AppleがWWDC 2018で発表したiOS 12とwatchOS 5には、Appleが直面している問題への様々な解決方法が含まれていた。

その問題とはスマホ中毒患者への対応で、iOS 12にはiPhoneやiPadのデバイス使用時間、使用アプリなどの統計データを病的なユーザーに突きつける「スクリーンタイム」機能が搭載された。

子供にゲームやYouTube視聴の時間を制限している親は多いと思うが、では親自身がスマートフォンでどれだけの時間を費やしているのかとなると、それを知る方法がなかったりする。また、使い過ぎを制限する機能も特に用意されておらず、気をつける以上の回答がなかった。

Appleは2018年1月、主要株主2社から、子供のスマホの使い過ぎに対処せよという批判を受け、年頭所感で、その対応策を何らかの形で打つのを明らかにしていた。これは、シリコンバレーの2018年のテーマを決定づけるだけの大きなインパクトがあり、またこれで、スマホ中毒の解決を求める声に応えるというムードが一気に高まった。

そしてAppleは前述の通り、ユーザーがどれだけスマートフォンを使っているのかを知る機能と、具体的に制限をかける機能を導入したのだ。

その一方で、Appleは開発者たちの活発なアプリ開発と、それによるユーザーによる積極的なスマートフォン活用を促進させ、デバイスの売り上げではなく有料アプリやサブスクリプションによる収益を上げていこうと躍起になっている。誰が見ても、ここに矛盾が生じていることは明らかである。今回はこの矛盾の解消も含めて、iOS 12とwatchOS 5の「通知」機能について考察を進めたい。

Appleより先んじて、Googleは次世代OSの「Android P」で、「ダッシュボード」を採用し、ユーザーのスマートフォン利用の統計データを示した。しかし、筆者がAppleが一歩踏み込んだと考えている点は、通知機能の改善に取り組んだことだ。

スマートフォンのアプリでは、なんらかの通知すべき事項があると、着信音やバイブレーションが作動し、画面が点灯し、ユーザーの注意を引く。これが起点となりアプリを開いて内容を確認したり、返信しあたりといったアクションに出る。場合によっては、通知で届いた内容以外の情報もチェックし、しばしスマートフォンの画面を注視する時間が生まれる。

Appleはスクリーンタイム機能の画面で、通知の回数と、スマートフォンを手に取った回数も統計データとして示している。スマホ利用時間は、通知をきっかけにスマートフォンを手に取ったところから始まる、という基本的な流れを考えれば、通知機能を改善することはスマホの使いすぎを抑制する1つの手段になるであろう。

そこでAppleは、通知のインターフェイスに手を入れた。

新しい「通知」機能では、同じアプリやスレッドから届く通知がひと塊になって表示される。例えばTwitterアプリの通知であれば、50件届いていても通知が重なった状態でまとめられる。メッセージについても、盛り上がっているグループのスレッドに大量に届いている通知が画面を埋め尽くすことがなくなる。

  • 通知のグループ化に対応し、同じアプリやトピックをまとめて、確認をしやすくしている

通知の画面で何が届いているかを確認する時間は圧倒的に短くなり、見やすくなるのが期待できる。

また、通知が届きすぎていると感じていたり、届いてもあまり見ないと思う通知は、新着画面への表示をスキップしたり、音を鳴らさないようにするといったカスタマイズが可能となる。さらに、Siriがユーザーが届いた通知を開くかどうかをチェックし、あまり開かないものに対してスキップ設定などを促してくれるようになった。

  • 届いた通知が不要だと感じたら、ロック画面から通知のサイレント着信や、通知オフを選択できる。ちなみに着信音を鳴らさない通知機能は、iOS 11でも通知の設定から利用できた

ちなみにスキップ設定はiOS 11以前でも利用できる。届いた通知は最初からアーカイブに回され、ロック画面をスクロールすることで確認可能だった。iOS 12ではそのアーカイブでも、同じアプリやスレッドの通知がまとめられて見やすくなる。これらの機能によって、本当に必要な通知を前面に表示させ、だらだらとアプリを見続けてしまう可能性がある通知をなるべく表に出さないように設定できるのだ。