政府が主導する台湾Pay
台湾政府が主導して生まれたのが、台湾Payだ。台湾における32行の銀行やクレジットカード会社が共同出資して誕生した台湾モバイルペイメントが運営する。台湾内でのQRコード決済や税金の支払いなど、様々な機能を備えた決済サービスとなっている。
台湾モバイルペイメント副社長の徐文玲氏によれば、もともと台湾では、2016年にキャッシュレス決済の倍増計画を立てており、2016年の26%から2020年に52%に引き上げることを目指している。2017年には、2025年にモバイル決済普及率を90%以上にするという宣言を頼清徳・行政院長が出している。
こうしたキャッシュレス化への取り組み強化は、「クレジットカードの不良債権の解消、一般消費者が買い物をしすぎて滞納することを解消するためという理由もあった」と徐氏は説明する。また、「台湾政府としては、国民の取引データが台湾内に残ってほしい」(徐氏)という意図もあったそうだ。
台湾には6社のモバイル決済会社、4社の交通系電子マネーがあり、その中ではEasyCardのシェアが大きい。銀行も37行あり、それぞれ自身のQRコードを推進しようとしており、「それぞれの店舗にいろいろなQRコードが乱立しているため、消費者も支払うときにバタバタしてしまう」と徐氏。そうしたことから、QRコードの統一規格策定が動き出したという。
台湾Payは、普通の消費者や小規模店舗でも安心して使える国民的な金融サービスを目指して開発されている。フェーズ1として、キャッシュカードの金融プラットフォームを構築。フェーズ2としてモバイル決済の導入が行われた。さらに今後はインターネットバンキングも網羅し、クレジットカードのQRコード払いにも対応する考えだ。これはEMVcoが策定するQRコードに対応する。
さらに、買い物や支払い、振込、入金に加え、「最終的には身分証明となるようなところまで持っていきたい」と徐氏は意気込む。
QRコード決済であれば、店舗側が掲示したQRコードを読み込むことで決済できる。さらにNFCを使った非接触決済もサポート。台湾では、2018年5月末でNFC支払い対応機器は7.6万台が利用できるそうだ。
2017年9月19日に正式に開始した台湾Payは、2018年3月には電子レシート機能を導入し、7月からはコンビニエンスストアでも利用可能になるという。2018年4月までで、207万枚のカード代わりに使われるようになり、導入店舗は2.6万店、取引回数は96万回、取引高は40億台湾ドルに達したという。今年下半期にはQRコードを使ったクレジットカード決済に対応する。
台湾Payでは、QRコードが統一されたことで、複数の銀行口座と連携した様々な決済サービスが利用できるようになった。店舗側もQRコードを決済サービスごとに用意する必要もなく、POSのリーダーを複数のサービスに対応させなくても、ひとつのQRコードの仕様に従えば、どのサービスでも読み込めるようになった。
徐氏は、「シンガポールや香港、日本など、多くの国でQRコードの規格統一の動きがあり、とても期待している」と話す。QRコードが統一されれば、台湾Payで日本での支払いをしたり、日本のQRコード決済サービスを使って台湾で支払いができたり、相互で決済が行えるようになるからだ。
日本では、まだQRコードの規格統一の動きが始まったばかりだが、pringの荻原氏も期待を寄せており、経済産業省を含めた、業界全体での早期の取り組みが必要だろう。