大規模災害時には上下水道の破損や電気、ガスが使えないといった状況が想定される。そこで平山さんが特に備えておいてほしいという対策が2つある。
1つ目は「食事」。家にある食材(冷蔵庫も含めて)の中で、傷みやすいものから使っていこう。そこでカセットコンロやカセットボンベ、非常用炊出袋を備えてほしい。非常用炊出袋にお米と少量のお水を入れ、沸騰したお湯でゆでるとご飯が炊ける。おかずやデザートもこの袋でできる。いつも食べ慣れている食材を災害時にも食べる工夫である。
この非常用炊出袋は高密度ポリエチレンで作られており、熱に強く、水を通さないという特徴がある。水を通さないため、お鍋の中の水は飲めない水(お風呂のため水など)が使えるので、貴重な水の消費を抑えることが可能。使い終わった水は決して排水せずに、そのまま再利用しよう。
また、主食とおかずが一緒に調理できるところもおすすめだ。人は体温が1度下がると免疫力が30%落ちると言われている。食事もなるべく温かくしたい。特に非常時には温かい食事が何よりも心の支えとなるので、ぜひ用意しておいてほしい。
2つ目は「携帯トイレ(凝固剤)」。災害時には、普段は当たり前のように使っているトイレが使えないケースがある。水が流れないという状況だけでなく、配管などの破損により水漏れが起こるといった被害も想定されるからだ。こういった事態に備え、災害発生から1週間程度はしのげる携帯トイレを家族の人数分を用意しておこう。
災害をイメージして自分のセットを考えよう
平山さんは最後に、防災グッズの選び方のコツを次のように説明してくれた。
「災害が起こったとき、あなたの周りはどのような状況になるでしょう。その状況をイメージして防災グッズを備えましょう。何のために、誰のために? そこを理解したうえで準備することが大切です」
実際に災害が起こったときに必要となるものは個人で異なる。最近では各種グッズがセットになった防災リュックも市販されているが、「防災リュックを買えば解決」と思ってしまうと、現場思考が生まれなくなってしまう。セットを基準として、「季節ごとに衣類の入れ替えをする」「体調によって薬を変える」「成長によって必要とする物を変える」といった具合に、年に2回は中身を抜いたり追加したりして、自分と家族を守る防災セットを準備してみよう。
「そして覚えておいていただきたいのが、リュックは必ず一人1つということです。夫婦で1つ、家族で1つではなく、個人単位で用意してそれぞれが自分で自分のリュックを持ちます。そして、災害時にそこにいない人の分は置いていく。自分の分だけを背負って逃げてください」
自分や家族の生活に合わせた防災セットを
今回具体的に紹介した防災グッズは、あくまで平山さんに合ったセレクトであり、防災グッズの揃え方の一例に過ぎない。大切なのは、自分が災害に遭ったときにどのような状況に置かれるかをイメージし、そのうえで自分にとっての最適解となるものを備えておくことだ。
非常時を想定すれば、防災セットを無駄なく揃えることができるだけでなく、有事にどのように行動するかを見つめ直すこともできるはず。日々の生活の中で災害について考えることで、自分なりの防災セットを揃えてほしい。
監修者プロフィール: 平山優子(ひらやま ゆうこ)
NPO法人 日本防災士会 千葉県北部支部 副支部長のほか、公益社団法人 SL災害ボランティアネットワーク 船橋SLネットワーク 理事などを務める。