最後になりますが、経済産業省が「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂案について、5月から6月にかけて意見の公募を行いました。
この中には、スマートスピーカー(同省の資料ではAIスピーカーと表記)で買い物を行う際に、スマートスピーカーの誤認識によって正しくない発注が行われた場合の契約の有効性について、まだ「改訂案」という段階ではあるものの、同省の考え方が述べられています。
これによると、例えばテレビの音声や子供の声をスマートスピーカーが誤認識して発注処理が行われた場合に、発注者による意思表示と解釈できる行為がないことから、当該注文による契約はそもそも成立しないとしています。つまりユーザの側に責任はないということになります。これは心強い話です。
誤発注を防ぐため、面倒な「確認」をどうするか
その一方で、こうした事態を防ぐために、スマートスピーカーを提供する事業者側は、注文内容をユーザーに通知し、確認が得られた場合に注文を確定するフローを構築するのが有用だとしています。具体的には「一定期間内に回答がない場合に有効な注文とみなす」「当該通知に対してユーザーから確認を得られた場合に注文を確定する」といった例が挙げられています。
誤発注の責任を取らなくて済むのはありがたい話ですが、それによって購入フローが過度に煩雑になるのは、ユーザにとっても事業者にとっても、あまり望むところではないでしょう。この改訂案では利用者の言い間違いによる誤発注にも言及されていますが、そこでも確認措置の重要性が繰り返し述べられており、場合によっては事業者側が、現行の購入フローに手を加えなくてはならない可能性もありそうです。
ともあれ、今回はまだあくまでも「改訂案」の段階。海外ではすでに同種のトラブルが多発する中、今後日本国内ではますます普及するとみられているスマートスピーカーを使った音声での買い物について、いち早く指針を示した例として評価できます。すでに意見の公募は締め切られており、これを受けての近い将来の改訂内容の公表が待たれます。