のライダー誕生を祝福すると同時に、「仮面ライダー」というブランドの有終の美を飾るフィナーレの意味を持っていた。
本来ならここで「仮面ライダー」シリーズの歴史はピリオドを打たれていた。一方、家庭用ビデオデッキが爆発的に普及してきており、ゴジラや力道山、ウルトラマンなど昭和30~40年代に活躍した「懐かしのヒーロー」がビデオソフトという(当時の)ニューメディアで甦り、ふたたび注目を集める流れが勃発した。いわゆる「レトロブーム」と言われる現象である。
ニーズの増加にともないビデオソフトの企画が活発化。時を同じくして、かつての子どもたちが大人になり、かつて自分たちが愛した懐かしのヒーローとして「仮面ライダー」にもスポットがあたっていった。やがて旧作テレビシリーズや「予告編集」のビデオソフト、オリジナルBGMレコードなどが好調な売れ行きを示し、「80年代の優れた映像技術や造形センスを駆使した、新しい『仮面ライダー』が見たい」というファンの声が高まった。
原作者・石ノ森章太郎氏もその思いが強く、当時人気を博した海外のSFX映画に負けないクオリティで『仮面ライダー』を甦らせたいとして、それまでのスタッフをほぼ一新した『仮面ライダーBLACK』(1987年)が製作されるにいたった。『BLACK』は、同時期に好評を博していたスーパー戦隊シリーズ(当時は『光戦隊マスクマン』を放送)と、メタルヒーローシリーズ(当時は『超人機メタルダー』を放送)という2本柱とは別に、3本目の柱を目指して作られた意欲的な作品として、映像表現やアクションに従来とは違った「リアリズム」重視の演出が施された。
『BLACK』は見事、新時代のヒーローとして子どもたちに受け入れられ、続編『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)に発展した。『RX』の放送途中となる1989年1月に昭和天皇が崩御し、元号が「平成」と定められた。文字どおり、昭和と平成をつなぐポジションに位置した『仮面ライダーBLACK』シリーズは、仮面ライダーの歴史全体を見る上で決して外すことのできない重要な作品だといえるだろう。