――ウルトラマンや怪獣という要素がなくても、ホームドラマとして純粋に楽しめるほど、各キャラクターを魅力的に描いている、ということでしょうか。

そうですね。脚本の打ち合わせでもよく話題として出るんですけれど、「朝の連続テレビ小説」のようなホームドラマの世界に、ウルトラマンの要素をぶちこんでみたらどうなるか……、そんな見方をしてもらえたら、今までのウルトラマンと違った楽しみ方ができるんじゃないかと思います。ごく普通の家庭で、普通に生活していた若者2人が、ウルトラマンになっちゃった、という部分を強く打ち出したいですね。それは家族に対して重いバックボーンがあった前作『ウルトラマンジード』との対比の意味もあります。『ジード』はある意味シリアスなストーリー展開だったので、そこはかなり意識をしています。ドラマのトーンはあくまでライトに、パッと見にも明るい、疾走感のあるポップな作風を目指しているんです。

――湊兄弟を演じる平田雄也さん、小池亮介さんをキャスティングされた決め手はどんなところだったのでしょう。

  • 左から弟・イサミを演じる小池亮介、兄・カツミを演じる平田雄也 撮影:大塚素久(SYASYA)

2人とも、カツミとイサミにピッタリでしたから。面談のとき、すでにシナリオができていたので、キャラクターのイメージがなんとなくつかめていました。そこに2人がうまく合致するかどうかというところがポイントでしたが、最初に見たときから2人はカツミとイサミだと、ピンときました。子どもたちや、一緒に観るお母さんたちが憧れるようなルックスを備えていて、まさにヒーローのイメージそのものです。

2人は現場でも仲がいいんですよ。兄弟ウルトラマンということで「同時に動く」シチュエーションが多いのですが、だいたいは兄のカツミから先に動いて、弟のイサミがそれに合わせるという流れのところを、ときどき抜き打ちのようにイサミから動きをふると、カツミが「オ、オオッ!」とあわてたりしてね(笑)。そういった、和気あいあいとした面白さが画面に現れていればいいかなと思います。

――『R/B』の舞台は、怪獣やウルトラマンの存在が人々に知られている世界なのでしょうか。

これは後になって判明することではあるのですが、怪獣がまったくいないわけではなく、存在はしていたけれど人間が認知していなかっただけ、という世界といえます。第1話にグルジオボーンが出現して街が大騒ぎになりますが、あれも古文書の中の伝承として残されているやつかもしれない……。いる、いないに言及はしていなくて、いるんだけれど認知されていないと思ってくれれば。キャッチコピーで「ウルトラマン、はじめます!」と謳うからには、湊兄弟がウルトラマンの「初め」であってほしい。そんなところを感じさせる導入になっています。また『オーブ』や『ジード』のように、基本1話完結でありつつストーリーに連続性を持たせて、さまざまな謎や疑問が回を重ねるごとに明らかになっていくという作劇は踏襲されますので、期待していてほしいですね。

――『オーブ』ではジャグラー、『ジード』では伏井出ケイと、最近のシリーズにはミステリアスな要素を含んだ「うさんくさいキャラ枠」というものがあるような気がします。『R/B』ではアイゼンテック社長・愛染マコトがそれにあたるように思えますが、どうでしょうか。

どうなんでしょうか(笑)。まあ、愛染社長はかなり強烈なキャラクターですけれど。今後のドラマの中でどういう立ち位置を作っていくのかは、まだ秘密です。みなさんの予想どおりになるか、ぜんぜん違う方向に行くか、これは今後の展開を楽しみにしていただきたいところですね。

――武居監督にとって「ウルトラマン」シリーズをはじめとする「特撮作品」とはどんなものなのでしょう。

SF映画はもともと好きでしたが、ことさら特撮だけを突き詰めたいとは、思っていなかったんです。映画の世界に入ったとき、たまたま入口にあったのが東宝の「ゴジラ」や円谷プロの「ウルトラマン」だったということがあります。でも、自分自身が実際に取り組んでみて、初めて「特撮」の魅力に取りつかれた、というのは確かです。特撮作品がものすごく好きで、のめりこんでスタッフに……という人もいっぱいこの世界にはいるんですけれど、僕の場合は客観的に特撮作品に接したことで、その面白さや魅力に気づかせてもらいました。